コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 怪盗レイヴン 夜闇を舞う黒き怪盗 ( No.5 )
- 日時: 2016/10/16 21:28
- 名前: エル (ID: qRt8qnz/)
リアルの方が忙しかったので、大分更新が遅れました。ごめんなさい。
隼が目を覚ますと、自分が暗闇の中にいたことに気づく。
「う……あ、あれ? 僕、何をして……」
「目が覚めたわね、隼」
暗闇の中から母の声が聞こえた。その瞬間、隼の目の前にいきなり明かりがつく。それはろうそくの明かりであり、いくつもの明かりがひとりでについた。その怪しさに、隼は何とも言えない恐怖を感じる。
「なんだここ……とりあえず、ここから出て行かなきゃ」
すると、体に違和感を感じた。後ろを見てみると、なんと縄で柱に縛らつけられていた。柱に縄で縛られていた隼は、何が何だかわからずただただ暴れまわることしかできなかった。
「何これ!? ちょ、ちょっと一体どうなっているの!?」
「言ったじゃない、レイヴンの全てをあなたに見せるって」
そういうと、また暗闇の中から母の声が聞こえてきた。そして、母らしき人物が暗闇の奥から来た。が、隼の目の前に来たのは母の姿ではなかった。
黒いフードを頭に被り、背中にはマントを羽織っている。そして体にはスーツを身につけており、手には爪がついた黒いドレスグローブを身に着けていた。そして、先端に水色の水晶がついた奇妙な杖を持っていた。そして、極め付きは顔に被っていた仮面だった。その仮面は、顔の無い白い仮面。目も、口も、何もない仮面だった。
それはまるで、レイヴンの小説に出てくるライバルの女怪盗、ノーフェイスウィッチのような姿であった。
「ちょっとお母さん! 何考えているの!? 僕を柱に縛り付けたりなんかして……僕に何をしようって言うの!?」
すると母は、縛り付けられている隼の前にしゃがみこむ。そしてその様子を、頬杖をつきながらまるで映画でもみるかのように観賞していた。更に、仮面の中からフフフと怪しげな笑い声をあげており、魔女のような恐ろしさを隼は感じていた。
そして、母の仮面の中から笑い声が止まる。そして話をし始める。
「さっき言ったじゃない。レイヴンの全てをあなたに見せるって」
「お母さん! もうやめてよ! 目を覚ましてよ! もうお母さんが何を言っているのかわからないよ!」
隼が必死で母に訴えているのだが、母は気にする様子もなく、懐から本を取り出してブツブツとつぶやいていた。
「まあ、いきなりこんなことされて落ち着ける訳ないでしょうけど、レイヴンのことを知ってほしいから仕方ないわ。とりあえず……儀式に必要な物はそろってるから問題ないわね」
隼のことなどお構いなしに、母は本をめくってブツブツと話していた。そして隼はというと、柱に縛り付けられているこの状況を嘆いていた。目からこぼれる涙で床を濡らしながら。
「うう……お母さん壊れちゃったの? もう小説を書きたくないの? こんな現実が嫌になっちゃったの? お母さん……もうやめて……僕こんなお母さん見たくないよ……! お願い、目を覚まして!」
しかし、母に言葉は届かない。
「私は壊れてなんかいないわ。真実を見せてあげるだけだから……さあ、レイヴンの儀式を始めましょう……!」
「儀式ってなんなのさ……とにかくやめてよぉ!」
泣き叫ぶ隼だが、母に声は届かない。それどころか、母はフフフと笑っており、今の状況を楽しんでいるように見えた。それはまるで、魔女のような邪悪な笑いであった。
怖い。怖くて仕方ない。今見ている女性は、もはや母ではなかった。邪悪な思想に取り憑かれた、魔女にしか見えなかった。
「ウフフフ……!」
不気味な笑い声を立てながら盗賊神書を隼の目の前に置くと、杖で床を一突きする。すると、床から黒い光が現れ、母と隼を囲む。
そして母は立ち上がり、杖を両手で持って日本語とも外国語とも思えない呪文を口にし始める。その呪文の意味はわからない。しかし、その呪文の内容は、あの盗賊神書に書かれてあったものだという事は理解できた。
そして、一通り呪文を唱え終えた母は、杖を回す。そして、杖をいきなり隼の目の前に突き立てると、隼に向かって言う。
「大鴉の姿は何処へ消えた」
