コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 怪盗レイヴン 夜闇を舞う黒き怪盗 ( No.1 )
- 日時: 2016/09/07 21:31
- 名前: エル (ID: 0llm6aBT)
夜。人々が寝静まる中、異変が起きていた。それは、一人の大金持ちの部屋で起きた。
部屋に来た人々は、あまりの出来事に驚愕する。何故なら、誰も入れてはならないその部屋に、入れてはならない人物がいたからだ。
「何故……何故お前がここにいる!?」
「皆さんお揃いで、何を殺気立っているのですか? 私は、ここにある奪われた物を返してもらいに来ただけですがね……」
その人物は、全身黒ずくめの衣装に身を包んでいた。シルクハットに燕尾服と、無数の黒い羽根が編み込まれたマント。手には黒い手袋をはめており、その手には黒いステッキを握っていた。髪の毛も黒い。そして最大の特徴は、彼の目元を覆う仮面。その仮面は、彼の衣装に合わせるように黒く、鳥のクチバシのような突起がある。それはまるで、カラスを仮面として被っているようであった。
「その姿……まさかお前は!」
「そう、私はレイヴン、怪盗レイヴン。では、もう目当ての物は頂きましたので、これにてさようなら」
レイヴンと名乗ったその人物は、窓を突き破って外へと飛び出した。すると、空中に飛び立ったレイヴンのマントが、風になびいてはためくと、マントは大きな黒い翼へと変わった。
これを見て、部屋にいた人々は騒ぎ立てる。
「奴だ! 奴が現れたぞ!」
「怪盗だ! 怪盗レイヴンだ!」
怪盗レイヴン。その人物が現れたことがわかると、警察はレイヴンを捕まえるために総力を挙げて包囲網を作り、悪人達は、次は私の所かと恐れる。そして、民衆達はレイヴンの活躍に心躍らせる。
「あっ、見て! 怪盗レイヴンよ!」
「レイヴンですって!? どこにいるの!?」
「あそこよ!」
人々は、レイヴンが空を飛ぶ所を見て、まるで劇をみるかのように楽しんでいた。そして、彼に向かって歓声を上げる。
この状況を、空の上……いや、もっと上から眺めていた少年がいた。少年は、レイヴンが盗みを行っているこの状況を楽しんでおり、次がどうなるのかを楽しみにしていた。
だが、そんな彼の願いは、瞬く間に消える。
「隼君!」
何やら声が聞こえるが、少年は目の前に
「隼君! 何をしているのですか!?」
「えっ、何!?」
少年の目の前に広がっていた世界は消え、ありふれた教室に戻った。少年の手には教科書と、その間に挟まれていた一冊の小説が握られており、少年の隣には、仏頂面の先生がいた。
「あ、先生……」
「今は国語の授業中ですよ、何を読んでいるのですか?」
「え、えっと……教科書を……」
「では、教科書の間に挟まっているその本は一体何ですか?」
「え、えっとこれは……大人気の怪盗ノワールシリーズで……」
「隼君! 後で反省文を書くように!」
「はい……」
クラスメイトから笑われた隼。まあ授業中に勝手な本を読んでいれば仕方のないことである。
この叱られた少年の名前は烏間隼。本が好きで夢見がちな、小学五年生の少年である。
その後。
「いくら新作が出たからって、そんなに早く読みたいものなのかねえ」
「だって……怪盗レイヴンシリーズは人気作なんだよ?新作が出たら早く読みたいものさ」
「けど授業中に読むなんてことする? やれやれ……」
「けど、あちこちの書店で売り切れが続出しているらしいわよ? そんなのを読めるんだから、早く読みたいって思うのも仕方ないよ」
「奈央……確かにそうかもしれないけど、授業中に読むのはダメでしょ」
「流石に遼太の言う通りだね、今回もやったからもうやらないよ……多分」
隼が今話している少年は、月島奈央という女の子と、東遼太という男の子である。隼とは友達であり、互いに本を貸しあったりする仲である。
「にしても、怪盗レイヴンシリーズの新作を誰よりも一番先にゲットできる隼君ってホントに良いよね、殆ど特権みたいな形でもらえるんだから!」
「うん、怪盗レイヴンシリーズをすぐに読ませてもらえるのは、凄く良いことだよ! 殆ど誰よりも先に読めるから」
「本当に凄いよね、お母さんが小説家で、しかも大ヒットシリーズの怪盗レイヴンシリーズの作者の!」
隼は誇らしげに胸を張る。隼の母親は小説家であり、大ヒットシリーズの怪盗レイヴンシリーズを書いている人気作家である。そんな母を持てたことは、俊が皆に誇れることである。
が、それしか誇れるところがないと言っているのが、隼の悪い癖であるが。
