コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.4 )
- 日時: 2016/06/18 00:08
- 名前: Aika (ID: hFExu/cI)
episode3:変わらない想い。
「空ってさぁー…好きなやつとかいんの?」
お昼休み。
不意に隣の席にいた海里にそんなことを聞かれて。
わたしは口を開けたまま、その場でしばらく固まってしまった。
そんなわたしに、七夏と青葉が声をかけてくる。
「おーい…空ー」
「分かりやすいぐらい動揺してんな」
二人のそんな会話が耳に入って。
ようやく目を覚ます。
そ…そりゃあ、動揺するよ。
だって。
みんなには、一度も話したことない
蛍の存在が。
頭の中に浮かんだから———。
「その反応はやっぱりいるんだな」
海里は、いつになく
真剣な顔でそう静かに呟いた。
どうして…
海里がそんなに、切ない顔をするの———??
そう聞きたかったけど
なぜか、わたしはいつもみたいに海里に聞けなくって———。
目線を海里から逸らして、うつむいてしまった。
「ちょっとー…海里が変なこと聞くから、変な空気漂ってるんですけど」
そう青葉がため息混じりに言うと
海里がいつもの調子で言い返す。
「なんだよ、俺のせいかよー」
「まぁ、海里は空気よめねーし仕方ない」
輝がフォローを入れると、そこに海里がツッコミを入れる。
「輝くん、それはフォローでも何でもねーからな。ただ俺の悪口を並べてるね」
そんな二人を見ていたら。
自然と笑顔がこぼれた。
なんで海里があんなこと、聞いたのか真意は分からないけど
たぶん、わたしは今までみんなに恋愛の話なんかしないから興味本意かな、と
そういう解釈をすることにした。
うん、きっと深い意味なんかない———。
その日は自分にそう言い聞かせた。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □
そして、放課後。
いつも通り、青葉は部活なので七夏と
二人だけの帰り道。
七夏が大きな瞳をキラキラと光らせて聞いてきた。
「でさぁ…空の好きな人って誰??」
その瞬間。
肩がびくっと震えた。
わたしは呆れた顔で言う。
「七夏までそんなこと、聞いて…いないよ、そんな人」
「嘘つけ!!絶対にその顔はいるよー」
ごまかしたつもりが、簡単に見破られてしまった。
わたしって、そんなに分かりやすいのかな———。
「まぁ…空は言いたくなさそうだし無理には聞かないけどさ…せめて、どんな人かだけでも教えて」
七夏の無邪気な視線に。
思わず口を滑らして、答えてしまった。
「不器用だけど…わたしの為に一生懸命になってくれる、そんな人」
蛍は…いつだって。
わたしを一番に考えてくれていた。
わたしのことばかり…だった。
貴方には、もう
あの頃の気持ちは残っていないの———??
別れよう、とも言われてないし。
これじゃあ、わたし
貴方を待ってていいのかも分からないじゃん———。
「空…大丈夫??」
黙りこんだわたしに向かって七夏が心配そうな面持ちで聞く。
「うん!!ごめん、全然平気だよ」
そう言うと、安心したように七夏は微笑んだ。
それから七夏は深くは聞かなかった。
七夏は優しいからわたしに気を使ってくれたんだと思う。
真っ赤に染まる夕焼けぞらを見上げながら。
感じたこと———。
きっと、 わたしは
蛍以外の誰かを…好きになんかなれないんだってこと———。