コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.3 )
- 日時: 2016/06/15 23:06
- 名前: Aika (ID: syQ.nMvr)
episode2:会いたい。
『空ッ!』
今でも、時々夢に見ることがある。
少し頬を染めながら
照れたようにそっと、わたしの名前を呼ぶ
貴方の姿を———。
触れたい。
そう思って、手を差し伸べるけど
その手は届くことなく
貴方は消えてしまう———。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □
———ジリリリリッ!
目覚ましの音が部屋全体に鳴り響いて
そこではっと目を覚ます。
「久しぶりに見たな…蛍がいなくなる夢」
蛍が東京から引っ越して3年の月日が流れた。
わたしは家から一番近い都立の高校に受かって
ごく普通の平凡な生活を送っている。
蛍とは引っ越してから1年の間だけ
メールや電話のやりとりをして
遠距離恋愛の形で関係を続けていたんだけど———。
中学3年の夏ぐらいから
連絡が突然途絶えてしまった。
電話をかけても、全然つながらなかった。
わたし、何か嫌われるようなことをしたのかな。
それとも、わたし以上に好きになった人ができたのかな、とか
今でも悶々と考えている。
あの日の約束。
『俺…何年先になるかわからないけど、絶対に東京に帰ってくる。だからそれまで待っててほしい』
蛍は、もう忘れてしまったのかな———。
あの時の気持ち…貴方にはもうなくなってしまったのかな。
わたしは、
あの日と変わらず…今だって
蛍が…こんなにも好きなのに———。
■ □ ■ □
「空ー!!おはよ」
「七夏ー!!おはよ。青葉は一緒じゃないの?」
「青葉は今日、朝練で先に行ったんだー」
「そっか。バスケ部は大会前だもんね」
今、隣にいるのは同じクラスで一番仲が良い友達の
桜井七夏。
小柄で目がぱっちりしている
小動物系の可愛い女の子。
「そーなんだよねー。おかげで青葉忙しそう」
「大会終わったら3人でどっか遊びに行く??」
「いいねー!いきたーいっ!!!甘いものとか食べたいー」
青葉も同じクラスでわたしにとって大切な友達。
バスケ部に所属していて、背が高い
ショートカットのクールで大人っぽい女の子。
わたしが憧れるぐらい格好いい女の子なんだ。
七夏とは幼馴染みらしく、幼稚園から高校まで一緒らしい。
「あれ??空に七夏じゃん!オッス」
教室の前の廊下でそんな話をしていると
背中からそんな声がして、とっさに振りかえると、
そこには。
「おー!!海里と輝じゃーん。おはよ」
「何々?3人でどっか出かけんの?俺らも混ぜろよ」
「海里ー。女好きも大概にしとけよー」
「はぁ!?そんなんじゃねーしっ!!」
海里と輝のそんなやりとりがおかしくて
わたしと七夏は大笑い。
「何だよー。朝から盛り上がってるね」
「あっ。青葉!おはよー」
「青葉ー!聞いてよ。海里がさー」
「バカ!!七夏、言いふらすなよ!」
女友達もいて、男友達もいて。
学校生活は本当に楽しい。
たしかに、そうやって心のなかから思っている。
なのに。
窓から見える夏空をそっと見上げながら
目を閉じて。
貴方の顔を思い浮かべる。
今、 この場所に。
貴方が、 蛍がいたら。
もっと、 楽しいのに———。
もし、許されるなら
もう一度だけ。
会いたいよ、 蛍———。