コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.20 )
日時: 2016/12/25 01:20
名前: Aika (ID: MGNiK3vE)

Episode17:許されざる想い。





この想いを貴方に伝えられたら、どんなに楽だろう。
でも、 あたしには
それは許されない———。

諦めなくちゃって、 頭では痛いぐらいに
わかっているのに…それができない。


諦めるどころか、 気持ちは降り積もるばかりで———。

神様…
こんなあたしを許してください。


**************************************************


「爽…来てたんだ」

目の前にいるのは、見知った顔をした
あたしのよく知っている人物。

「まぁなー!青葉も友達と来たのか?」

屈託のない笑顔であたしのもとへと駆け寄る爽。
あたしは、爽から顔を背けてぶっきらぼうに答える。

「…まぁ、そんなとこ。今から家に帰ろうかなって思ってたけど」
「マジで!?俺もそろそろ帰ろうかなって思ってたから一緒に帰るか」

爽が突然、そう言い出すもんだから
あたしは、冷たい口調で言う。

「別に一緒に帰る必要なんかないでしょ」
「何?…今日の青葉、機嫌悪くね?彼氏と喧嘩とか?」

茶化すようにそう言う爽に苛立って言い返す。

「彼氏なんかいないし!」
「あり?てっきり輝と、付き合ってるのかと思ってたけど違うの?」
「付き合ってねーし!輝はただの友達!」

お祭りの喧騒のなか。
二人で言い合っていると。

「爽〜!次、どこまわる…って、その隣の人だれ?」

人混みをかきわけて、爽の名前を呼ぶ女の子があたしと爽の前に現れた。
小柄で女の子らしいピンクの花柄の浴衣のよく似合う可愛い女の子だった。
あたしとは、正反対って感じの子だ。

「ああ…こいつは早瀬青葉」

爽が親指をあたしの方に指して、その女の子に紹介してくれた。
あたしに、やきもちをやく資格なんかないのに。
と、いうか妬いちゃいけないんだ。

だって、 あたしと爽は———。



「——俺の姉」






姉弟なんだから———。






「え!?爽ってお姉さんいたんだ!あんまり似てないから彼女かと思ったわー」

その子の反応を見て、爽は顔色一つ変えずに言う。

「まぁ…本当の姉弟じゃねーからさ」
「え?」
「1年前に父さんが再婚して…それで姉弟になったから正確には本当の姉弟じゃないから似てねーよ、そりゃあ」


シーンと…あたしたちの間に沈黙が走る。
その気まずさに耐えきれなかったのか
女の子が捲し立てるように言う。


「あー…その、ごめん!変なこと聞いて!今日は帰る、ね…」
「ああ…じゃあな」

爽はその子のことをよそ見もせずに
帰っていく後ろ姿をずっと眺めていた。
彼女なのかすごく、気になるけど。
あたしが聞いたら爽は変に思うと分かっていたから
あえて、その事には触れなかった。


「青葉はさ…」


不意に静けさを消すように。
爽が口を開いた。


あたしは、何も答えずに。
ただ爽の方に視線を向けた。


「俺と姉弟になって…良かったって思ってる?」

予想外もしなかった質問に。
あたしの頭は真っ白になる。
なんで、そんなことを聞くのか
爽が何を考えているのか
あたしには、全く理解できなかった。

あたしは、とりあえず頷いて答える。


「良かったって…思ってるに決まってるじゃん!やっとお母さんが幸せになれたんだから」


本当は…1ミリもそんな事を思った日なんかなかった。
どうして、お母さんの再婚の相手が爽の父親なのって
何回も何回も…神様を恨んだ。

そして。

爽の前でこんな風に、自分を偽っていることが
どうしようもなく辛い。
自分の気持ちを一生、打ち明けられないことも
本当に辛くて…嫌になる。



爽は、 あたしから目を背けて。
低い声で静かに呟いた。



「そっ…か。…なら、いいんだけどさ」



夏の夜の冷たい風が二人の間に静かに揺れた。
まるで、あたしの心をかきみだすように———。



「じゃあっ…母さんが心配するしそろそろかえるか!」
「…ん。そーだね」


先をずんずんと歩いていく
貴方の背中は大きくて…たくましくて。
弟とは思えない感情が溢れていく。

これ以上、 好きになっちゃだめだって
頭のなかでは分かっているのに
貴方のことばかり、目でおってしまう。



ごめんね、 爽。




こんなあたし、 姉失格だ———。