コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ビスケット便利屋__何でもお申し付け下さいまし!__ ( No.4 )
- 日時: 2016/06/29 23:02
- 名前: ミカズキ ◆Vt/gXKM8AI (ID: StvfWq.v)
真っ先に口を開いたのは、桃瀬じゃなかった。
ずっとぼーっとしながら髪の毛をいじっていた女子の1人が、急に喋り出した。
「それもそうね__こんな狭い玄関に6人もいるんだもの、当たり前よ」
それに、身長の低い男子がキャンキャン吠えて噛み付く。
「別にここの家の玄関は狭くないだろ」
「あら、なんで怒ってるの?私、怒りっぽい人嫌い」
でも、その女子は涼しい顔で言い返す。
おっとりしているような顔をして、本当は気が強い奴なのかもしれない。
一方で噛み付いた小さい奴は、顔を真っ赤にして何か言いたげだ。
キレやすい奴なんだろう。
もう1人の女子は申し訳なさそうに縮こまっていて、もう1人の背の高い癖毛の男子は眠そうにアクビをしている。
それで桃瀬は__
…いない。
……まさか、勝手に部屋に上がってるんじゃあるまいな。
「…えーと、桃瀬どこ行った?」
「ああ、桃瀬さんならさっき階段を上がっていったけど」
「…そっか」
…やっぱりな。
答えてくれたのっぽくんはまたアクビしているし、小さい男子とあの女子は喧嘩をしているし、もうひとりはそれをなだめている。
思わずため息をつきそうになるのを堪えて、4人を自分の部屋まで案内する。
部屋のドアを開けると、ずっと前からここは私の部屋ですよ、とでも言いたげな顔をして桃瀬が寛いでいた。
それで僕達に気付くと、「あぁ__遅かったわね。座って?」。
ここは僕の部屋だぞ。
まあとりあえず座布団の上に座った。
「とりあえず、自己紹介しましょうか。これから一緒にお仕事する仲間なんですからね。
まあ知ってるとは思うんだけど、私は桃瀬咲。よろしく
はい次、胡桃」
桃瀬は目をキラキラさせて仕切っている。
色々訊きたいことはあるが、しばらく好きにさせておこうと何も言わないことにする。
次に、ずっと縮こまっていたあの子が口を開いた。
「えっと、私は松本胡桃です。よろしくお願いします」
「はい、次」
次は、背の低い男子が立ち上がった。
「俺は綾瀬拓海。一応器械体操習ってる」
さっきの喧嘩をまだ引きずっているのか、ふくれっ面をして、あの喧嘩相手を睨みつけている。
「ええと、次は私?」
相変わらず涼し気な顔でその女子は髪の毛をかきあげた。
まるで綾瀬のことなんて眼中に無いように。
「私は槇琴音。よろしくおねがいしまーす」
「はい。僕は中澤秋。食べることが好きかな」
続けてのっぽくんが自己紹介。
「えっと、僕は東。東太陽っていいます」
僕も簡潔に自己紹介を済ませた。
それを待ちかねていたように間髪入れず、中澤くんが桃瀬に尋ねた。
「ねぇ、多分僕だけじゃないと思うんだけど、僕ら何も聞かされないまま連れてこられたんだ。
何か僕らに用?」
「そうよ、咲。私達何も聞いてない」
続いて松本さんも。
桃瀬は首を傾げたあと、
「ああ、そういえば言ってなかったっけ。
私、貴方達と便利屋がしたいの」
「便利屋ァ!? 意味わかんねーよ、そんな__」
「…それにしても、何で僕達なんだい?
僕達、クラスも違うし性格も全然違うだろ」
綾瀬くんが騒ぎかけるのを制して、中澤くんが穏やかに言った。
今の桃瀬に何を言っても無駄だと察したんだろう。
なるほど、中澤くんは穏やかな性格みたいだ。
「別に、考えなしじゃないの。
私は、真剣にみんなとお仕事したいの。だから、ちゃんと考えてメンバーは選んだわ。
まず、東くん。東くんは頭がいいでしょ。だから頭脳要員。
それで、綾瀬。綾瀬は器械体操を習っていて運動神経抜群。で、運動要員。
中澤くんは、力が強い。だから、力仕事要員。
胡桃は礼儀正しいし、大人からの評判がいいわ。だから、対人要員。
で、琴音は家がお金持ち。だから、財力要員」
桃瀬は一人一人指さして説明をした。
みんな神妙な顔して頷いたが、1人槇さんだけが
「…まあ、財力ですって?なによそれ、私だけ褒めてないじゃない」
と不服そうな顔をしている。
そりゃそうだ。
だけど桃瀬にはどうせそんなこと分からないから、勘弁してやってほしい。