コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.5 )
- 日時: 2016/06/18 11:40
- 名前: Aika (ID: WRt4rHcu)
episode4:七夏の好きな人。
"今"と"過去"
あなたは、 どちらを大切にしますか———??
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「空!!おはよ」
朝。いつも通り、教室の扉を開けると
七夏が笑顔でそう言って、駆け寄ってきた。
昨日のわたしの話を気にしていない様子だったので
わたしはとりあえず、ホッとして挨拶を返した。
「おはよー!!青葉も輝も海里もまだ来てない感じ??」
何気なくそう聞くと。
急に七夏が困ったような感じになる。
「いやぁ…それがさぁ…」
明らかにそわそわしている感じの七夏に問いかける。
「なんかあったの??」
すると、七夏は声の音量を下げて
わたしの耳元でこそっと言う。
「実は…海里が隣のクラスの女子に呼び出しされてて…」
えっ??
嘘、それって———。
「告白ってこと??」
「だよねー…やっぱり空もそう思うよね…うちらもそうじゃないかって思って、今、青葉と輝が聞き耳立てに行った所」
「あははっ…まぁ、海里は顔も格好良いしサッカー部の期待のエースだしモテるよね」
何気ない感じでそう言うと。
七夏の表情が一瞬だけ暗くなった気がした。
見たことのない表情にわたしは心配になって———。
「七夏??……どうかした??」
思わず、そう聞いてしまった。
すると七夏はハッと我に返っていつもの明るい調子で口を開いた。
「うっ…ううんっ!!全然どうもしてないよっ!!ごめんね、ちょっとボーっとしてた」
明らかに挙動不審で。
いつもの七夏と違う———。
はっきりとそう思った。
「確かにねー…海里、見てくれだけは良いもんね!!近いうちに彼女、できたりして!!」
表面上はいつもの明るい感じだけど——。
でも、どこか無理をしているようにも見える。
そんな七夏の様子を見ていて———。
「七夏…」
気づいてしまった。七夏の想いに———。
「ん??」
震える声で。
わたしは、 聞いてしまった———。
「———もしかして、 海里が…好きなの??」
瞬間。
七夏が真っ赤に頬を染めた。
そんな七夏を見て。
わたしは笑顔を見せた。
七夏は慌ててうろたえながら
まくし立てる様に言う。
「そっ…空!!言わないでよー!!絶対に誰にもっ!!!」
「言わないよー…七夏の大事な気持ちだもん。陰ながら応援してる」
そうやって返すと。
七夏は嬉しそうにわたしに抱き着いてきた。
「ありがとぉぉぉ!!!!空も好きな人と結ばれるといいね」
好きな人と…結ばれると、いいね、か。
その言葉は、 少しだけ心にチクンと痛んだけど。
わたしは精一杯の笑顔を見せながら。
「ありがと———」
か細い声でそう言った。
「ごめん。七夏、ちょっとトイレ行ってくる」
「あっ…うん。行ってらっしゃい」
教室を出て。
勢いよく廊下を早歩きで駆けていく。
頭の中では、色々な思いが溢れてくる。
——七夏は…きっと、海里と上手くいくと思う。
でも。
わたしの恋は、
きっと… 二度と結ばれることはない———。
そう思った瞬間。
じわぁっと目頭が熱くなった。
——そうやって、 現実が見えていたから。
だから。
苦しくなる————。
「どうしたら… 貴方を忘れられる———??」
誰に対してでもなく、
ざわついた廊下の喧騒の中で。
わたしは一人…そう呟いた。