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Re: 『R−18』 ( No.6 )
日時: 2016/12/17 17:01
名前: 彩都 (ID: ???)  

「急げ! 急げ! 早くしないと遅れてしまう!」
 十夜はそう言って、走って、ユキタニ達を追いかける、すると後ろからアキナが走ってくる。
「お兄ちゃん、遅いね、あまり走っていないから?」
 そう言われて、十夜は反論する。
「いいや、違うね、俺は走っていない、まだ競歩レベルだ、まだまだ本気を出せば早い」
「そう? だったら先に行ってるね」
 アキナはそう言って、もっとスピードを上げる、あぁ、自分より早い存在になったか、と十夜はそう思いながら走るのを止めて、深呼吸する。
「はぁ、負けたかぁ、確かにあまり走っていないな、少しはスピードを上げないとなぁ」
 十夜はそう言って、アキナの後を追った──

「遅いぞ、十夜!」
 そう言って、ユキタニが十夜の頭に拳骨を放つ、結構痛かった、仕方無いだろ、寝ていたんだから……と心の中で思ったが、言葉にはしなかった。
「アハハ……で、今日は何処に行くのさ?」
 十夜がそう言うと、ユキタニが答える。
「ん? あぁ、今日は桜崖(さくらがけ)の上だよ、崖の上で飯を食うんだ、綺麗な風景を見ながらご飯を食べる、何とも清清しい食事風景だろう?」
 ユキタニがそう言うと、十夜は言う。
「あぁ、そう」
「何だ? 何とも薄情な奴だ」
「薄情で結構、こけこっこー!」
「何だそのつまらん言い回しは?」
 十夜が叫ぶ、叫んだ言葉に対し、冷静なツッコミをするユキタニ、すると十夜は少し引いた、正論を言われて顔が引き攣る。
「はぁ……まぁ、いいけれどな、さぁ、早く桜崖に向かおうか?」
「あいよー、桜崖ね、OK、OK」
 十夜はそう言って、ユキタニが引っ張る『家族』の中に割って入る十夜、十夜はアキナの隣に移動して、話しかける。
「全く……ユキタニは冗談も効かねぇでやんの」
「仕方無いよ、この『家族』唯一の16歳だし、ガキの感覚はもう無いんだよ」
 アキナがそう言うと、ユキタニが十夜とアキナを睨む。
「おいおい……お二人さんよぉ、何気に言葉が聞こえているんですがぁ?」
「大丈夫、幻聴だろ?」
「そうだよね、お兄ちゃん」
「お前等ぁ……」
 ユキタニはそう言って、大きな溜息を吐いて言う。
「はぁ、分かった、幻聴だな、それじゃあアキナと十夜っていう幻覚も見えない訳だ、さぁ、皆、先に進もうか」
「はーい!」
「うん!」
 ユキタニが言うと、十夜、アキナより年下の幼年幼女は頷いて、ユキタニと一緒に前に進む、その行動に対し、十夜とアキナは言う。
「あーあー! すいませんすいません!」
「ゴメンなさいー!」
 二人はそう言って、ユキタニの輪に入っていく……何とか輪に入れて、安心する二人だった──

 桜崖(さくらがけ)、それは大きな海に面している崖の名称である、東のユキタニ地区の近くに存在する場所であり、毎月『遠足』と称して、弁当を食べる行事と化していた……崖は落ちても大丈夫な様に、下に海があるので、うっかり落ちても死なない。
 そして何故『桜』崖と呼ばれているのかと言うと、崖の端に大きな桜の木があるからだ、毎年毎年、ユキタニ地区、椎名の地区等、色々な地区の『家族』が花見に来ていたりする、因みに桜崖が遠い地区もあるので、毎回春前になると、籤引きを行って、どの地区が先に花見をするか、決めたりする。
 そんな場所に向かう十夜達、そして数十分掛けて桜崖に到着する、するとユキタニがリュックから、シートを取り出して、地面に引く、そして四隅を大きな石で挟んで動かない様にする。
「さぁ、準備も整ったし、皆、私が作った弁当を渡すから、自由に食べてくれ」
「わー! ユキタニのご飯だー!」
「私が先だよー!」
「わー、待て待て、皆順番だよ、順番!」
 ユキタニが弁当に群がる幼年幼女達を制する、その光景を見て、十夜は呟く。
「これが四つの地区で一緒に行えたらなぁ……差別も、ルールも廃止して、皆が安心出来るルールを作れば、戦闘も喧嘩も無いんだろうなぁ……」
 十夜の言葉に反応したのか、ユキタニが十夜に向かって叫ぶ。
「おーい! 十夜ー! 弁当はいらないのかー?」
「お兄ちゃん、呼ばれているよ?」
 アキナ、ユキタニの言葉に反応して、フッと我に返る十夜、十夜は急いでユキタニの方に向かって、走って、弁当を受け取る。
「お前、どうしたんだ? 昨日の事を思い出したのか?」
 ユキタニがそう言うと、十夜は首を横に振って、言い返す。
「うーん、そう言う意味じゃないんだけどね、もしも四つの地区全員が、こんな感じに花見とか、一緒に楽しめたらなぁって……ルールとか、喧嘩とか戦闘とかその日は無しにしてさぁ、楽しくいきたいよね、そんな日があってもいいと思わないかな?」
 十夜の言葉に対し、重い溜息を吐くユキタニ。
「それは無理だよ、皆が皆、『敵』だと思っているから……同じ東西南北の地区ならまだしも、違う地区も一緒に楽しむとか難しいよ……お前の友達の椎名って奴の地区と私の地区の『家族』で花見とかなら出来るけどな──」
「まぁ、それもそうだけどね……今はそんな事を置いといて、『遠足』を楽しみますか」
 十夜はそう言って、桜の木の下に移動して座る、十夜の言葉に対して、ユキタニは言う。
「あぁ、そうだな……」
 ユキタニはアキナに弁当を渡して、大きく深呼吸してから自分の弁当に手をつける……そして十夜は思う、今日の弁当も美味しいな、と──
 こんな綺麗な桜を見ながら食べる弁当は格別だ──そう感じながら十夜は弁当を勢いよく食べる──