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Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.26 )
日時: 2017/05/28 00:26
名前: Aika (ID: y1N6F4if)

Episode23:偽りの答え。




お互いに好きなのに。
結ばれてはならない。

この恋を終わらせるには、 どうしたらいい———?



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『ごめん———…』


あのとき。
爽は小さくそう呟いて。
たしかに、 あたしの唇をふさいだ。


あたしはといえば。
突然のことにビックリして。


『っ…やだっ!!』


そう言って。
勢いよく爽を突き飛ばして。
慌てて逃げるようにリビングから出ていき、自分の部屋へと入っていった。

そして、いま。

ベッドに横たわっている状態———。




明かりもつけない暗い部屋のなか。
月の光だけが窓から差し込んでいた。



あのときは、気が動転して…あんな態度をとったけど———。
本当は嫌なんかじゃなかった。
だけど———。


「爽のバカ…」


なんで、 キスなんかしたの———?

キスをさせた原因は…あの状況だったらあたしの方にもあるかもしれない。
でも、 貴方だって分かってるでしょ?

いくら血が繋がっていなくても姉弟なんだから
ノリでしていいことと駄目なことがあるよ。


そこまで自分で考えて涙が溜まってくる。


「…好きな人とのキスのはずなのになぁ」


なんで、 こんなにも悲しい気持ちになるのかな———?



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翌朝。
いつも通りあたしは朝練があるため、早く起きる。
なんか、考えすぎてちっとも眠れなかった。

輝も爽も…どっちも勝手だ。
いい加減な気持ちであたしの想いを振り回してかきみだす。

そんな事を考えながら朝食とお弁当を準備していると。

「おはよ」

突然、背中からそんな声が聞こえて。
勢いよく振り向いた。

そこには、寝起きの爽がいたから。

「おは、よ。どうしたの?今日は随分と早起きじゃん」

いつもギリギリに起きてくる爽が、珍しく早起きなので不審に感じながらそう話しかけると。

爽はあたしの顔を真剣に見つめて。

そして、口を開いた。

「———昨日は、 ごめん。あんなことして」

その言葉に。
お弁当を作っていた手が止まる。

あたしは、いったん作業を中断して。

爽の方へと振り返る。

「———なんで…あんなことしたの?」

震える声で…そう聞いた。
聞いちゃいけない。そうわかっていても聞かずにはいられなかったから———。



少しの沈黙が2人の空間に流れたあと。




その沈黙を破るかのように、 爽はあたしの瞳を真っ直ぐに見つめながら。
言葉を紡ぐ。






「———青葉のことが…ずっと好きだったから」







予想外のその言葉に。


あたしは、 目を見開いてしまった。
ノリで…とか。どうせそんな答えが返ってくるだろうと思っていたのに———。



「俺だって…しちゃダメだって分かってたけど。抑えきれなかった」



自分の手を強く握りしめながら。
歯を食いしばる爽の姿を直視できず。
あたしは、目を伏せた。




ここで…あたしも、貴方が好きだって言ったら。





貴方は、 どんな顔をする———?








「爽…あたしはっ———」








そこで、 ハッとして。
あたしは、 紡ごうとしてた言葉を飲み込んで。
それから、 再び口を開く。







「———あたしは、 あんたのこと…弟としてしか見れないから…だから、 ごめん」








その言葉を聞いた、 彼は。
薄く笑みを浮かべて。







「だよな、 ごめんな。気持ちわりぃこと言って…今のことと、 昨日のことは忘れてくれ」






力なくそう言って。

自分の部屋へと帰っていった。
それからあたしは黙々と2人分のお弁当と朝食を作って。身支度をして。
家を出た。




雲一つない澄みきった青空を見上げながら。
その場でボソッと呟く。





「———これで、 よかったんだよね」






両思いだと…お互いに分かったって。
うちらの立場じゃあ付き合えるわけなんかない。
それなのに、 自分の正直な想いを告げたって。
また、爽を傷つけるだけだ———。




「…ッ……」





とめどなく、 流れる涙の雨。

あたしの心の中は…嘘をついてしまった爽への罪悪感で押し潰されそうだった———。