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Re: 『R−18』 ( No.7 )
日時: 2017/01/14 18:52
名前: 彩都 (ID: ???)  

「美味しいな、今日の弁当は、前に食べた弁当より美味しい」
 十夜がそう言うと、ユキタニが目を逸らしながら十夜に言う。
「あ、あれはただの失敗だよ、だから気にするなよ……」
「そうだけどさぁ?珍しいよね、ユキタニが料理に失敗するなんて」
「そりゃ仕方無いさ、初めて作った料理なんだ、椎名って奴の地区の準地区長に少し教えてもらっただけだしな」
 十夜の言葉に対し、ユキタニは料理の失敗について説明する、すると十夜は椎名の地区の準地区長という言葉が出てきて驚く。
「えぇっ!? あの準地区長と!? 何もされなかったか!?」
「い、いや、何もされなかったよ、だけど包丁は投げられたな」
「あっぶねぇ!」
 ユキタニの言葉に対し、十夜は冷や汗を掻く、それもその筈、椎名の地区の準地区長は椎名の地区の地区長に恋をしているのだ、もしも椎名の地区長が自分以外の女性を見て惚れて結婚してしまったら、片思いで終わってしまう、それを阻止する為にユキタニに攻撃を仕掛けたのだろう、だが無傷と言う事はどういう事だろう? そう思っていると、ユキタニが答えた。
「お前、もしかして、『何で無傷だったのか?』って聞きたいのか?」
「な、何故気付いた? 顔に現れていたかな?」
 十夜がそう言うと、ユキタニは溜息を吐きながら答える。
「私とお前は何年来の付き合いなんだよ……『家族』なんだから相手の気持ち位分かって普通だろう?」
「そうか……『家族』かぁ……」
 十夜はそう言って上空を見上げる、一体自分の父親、母親は誰なんだろう? 普通に仕事している二人なのかな? もしくはお偉いさんなのかもしれない、だが何故お偉いさんという言葉が出てきたのかは知らない。
「まぁ、いいや、とりあえず、私は準地区長に襲われた、だけど普通にやり返した、そして最初に襲ってきたから、色々なレシピを教えてもらった、と言う事、そして先月その色々なレシピの中から適当なレシピを選んで作ったらそのまま失敗した、と言う事だ」
「……すげぇな、ユキタニ……」
 十夜はそう言って、少し体を後ろに引く、その行動に対し、ユキタニは十夜に近付いて行く。
「何で離れるんだよぉ?」
「うっ、煩い! ユキタニには関係ないだろ!」
 十夜はそう言って、弁当を口の中にかき込んで、口の中に詰め込んだ後、近くにあった水筒を一気飲みして、大きなげっぷをする、あー美味しかった、そう思いながらその場で寝転がる、すると急に視界が真っ暗になり、綺麗な生脚とパンツが見える、パンツは女性用だった、いや、何で視界が真っ暗になって生脚とパンツが見えているんだ? 十夜はそう考えて、片手で飛び上がって、起き上がる、すると目の前に紫色のマントを纏った金色の横線が入った赤いスカートの少女がその場に立っていた、顔は仮面を着けており、素顔は判断出来ない、だがこの少女を十夜は見た事があった──ユキタニ地区は『少年少女隔離施設No.12 『R−18』』で言えば東の方に存在している地区だ、そして一部の地区や他の施設では『過激派』や『施設統一』を目指す輩もいる、勿論『少年少女隔離施設No.12 『R−18』』にもその『過激派』、『施設統一』を目指す輩は存在する、そして十夜の目の前に現れた少女も『過激派』、『施設統一』を目指す輩なのだ──そして少女は静かにユキタニに声を掛ける。
「地区のメンバー全員で食べるお弁当やピクニックは楽しいかい? 『ユキタニ地区』の地区長ユキタニさん?」
「……あ、あぁ、楽しいさ、やっぱり『家族』は良いものだよなぁ、西の地区長さんよぉ?」
 西の地区長、と呼ばれた目の前の少女に怯えともせず、言い返すユキタニ、だが、西の地区長と呼ばれた少女はユキタニの持っている弁当を踏みつけて、煙草の火を消す様に右へ左へと動かして弁当を踏み潰す。
「そうかそうか、楽しいか……だけど、その『楽しい』という気持ちも壊してやる、もうすぐ『施設統一』も近くなっている、残りの地区は後少しだ、楽しく私の支配下で楽しんでおけ! アハハハハハハ!」
「…………」
 高らかに笑う西の地区長と呼ばれた少女を見て、ユキタニは悲しそうな泣きそうな良く分からない顔をしていた、だが十夜にはユキタニの顔が理解出来た、理解したから十夜は次の行動に移っていた。
「おい」
「?」
 十夜はその場で振り向いて去ろうとする、西の地区長と呼ばれた少女の左肩を掴んで、動きを止める、その行動に対し、西の地区長と呼ばれた少女は方の手を掃って前に進む、だが十夜はまたも肩を掴む、すると西の地区長と呼ばれた少女は十夜を強く睨んだ。
「お前……私を誰だと思っている? 私は西の地区長だぞ! お前等はカス同然の存在なのだぞ! お前等平民は私に平伏さなければならないのだ!」
「……で? 言いたいのはそれだけか? 俺が言いてぇのはそれじゃあねぇんだよ……」
 十夜は西の地区長と呼ばれた少女の言葉を往なし、怒りを露わにしながら怒鳴る。
「俺が言いてぇのはそれじゃあねぇんだよ……俺が言いてぇのは『謝れ』! 『詫び』ろ! 『謝罪』しろ! 他人が作った料理に対し、足で踏みつけるな!」
 その言葉を言った瞬間、顔を下げていたユキタニは顔を上げた。
「な、何を言っているんだ……? たかが料理ごときに『謝罪』だと……? 馬鹿げている! 何故私がそんな事をしなくちゃいけないんだ!?」
「『そんな事』だと!? 違う! このお弁当は『ユキタニが頑張って作ってくれた愛情が籠もった弁当』なんだ! てめぇが行った行為は『愛情を踏み躙(にじ)る』行為だ!」
 十夜が怒鳴りながらそう言うと、ユキタニが泣きながら十夜の腰を掴む、そして『もうそれ以上言うな! 十夜!』と小声で言う、それに対し、十夜は食い縛って引き下がる事にした。
「全く、『ユキタニ地区』のニンゲンは躾も礼儀も分からん様だな!」
 西の地区長と呼ばれた少女はそう言って、鼻息を荒くし、その場を去った──十夜は西の地区長と呼ばれた少女に対し、怒りが込み上げていた、アイツだけは許さない、そう思いながらその場に座る──