ここで、怪盗レイヴンシリーズについて解説しておく。怪盗レイヴンシリーズとは、先程も言った通り非常に人気の高い小説作品である。
とある仮面に選ばれて怪盗レイヴンとなった主人公が、夜の暗闇に紛れて悪事を行う悪人達に、盗みで制裁を与えるファンタジー小説である。
主人公は悪人からしか盗まず、そして悪人であっても人を傷つけるようなことはせず、更には盗みを行う時には予告状を出す紳士的な怪盗である。
そして、仮面に宿る力を使うで、人智を超えたことをすることも出来る。例えば、背中に羽織っている黒い羽根の編み込まれたマントを黒い大きな翼を変えたり、カラスを操って悪人の行っていることを盗み聞きしたりすることができる。他にもいろいろなことができるようである。
そして、さっきの内容には出なかったが、ヒロインとライバルを兼ねる怪盗、ノーフェイスウィッチとのラブコメ要素や、レイヴンが謎解きをするミステリー要素などが詰め込まれており、単なる怪盗小説ではないことが、この作品の人気を示している。
その人気は、日本で百万部数以上発行されたり、アニメ化もされるといった具合に、大人気であった。
そして、最近出された新シリーズを、隼が授業中に読んでいたのである。
そして隼と奈央、そして遼太はレイヴンシリーズについて話をしていたが、奈央が唐突にこんなことを言う。
「そう言えば、今日って隼君の誕生日だったよね」
「うんそうだけど?」
「じゃあ、今日お母さんから、誕生日プレゼントをもらう予定なんだよね?」
「うん……けど、あんまり期待してない」
「どうして?」
「だって……お母さんが誕生日にくれる物、大体僕にとっていらない物なんだもの」
「変な物? 例えば?」
「うん、例えば……理解できない幾何学模様の絵だったり、赤い水晶だったり、悪魔の石像だったりして……いらない物ばっかりなんだもの」
「はは……それはいらないね」
「だからね……今回の誕生日も期待していない」
「あら……そう」
そう言って、話は打ち切りになってしまった。
そして、学校が終わった隼は、足早に学校から家へと帰って行った。隼の家は、特に何の変哲も無い一戸建てで二階建ての部屋である。
「ただいまー」
玄関のドアを開けて、母に帰って来たことを告げる隼。部屋の奥では、カタカタとパソコンのキーボードを打つ音が聞こえていた。その部屋から「おかえりー」という声が聞こえると、隼はその部屋に入って行った。
そこには、パソコンに向かってひたすら文字を打っている母の姿があった。
「ただいま、お母さん」
隼がそう言うと、母は文字を打つのを止めて隼に向き直る。眼鏡と長い黒髪を持った、綺麗な女性であった。
「ええお帰り。今日も学校楽しかった?」
「うん、楽しかった。それにしても、お母さんは新作をついこの間出したばかりなのに、もう新しい作品を書いているの?」
「ええ、私の中からあふれ出る物語が、私に作品を次々と書かせるのよ! ああ、早く次の作品を出したいわ!」
眼鏡をキラキラさせながらそう言った母に、隼はいつも通りのお母さんだと再確認して、部屋に戻ろうとしていた。すると、母が隼に向かって言う。
「ああそうだった! 今日は俊の誕生日だったわね、誕生日プレゼントはもうあるから安心していてね!」
「あ、うん……あんまり期待しないで待っているよ」
「そんなこと言わないで。今日は特別に良い物を用意したから!」
そう言われた後、隼は母の部屋を出て行った。
そして、自分の部屋に戻って行った隼は、自分の部屋のベッドで横になる。
「……あんま変なのじゃないと良いなあ……」
そして、その時はやってきた。隼が母から誕生日プレゼントを貰う、その時が。
「誕生日おめでとう隼、あなたへのプレゼントよ」
そう言って、綺麗に包装された大きな箱を隼に渡す母。結構な大きさを持つその箱は、両手で抱えなければ持ちきれない程の物であった。
「お母さん……これ何?」
「内緒。開けてみて」
「ああそうだね、開けてみるよ」
どうせろくでもない物が入っているだろうと思っていた隼。すると、予想をはるかに上回る物が入っていた。
「えっ……何これ?」
一体誰が作った物なのだろうか、シルク素材で出来た漆黒の光沢を持つシルクハットに燕尾服、そして黒い羽根の編み込まれたマント。
そして一番目に入ったのは、目元を覆う、鳥のようなクチバシがついた黒い仮面であった。それはまるで、あの怪盗レイヴンがしている仮面と、殆ど同じような仮面であった。
その衣装の一式はまるで、怪盗レイヴンになるための衣装のようであった。
「お母さん、これって一体……」
「それはね……実は私とお父さんは……怪盗だったのです!」