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- Re: 恋する乙女。 【短編集 リクエスト募集中】 ( No.9 )
- 日時: 2016/07/22 15:43
- 名前: ももたん ◆hjAE94JkIU (ID: ze9J8nGv)
*夏に恋して*
「大丈夫、かな」
部屋で一人、鏡に向かって問いかける。
もちろん返事なんてないけれど。
「…よしっ!」
いってきまーす、と母に声をかけ、小走りで川のほうへ向かう。
今日は、8月1日。花火大会の日。
この花火大会は二日ある。今日は初日。
毎年、初日は家族で、二日目は友達と行くんだけれど、今年は例外。
今日は——去年の夏からずっと見続けた同級生、蓮君と花火を見るから。
「お、おまたせ!」
待ち合わせ時間には、間に合っているけれど、蓮君はもう来ていた。
待ち合わせには早く来るタイプなのかな、なんてつい考えてしまう。
「関谷さん。待ってないから大丈夫だよ。っていうか、俺が早く来すぎちゃっただけだし」
ヘラっと笑って見せる蓮君。かわいいっていうか、かっこいいっていうか。
とりあえず、行動の一つ一つにきゅんとしてしまう。
パァン パァン パァン!
「わぁぁぁぁぁ!」
「すごいね…綺麗だ」
ビクッ!
つ、つい「綺麗」という言葉に反応してしまった。
自分のことじゃなくて、花火のことなのに。
「そうだね、すごくきれい…!」
ふと横を見ると、蓮君はまっすぐ花火を見ていた。
その瞳に映る花火が凄くきれいで、つい見とれてしまう。
…ハッ!見とれてちゃダメダメ。一度しかないタイミングが…。
たぶん、あともう少しで花火が終わる。
調べてみたのだと、最後の花火の1つ前は、星形の花火だったはずだ。
それを合図にして、一人で考えていたことを実行する…つもり。
パァン!
「あっ、星…!」
蓮君の言葉にハッとして空を見上げると、星形の花火があった。
——今だ…!
「あっ、あのね蓮君!」
バッと、体ごと蓮君のほうに向ける。
蓮君は驚いた表情で、目を見開いている。
「わ、わたしね、ずっと…ずっと蓮君のことが好きでした!」
——パァン!
おぉ…と、今までで一番大きな歓声が上がる。
最後の花火が打ち上げられたんだ。
「ははっ…言われちゃった」
「…え?」
蓮君の思わぬ言葉に、びっくりする。
「いやぁ、本当は、俺のほうから言いたかったんだけどなぁ…今の」
「えっ、え、あ、あ…え?」
驚きすぎて、間の抜けた変な声しか出てこない。
「じゃ、俺から言わせてもらえる?」
蓮君が、一呼吸置く。
「——ずっとあなたのことを見続けてきました。よかったら、付き合ってください」
「っ…はい!」
夏に恋して、夏にもっともっと恋をする。
これは、私と君の、ひと夏の「恋」のお話。
END