コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 桃瀬 咲と。 ( No.2 )
- 日時: 2016/06/27 22:13
- 名前: ミカズキ ◆Vt/gXKM8AI (ID: StvfWq.v)
ほんとうに、その日までは何も代わり映えのない毎日だったのだ。
学校で授業を受けて、家に帰って、勉強して風呂に入って寝る。
その繰り返し。
そのループを何百回は繰り返した頃だったか__そう、それは中二の夏。
その日は夏休みも間近で、それはそれは暑い日だった。
蝉は全力で求愛して、太陽は活発に紫外線を人々に浴びせていた(僕も太陽という名前であるのに、どうしてこんなにも活発でないのだろう)。
そして僕はというといつも通り、昼休み、机に突っ伏して寝ていた。
だって、出来るだけ体力を温存していたいし、こんな暑い日に動きたくないからね。
それなのに…あいつが、何の前触れもなく、話しかけてきたんだ!!
「ね、東くん」
僕の大ッ嫌いな、ものすごーく楽しそうな声で。
この声で話しかけられた時は、面倒ごとを押し付けられるときと相場は決まっているんだから。
無視だ無視。
僕が答えないでいると、そいつはバンっと机を叩いて、問答無用で続けた。
「あんた、どうせ今年の夏も暇でしょ?
そんな寂しい東くんに、私が取っておきの提案をしてあげる」
…ほら。
「こんどは何?近所のセントバーナードの散歩?それとも君のお父さんの靴磨きでもさせようってわけ?」
「そんなわけないでしょ!!」
随分イヤミっぽく言ったのに、目の前の桃瀬には伝わらなかったようで。
むしろ、僕が顔を上げたことに喜んでいるようだった。
僕は深いため息をついた。
そう、こいつはこういうやつだ。
__桃瀬咲、僕の家の隣に住んでいるクラスメイト。
容姿端麗、成績抜群、おまけに運動神経も抜群。
神は二物を与えず、なんてこいつを見てると嘘だとすぐわかる。
まぁ、欠点が無いわけじゃない。
むしろ、ものすごい欠点を彼女は持っている。…その性格だ。
自己中心的、という言葉がこいつほど似合うやつはいない。
周りにいる奴らは知らず知らずのうちにこいつに振り回される。
これは絶対なんだ。
みんな彼女のペースに呑まれていくからね。
最初は怪訝な顔をしていても、気付くと彼女の思い通りに事は進んでいってしまうんだ。
しかも、桃瀬は全く苦労しないんだ。
僕は彼女と出会って早5年程、振り回されっぱなしだ。
彼女の飼い猫、マリーを探したり、彼女の宿題を夜なべで手伝ったり__。
だから、今年同じクラスになってホントに絶望したよ。
またこいつに振り回されるのかって。
…もう直感でわかる。
また今、厄介事に僕を巻き込もうとしてる、目の前のこいつは。
もう半ば諦めた感じで彼女の次の言葉を待つ僕。
「私たちで、便利屋をやるの!」
「ああ、そう…」
だから、別にそれを聞いても過剰な反応はしなかった。