その言葉と同時に、盗賊神書が突然浮き上がる。すると、盗賊神書が勝手に開いてペラペラとページがめくられる。そして、あの赤い文字の書かれている最後のページとなり、赤い文字が隼の目に入る。
すると、その赤い文字が光る。その光った文字を見ると、何やら隼の頭の中に何が入って来た。その何かが入って来たと同時に、隼はいつの間にか口を開いて言葉を言っていた。
「闇夜に紛れて消えた」
その言葉を、言おうと思ってないのに口走った隼。その瞬間、黒い光の中から羽根が出てくる。羽は黒く、まるでカラスのような羽根で……。
「ウフフ……これで『彼』は隼の中に……ああ、嬉しいわ……」
仮面に隠れて隼には見えなかったが、仮面の下の母の表情は恍惚の表情となっていた。それほどこのことが嬉しいのだろうか。
すると、黒い羽根は次第に渦巻く。そして、渦巻いた羽根は、どんどん集まっていき、人の形を象っていく。
「な、何……? 何が起こるの……?」
人型を象った羽根の塊がいきなり隼に近づいてくると、なんと隼の中に入入っていく! あまりの出来事に、理解が出来ない隼。
「うわあああ何これ!? 羽根が……羽根が僕の中に! ああああああああ! やめてええええええ!」
「さあレイヴン、もう一度私の前に現れて。あの人に取り憑いていて、怪盗をやっていたあの時のように。あなたに相応しい子が、ここにいるから……」
羽根が全て隼の中に入ると、隼の下に影が出来る。光もないのに出来たその影は、長く伸びて人の形となる。しかし、その影は隼の姿とは全く違う姿であった。
すると、伸びていった影が隼から離れた。隼から離れた影は、黒い煙を上げながら浮き上がって行った。
その浮き上がった影は、次第に鮮明さを増していく。そして、はっきり見えるようになると、その姿に驚いた。それは、いつも小説見ていたレイヴンの姿であった。シルクハットにマントのレイヴンだった。
「ふわぁぁ……やれやれ、フェイスレスウィッチかい? 折角いい気持ちで寝ていたのに……」
長い黒髪を、革手袋で払いのけながらそういうレイヴン。その長い髪の毛の下には、挿絵で見ている端正な顔立ちが見えていた。
「だってレイヴン、あなた二十年後に起こしてくれって言ってたし、私とお父さんの子供に是非、怪盗を継がせたいって言ってたでしょ? だから起こしたのに……」
「ついさっき男の子にじっと見られて少し起きちゃったからね……それまではずっと深い眠りについていたんだけど、その子に本を開けられて日を浴びちゃったからね……ああ眩しかった」
「そうねえ」
いきなり現れたそのレイヴンと、なんの変哲もなく会話している母。だが、隼から見れば、そのレイヴンには明らかな違和感があった。それは。
「お母さん……その人、なんかおかしいよ。空中に浮かんでいるし、なによりこのレイヴン、足が無いよ!?」
驚いた隼に対し、母と浮いている男は笑い始める。母は顔に手を当てて笑い、レイヴンはマントをたなびかせながら笑う。母の顔には表情が無く、男がたなびかせるマントの中には、下半身というものがなかった。
「まあそうよね、普通の人から見ればレイヴンはおかしいもの」
「まあ今の私は幽霊だからな。足なんて死んだ時に捨ててしまったよ」
「幽霊だから普通に浮けるしね〜正直私の力なんかより良いわよ〜」
「ウィッチ……やはり君は彼と結婚してから不気味さがなくなったようだ。今はただの魔女の力を持つお茶目な女性だ」
「ウフフ。ごめんね」
二人で楽しそうに会話しているが、隼はそんなことよりも今の状況を説明して欲しかった。この縛られている状況と、何かの儀式で現れたレイヴンのことについて。
「ねえお母さん! これって一体なんなの!? 説明してよ!」
「そうねえ……私儀式で熱くなって汗かいちゃったし、疲れちゃったわ。後はレイヴンから聞いてちょうだい」
そういうと母は、部屋の電気をつける。明かりがつくと、床に書かれた魔法陣や柱に縛られている状況。そしてレイヴンと仮面の母がはっきりと見えた。
そして母は、フードを下して杖を壁に立てかけた後、ドアを開けて何処かへ行ってしまった。
取り残された隼は、何が何なのかわからなかった。いきなり母が儀式を初めて、いきなりレイヴンが現れたことに。
「あ、あの……」
「わかっている。説明してほしいんだろう? 私のことを、そして母のことを」
「あっ、はい。お願いします……」