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- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.24 )
- 日時: 2017/04/07 16:03
- 名前: Aika (ID: a2Kit7un)
Episode21:月明かりの夜に。
みんなが幸せになれる方法があればいいのに。
現実は意地悪で…思い通りにはいかない。
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■青葉side■
———ガンっ。
部活中。
もう、何回シュートを外したんだろう。
「青葉、最近調子悪いじゃん。具合でも悪い?」
先輩にそう聞かれた。
あたしは、すぐさま返す。
「いえ…大丈夫です」
「そう?…ならいいけど」
やばいな、このままじゃ。
レギュラーおろされるかも。
それだけは、 阻止しなきゃ。
それからあたしは、無心で部活に取り組んだ。
「……………」
その様子を輝が見ていたとも知らずに。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「じゃあ、今日はここまで!」
「「「ありがとうございましたー!!」」」
部活終わり。あたしは制服に着替えて更衣室を出ると。
「青葉」
そこには。
久々に見る、 輝の顔があった。
あたしは、輝の顔を直視できずに目を背けてしまった。
そんなあたしに構わず輝は言葉を続ける。
「一緒に…帰らねーか?少しだけ話したいこともあるから、さ」
輝も気まずいのか、途切れ途切れにそう言っていた。あたしも、輝とこのままの状態は何となく嫌だったから頷いて一緒に帰ることにした。
いつもの帰り道を輝と二人。
ならんで歩く。
すっかりと暗くなっていて…辺りは月明かりと車のライトだけだった。
「お前さ…最近、部活に集中できてねーだろ」
真剣な顔でそう聞く輝。
図星をつかれて、あたしは何も言えなくなってしまった。
そんなあたしを見て、肯定していると受け取ったのか輝は。
「そっか。…悪いな」
そう謝った。
突然、謝られて。あたしはきょとんとしてしまった。
「なんで、あんたが謝るの?」
思わずそう口走っていた。
すると、輝は髪をかきむしりながら答える。
「お前が集中できてないのって…俺が告白したせいなんじゃねーの?」
輝が歩いていた足を止めて。あたしと向かい合う形になる。
たしかに、それもあるけど。
脳裏にうかんだのは、 爽の顔で———。
「それとも…アイツのこと、 考えてた?」
ドキッと波打つ鼓動。
輝は薄く笑った。
「ほんっとに…お前は分かりやすいよな」
「うっさい、バカ!」
冷たい夜風が吹いて。
あたしと輝の髪を揺らした。
「そんなに、 アイツがいいんだな」
「あっ…あたしだって!あんなやつのことなんかさっさと忘れたいよ!なのにっ…」
なのに。
それが出来ない自分にイライラしてる。
「たぶん、その苛立ちが…今の部活に集中できてない一番の理由だから。だから、あんたは何も悪くないから。気にしないで———」
「——なんで、青葉は…そんなにアイツが好きなの?」
「え?」
不意にそう聞いた輝の表情はひどく悲しそうで。
切ない感情がひしひしと伝わってくるような———。
そんな顔をしていた。
「ひか」
名前を呼び掛けた瞬間。
腕を引っ張られて。
———唇をふさがれた。
重なったのは、 輝の唇で。
突然の事にあたしの頭は真っ白になった。
何が起こっているのか…わからなくなった。
離された瞬間。
輝はあたしの横を素通りして。
「———ごめん」
そう一言、 小さな声で呟いて。
あたしの前から去っていった。