コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.22 )
- 日時: 2017/03/05 01:44
- 名前: Aika (ID: HQaTRwOr)
Episode19:動き出した時間。
愛しかった貴方と再会して
止まっていた時間が再び動き出す———。
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海里と向き合っていると。
朝のホームルームの時間になり扉が勢いよく開いて担任の先生がやってきた。
途端にクラスのざわめきはなくなり、静まり返る。
先生は出席を確認した後に口を開く。
「じゃあ、今日からこのクラスに転校生が入るから今から紹介するな」
その発言にクラス中がざわつきはじめた。
わたしも勢いよく心臓が飛び跳ねてドキドキしていた。
夏休み、 夏祭りのあの日。
蛍と再会して…2学期から同じ学校に来るって言っていた。
もしかして——。
そんな思考が頭の中をグルグルしていた。
「それじゃあ、入っていいぞー」
扉に向かって先生が声を張って言うと。
しまっていた扉が開いて。
廊下から見覚えのある男子生徒の姿が目に映った。
やっぱり…そうだ。
「それじゃあ、簡単に自己紹介してくれ」
先生の言葉にうなずき、その生徒は一歩前に出て口を開いた。
「九条蛍です。…京都から来ました。よろしくお願いします」
静かな口調。
わたしは頬杖をつきながら、ぼんやりと蛍の姿を眺めていた。
その時、感じたこと。
——やっぱり3年前とは違う。
あの頃よりもクールで、大人っぽくなった感じがする。
なんていうのは、わたしの気のせい、だろうか。
女子のヒソヒソ声が耳に入った。
「なんか、結構かっこよくない??」
「ねー…背も高いし大人っぽいし」
「うち、狙っちゃおうかなー」
正直、 聞きたくなかった。
彼女じゃないし、わたしには関係ない。
そう言い聞かせてはいるけれど———。
大きくため息が出た。
わたし、 性格悪すぎ。
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上の空のまま。一日は過ぎていて。
気づけば放課後になっていた。
今日、わたしは日直だったため誰もいない教室に一人残って日誌を書いていた。
日誌を書きながらも心はここにあらず状態で…ただ手だけを動かしてシャーペンを走らせていた。
大丈夫なのかな、わたし。
こんな状態で蛍と同じクラスで毎日顔を合わすことになって———。
「蛍への気持ちに…どう区切りをつけたらいいんだろう…」
3年間。
ずっと貴方のことだけを想い続けてきたのに。
なのに。
「…ッ…ヒック…」
ここは学校だ。誰かに見られたらヤバい。
泣いちゃダメ。そうわかっていても、あふれる涙は止まらなくって——。
——ガラっ。
その途端。
勢いよく教室の扉が開いた。
わたしはビックリして立ち上がり振り返る。
そこに立っていたのは。
「ほた……る……?」
涙声のかすれ声で…わたしは愛しい人の名前を呼ぶ。
彼はそんなわたしを見て、 目を見開いていた。
「…空。 お前…泣いてたのか??」
涙をぬぐったものの。
そんなにすぐには泣き止むことができなくて。
蛍には見透かされていた。
「なっ…泣いてない!!ただ目にゴミが入っただけだから気にしないで」
言い訳をして…蛍から目をそらす。
正直、今は蛍の顔を見るのが辛い。
だから…早く出て行ってほしい。
わたしにかまわないでほしい。
そう心の底から思っているのとは裏腹に
蛍はわたしの元へと近づいてきた。
わたしは、 そんな彼の行動にビックリして視線を合わせた。
3年前よりも背が伸びていて…どことなく大人びたその雰囲気に
鼓動が高鳴って…苦しかった。
彼は黙ったまま。
右手でそっとわたしの目元に浮かんでいた涙をぬぐって…
優しく抱きしめた。
予想外の彼の行動にドキッとして。
何も言えなくなる。
——なんで…私たち、もうあのころには帰れないんじゃなかったの??
なのに…なんで、 こんなことするの??
聞きたいことはこの時…山ほどあったのに。
抱きしめられていることが心地よくって。
わたしは、 ただ彼のぬくもりを感じていた。