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「「変わり始め」」
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「・・・どうしたの？」

急に美玲さんに声を掛けられた。
いつも一人ぼっち・・・と言ったら失礼だけども。

「あ、あの・・・」

もしかして、副学級長絡みかな・・・？

「あたし・・・中学校で・・・」

違う？何の用だろ？

「小学校まで一人で・・・寂しかった、から・・・あの、友達に・・・なって、ください」

＿＿勇気を振り絞って出てきた言葉。

その言葉は今までの寂しそうな美玲さんから出てきたとは思えなかった。

「え・・・？」

私から言えば衝撃的だった。
まさかこんな言葉を言うと思わなかったから。

予想という壁を・・・ぶち破ったような。

「‥・無理、ですか？」

「あ、いや・・・その・・・」

もういいや。思ったこと正直に言っちゃおう。

「予想外で、さ」

苦笑を漏らしながら、言った。
反応は・・・期待通り、と言っていいだろうか。

「予想外・・・？」
「いや、何でもないよ、友達になりたいんでしょ？」
「あ、はい」
「いいよ、ほら」

手を差し伸べる。

美玲さんは申し訳なさそうな、そんな顔をしながら握り返した。

「・・・よろしくね、美玲」

「え？・・・あ、・・・灯香ちゃん・・・こちらこそ」

そういって微笑んだ美玲の顔が、正直すごく可愛いと思った。
いくら完璧主義者といっても、どうして美玲は友達ができなかったんだろ？

まあ、いいか‥色々考えすぎて頭破裂しそう。

「・・・美千保？」
「ん？いやぁ、なんか微笑ましいなーとか思ってて」
「え、何それー」
「ふふ・・・あ、美玲ちゃんよろしくね」
「あ、はい！美千保・・・ちゃん」

妙な空白に突っ込みそうになったけど、意味はないだろう。
・・・ないよね？

「あ、あたし・・・ここで曲がるから‥じゃあね」
「おー、私もここで逆方向に曲がる」

ちなみに私は真っ直ぐ。ここで二人とお別れ。

「美玲、美千保・・・ばいばい」
「ばいばいー」
「さ、さようなら・・・」

まだ慣れないのだろうか。
美玲はまだおどおどとしていて少し・・・不自然・・・。

「ん・・・」

一人になった。
急に心が詰まるように、寂しくなる。


「・・・か？」

急に遠くから声が聞こえた。
その瞬間、肩に一筋の光線が走ったような・・・寒気を感じ、私は振り返って衝動的にカバンを振り回してしまった。

「って、痛！！」
「え？」

カバンを下ろすと、そこには柿崎くんがいた。

「・・・ちょ・・・おいもか、いきなりカバンでぶん殴ることはないだろ・・・」

私はその正体を知って一気に恥ずかしくなった。

「あ、あ・・・知らないよ！！」

と叫んでもう一度カバンを振り回した。

「痛い！」
「あーもう！怖いのよ！誰なのかもわからなかったし！！」

「だからって‥」
「あー知らない知らない！！てか何の用よ！？」

そうか本題。
何で話しかけてきたんだろ。

「あーいや、そのさ・・・」
「何よさっきまでの元気さが無くなって・・・気持ち悪いわ」
「はぁ！？・・・そんなことはいいんだよ」

一気に切り捨てたね。
そうですねどうでもいいですよね・・・。

「お前は・・・『もか』って呼ばれるのは、嫌なのか？」

「は？」

「いや・・・そう呼ばれるのは眞城だけにしてほしい、とか・・・そういうこと思ってないのかなって」
「は？いやそれ以前に‥何で眞城くんだけにしてほしい、って思うのよ」
「いや好きなんだろ？眞城のこと」

「・・・え・・・ええええええええ！！！？」

「いやいや思いっきりいつも顔に出てるんだよ、あと行動も出てる」
「いやいやいやいいいやあああ、べ、別にそんな・・・恋愛感情なんかないし！！そもそもあんたに関係ない！！」
「おー、にやけますね〜」

鬱陶しい顔をしながらこっちを見ていた。

「・・・！！あーもう！！？だから違うって！」

衝動が抑えきれず、思いっきり跳び蹴りを顔面に食らわせたのであった・・・。

いや、眞城くんが好きなのは本当だよ。本当だよ？
そんなの・・・言えるわけないじゃん！

これは・・・照れ隠しってやつだよね‥。

「当てすぎだよ！お前の蹴りは昔から痛いんだよ！！」

小さいころのあだ名は「蹴り女」(けりじょ)とか呼ばれてたなぁ・・・。
あの頃は黒歴史。
ちなみに一直線の傷を頬に負わせたことだってある。

流石に先生に怒られたけど。

「てか何よ、呼び方がどうのこうのとりって」
「こうのとりってなんだよ」
「もか、って呼び名が？眞城くんだけにって？ばかばかしいよそんなのどうでもいい」
「てか、俺もかって呼び方お前の弟につられてそう呼んでるんだよな・・・何か最近呼びにくくなってきたから・・」
「・・・？」

「灯香、でいいか？」

「‥好きにすればいいじゃん」

「お、マジで？んじゃあそうさせてもらうよ、灯香」

呼び方一つくらいで・・・。
別に変ったとしても、私は眞城くんのことが好きだから。ね？


『MとTどっちが好きなんだ？』

ふと、そんな言葉を思い出した。

結局、答えは分からないまま。・・・だけど、私は眞城くんがどっちを選んだなんか、だなんてもう気にしない。

どっちであれ、私は眞城くんに私を好きになってもらえるようにする。




＿＿そんな平和なことを考えてた私。

と、私の親友との間に亀裂が走る。



まさか、茉里が・・・そう思っていたなんて・・・。