コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 空に輝く二つの月。【オリキャラ超募集中!】 ( No.39 )
- 日時: 2016/12/10 17:31
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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「あー! 私はバレー部に入るんだ!」
いつもみたいに、さり気なく……話しかける。そんでもって、部活のことを聞いた。
まだこの時期だから、そういう話題はごく普通で、クラスでも飛び交っていたけれど、俺からすればそういうナチュラルな会話をするのも少し怖くて不安で。
井筒はそういう俺の気持ちを見透かしているのか、「本能」なのか。──ナチュラルにナチュラルで返してくる。
えへへ、っと笑うと見える白い歯とか……他のやつは最強だ、とか怖いとか偏見を持っているけど、凄く優しいし……他のネチネチした女子よりもずっといいやつだと思う。
「そっか。頑張れよ」
「ありがと!……なんか美作、いつもより優しいね」
「いつもよりって、いつもはこれ以下ってことかよ?」
「まー、そーゆーこと」
……もっと話したいなって思ったけれど、タイミングが悪く、先生が教室に来てしまった。
「やば」
「あ、やべ」
声が重なってお互いに急いで席に座った。
「おい、そこ!! 井筒と美作。時間に座るは遅いんだよ、時間内に座るんだ!!」
──朝からよくそんなでかい声が出るなぁ……。
怒らせたら怖い先生。
やっぱり見逃してはくれなかったか……。
「はーい。すみません」
「す、すみませんっ」
「よし」と言って先生は漸く、教卓に立って起立の号令を掛けるようにと言った。
立ち上がって、ちらっと井筒の方へ視線をやると目が合った。
──慌てて逸らす。
……その後の井筒の顔は知らない──。
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- Re: 空に輝く二つの月。【オリキャラ超募集中!】 ( No.40 )
- 日時: 2016/12/16 17:24
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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「なーなー!」
休み時間、俺を呼んで窓の方へ引っ張ったのは同じクラスの同じサッカー部……高天星だ。
星は俺と違ってなんでも上手くこなす。──よくいう、器用なやつだ。
「なんだよ星」
「あのー……えーっと、ゆいと似た名前のやつ」
「あぁ、井筒か。井筒月」
「そーそー」
井筒がどうかしたのかな、と気になっていたら
「んの横にいつもいる人ってなんて名前だっけ?」
横にいつもいる人……星の視線の先のゆえの横には……小貫。
「小貫陽、小貫さんのこと?」
「そーそー、多分その人」
小貫がどうしたんだ、と思ったそのタイミングで星は──。
「俺その人のこと好きなんだわ」
「ふーん……──ん!?」
好き、って名前も覚えていなかったのに!?
星の「好き」の基準──俺にはよくわからない。
「小貫さん、可愛いよな!」
……よな、って──。
「あぁ」
気圧されて、肯定してしまう。
「まーゆいには譲らないけどなー」
「譲らない、って──星本気かよ?」
「本気かよ、って」
少しだけ間を開けて、星は言った。
「……本気じゃない方がおかしいと思う」
──……言っていることはかっこいい。認める。
だけど、1個。
その本気で好きな人の名前くらい、覚えておこう──?
ちょっと大事なところで、すっぽ抜けてるやつだっていうのはこの時期まで全く分からなかった。
第一印象は、温和そうな背高いやつ……だったから。
でも変わらない……やっぱいいやつだな、って思った。
……──ゆいが、もう少し星のことを知るのはもっと先に行った時。
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- Re: 空に輝く二つの月。【オリキャラ超募集中!】 ( No.41 )
- 日時: 2016/12/25 17:31
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
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そんな会話をして、しばらく経ってから──星は恐ろしく小貫に絡みに行くようになった。
「なー、小貫さーん」
「……何?」
あぁ、またこいつか──とでも言いたげな目つきを星に向ける。
……多分俺も小貫と同じ立場だったら、同じ目つきをしていたと思う。
「次って移動教室ー?」
「そのくらい自分で分かるでしょ。なんでわざわざ私に聞くの……?」
「いやー、なんとなく」
「なんとなくって、数学で移動教室なんて滅多にないでしょう……?」
あぁ、やっぱこいつ理解できない──とでも言いたげな溜息を小貫は吐いた。
でも、俺は思う。
──ちょっと小貫は鈍感だ……。
普段凄く鈍感な井筒さえも、俺に「高天ってようちゃんのこと好きなのー?」と聞いてきたんだ……自分のこと以外は結構鋭いって井筒が言っていたけど、それはこういうところを言っているんだな──。
けして口は出さずとも、心で俺は強く──強く確信した。
「ありがとー」
……そう言って、小貫の前を立ち去って俺にガッツポーズしてくる星もどうかしている。
時間が近づき、星も俺も席に着いた。
──いつも何も考えていなさそうな星の小貫に対する、強い……本気の眼差しを俺は後ろから見ていた。
自分のことじゃない。
初めてと言っても過言ではない──初めて他人のことを応援したくなった。
……俺にはまだ分からない感覚──「恋心」を抱いた星を。
そう思った時、先生が教室に入ってきて授業が始まった。
──ふと顔を上げて、視線を机から前に移した時……右斜め前に井筒の姿が入った。
──なんだろう。この気持ちは……──。
答えはまだ、見つからないような気がした。
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