コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.28 )
- 日時: 2017/06/18 14:03
- 名前: Aika (ID: Fx1lBa4z)
Episode25:揺れる心。
誰もいない教室で。
1人、 泣きじゃくる君を。
俺はなぜか、 放っておくことができなかった。
君のもとへ、 行く資格なんかないと分かっていたのに———。
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■蛍 side■
夏祭りの日に、 再会した君は。
あの頃よりも大人びていたけど。
どこかに、面影が残っていて———。
懐かしい感覚にとらわれた。
空は今にも泣き出しそうな顔をして。
かすれた声で俺の名前を呼んできた。
きっと、 空はあの日の約束を今でも忘れずに覚えていてくれて…ずっと俺のことだけを待っていてくれたに違いない。
けれど、 俺は。
そんな空を振り切って、 ひどい言葉をあびせて。
目も合わせずに空のもとから離れていく。
———俺には。
もう、 空のことを幸せにする資格なんかない———。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
お昼休み。
俺は窓際で友達と楽しそうに話す空の顔を眺めていた。
昨日の放課後。
教室で1人、 泣きじゃくっていた空が気になっていたから———。
あの様子だったら…心配、 ないか。
そんな事を思いながらお弁当を広げると。
「ほーたる!一緒に食おーぜ!」
下の名前でいきなり、呼ばれ。
ビックリして顔を上げると。
そこには、 同じクラスと思われる男子生徒の顔だが…転校してきて2日目。クラス全員の顔と名前なんか一致するわけがなかった。
「えーっと…」
しどろもどろの状態になっていると。
その男子生徒がハッとしたような顔をして、ニコッと笑って言う。
「そーだよな、自己紹介まだだったな。俺は椎名海里!サッカー部所属!よろしく」
「うん、よろしく」
こんな風に話しかけてくれるなんて。
結構…良い奴、だな。
なんか爽やか系っていうか。いかにも女子にモテそうなタイプだな。
「蛍ってさー、前の学校だと何部だったんだ?」
海里は俺の横の席に座って、お弁当をつまみながらそんな事を聞いてくる。
「海里と同じで、俺もサッカー部だったよ」
「えー!マジかよ!じゃあ、サッカー部入らねぇ?」
俺はその言葉に。
少しだけ間をあけたあと。
口を開いた。
「———俺…部活は入らねぇって決めてるから。ごめんな、誘ってくれたのに」
そう答えると。
海里はそれ以上はなにも言わずに。
「そっかー、わかった。けど、見学だけとかそれでも大歓迎だしいつでも来いよな」
「うん…ありがと。海里って良い奴だな。なんか、女子にモテそう」
何気なくそう言うと。
海里は否定し始めた。
「ないない!それに、俺…ずっと好きだった子にフラれたばっかりだし」
「えっ…マジ?」
「うん…」
「海里をフるとか…もったいねぇことするのな」
笑いながらそう言うと。
海里は目を伏せて。
小さくうそぶいた。
「けど…まだ、全然諦めがつかないんだよな」
さっきまで明るかった海里からは想像もできない。
せつなげな瞳。
「その子とは…同じクラス?」
「まーな!しかも、結構一緒にいることが多いかな。隣の席だし」
「はぁ!?隣の席って気まずくね?」
「ははは…おっしゃる通りで…向こうも前みたいに話せなさそうで困ってた。…困らせたくて告白したわけじゃねーのにな」
いとおしそうに、 その子のことを思いながら言葉を紡ぐ海里の姿に。
本当に大切に思っていることが伝わってきた。
いつか、 海里の想いが叶えばいいのに。
相手が誰だか分かるまでは…俺は、呑気にそんな事を感じていた。
———キーンコーン…。
昼休み終了のチャイムがなり。
全員が慌ただしく席につく。
そういえば、 海里の好きな女の子って誰なんだろ。たしか、隣の席って言ってたな———。
なんて、思いながら海里の席を探すと。
隣にいたのは———。
「……ッ…」
海里と耳打ちして。
楽しそうに笑っている、 空の姿———。
何を…動揺してるんだ、俺は。
空のことは…もう、 過去なんだから———。
俺には、 こんな感情を抱く資格なんかない。
ずっと、 そうやって自分に言い聞かせていた。