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Re: 『R−18』 ( No.5 )
日時: 2016/11/12 17:54
名前: 彩都 (ID: oN2/eHcw)  

 腹部を摩りながら、十夜はアキナと一緒に『自宅』へと帰った、すると家長であるユキタニがフライパンを片手に曲芸をしていた、フライパンの持ち手を上に投げて、もう一度持ち手を掴む、という技だ。
「おいおい……何危険な事をしているんだ、ユキタニさん」
 十夜がそう言うと、十夜に気付いたユキタニが言う。
「何って、曲芸だけど?」
「そうじゃなくて……他の子が真似したらどうするんだよ、火傷するなんて分かりきっているんだけどなぁ……」
 十夜が少し呆れながら言う、するとユキタニが言う。
「大丈夫だよ、『私は特訓したから出来る』って言っておけば、他の子は真似しないだろう」
「……そうか」
 十夜はそう言って、寝室へと向かう。
「ん? どうしたんだ十夜? もぅ眠いのか?」
「えっ? あぁ、そうみたいなんだ、それじゃあお休み」
 ユキタニの言葉を聞いて、返答する十夜、そして一人寝室に向かう──

「…………」
 十夜は窓から見える夜空を見ながら思う、今日も夜空は美しいなぁ、と。
『少年少女隔離施設No.12 『R−18』』が立地している場所は夜空が美しくて有名な無人島を改造した、と聞いた事が有る、こんな夜空が無料で見れるなんて──今は幸せ者なのかもしれないな、大人の人はこんな夜空に対し、大金を叩いて見に来るのだ、ガキの自分が無料で見れている、これは結構な差だ、と十夜は考えて、深呼吸をする、空気が美味い、空気でさえ、大人は金を支払って、吸ったりするのだ、それに対し、『R−18』の土地って結構自分達に優しいのではないか? と思ってしまう、だが逆に考えて、『少年少女達を隔離している』と考えたら、それはそれで優しく無いな……と思ったその時だった、アキナが一人鍋の器を持って、現れた。
「どうしたんだ、アキナ? そんな鍋を持って……?」
「ん? お兄ちゃんが起きていたらお粥食わせろってユキタニが……」
 そう言って、アキナは鍋の蓋を開ける、すると湯気が立っている、出来立てだったのか──十夜は仕方なく食べる事にした。
「もう……そんな事をしなくても良いのに……って、何気に春の七草粥かよ、今夏だぞ?」
 十夜は文句を言いながら、器にお粥を入れて、冷ましながら食べる。
「どお? 美味しい? 私も手伝ったんだよ?」
「ほぉ、アキナがねぇ、何を手伝ったの?」
 十夜が手伝った内容を聞く、アキナは威張りながら言う。
「聞いて驚け! 私は、『お粥を運んだ』事を手伝った!」
「味じゃねぇのかよ!」
 手伝った内容に呆れる十夜、何でそれを『手伝った』なんて言えるのか……と十夜はそう思いながらお粥を食べていく。
「流石にそれは嘘だけどね? 七草を集めたり、お粥が焦げない様にずっと混ぜたりね?」
「何だ、少しは手伝ったのか……」
 手伝った事に少し安心する十夜、そして夜空を見ながら十夜は呟く。
「なぁ……今日は綺麗な夜空だな」
「……? それがどうしたの? いたって平凡で普通な夜空じゃない?」
「……お前、情緒もねぇのな」
 十夜がそう言うと、アキナは不思議そうに言う。
「何言っているの、お兄ちゃん? 何時も何時も毎日見ている空に対して、情緒のじの字も感じないよ」
「えっ? マジで? 色々な意味で薄情だなぁ……お兄ちゃんは考えるんだ、もしも火山の噴火等で、空が真っ暗になったら……ってね」
「そんなの有り得ないよ、火山なんかもうほぼほぼ無いんだよ? ニホンも、海外の方も──今では火山が起きる事が起きたら、マグマを回収する事で、噴火を抑えているんだから」
 そう、人間はもう『噴火』という物に恐れなくなった、もしも噴火しそうになったら、マグマごと凍らせる、もしくはマグマを取り出して、噴火を止めたり出来るからだ。
 だがそんな現実的な事を言われる事に驚く十夜、十夜はアキナに対して反論する。
「もしも、もしもだよ? 『海底の底にある火山が噴火したら』アキナはどうする? あっ、因みに火山灰で空が暗くなった時を想定してね?」
 と、十夜は付け足してから言う、これなら流石に回答があるだろう。
「別に? どうもしないよ、それよりも、明日生きれるかって所に悩むなぁ……」
 …………彼女は超現実主義でした、と心の中で呟きながら十夜は言う。
「お前に聞いた自分がバカだったよ、忘れろ、そして俺はもう寝るから、お休み」
 十夜はそう言って、七草粥を食べ終わった後、布団の中に入って、寝息を立てる。
「ご馳走様、も無いのかよ」
 と、アキナが一人ごちて、お粥が入っていた鍋を持って、寝室を出る、十夜は心の中で呟く。
(聞こえてるよ……アキナ)

 そして朝になった、流石に腹部の痛みは無くなっただろう、と腹部を摩りながら十夜は朝ご飯を食べようと、居間に向かう、だが、居間には誰もいなかった、えっ? 何でだ? と思っていると、アキナが玄関か現れる、十夜はアキナに聞いた。
「あれっ? 皆は?」
 と、十夜が聞くと、アキナは答えた。
「ん? 今日は遠足だよ? 忘れてたの? 私は忘れ物を取りに来ただけ」
 えっ? あぁ……遠足ね、と段々と今日が何の日か思い出す。
「あぁー! 今日は遠足かー! 道理で今日は何か有ると思ったんだよ! 思い出させてくれて有難う!」
 十夜は急いで『自宅』を出る、走って間に合うか!? と十夜は思いながら足を動かす、アキナは呆れながら言う。
「全く、お兄ちゃんは時間にルーズなんだから……」