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Re: 私がヒーローになるまでの話【オリキャラ募集!】 ( No.52 )
日時: 2016/12/23 11:18
名前: 薄葉あた丸 (ID: V9u1HFiP)

 壁の向こう側から、とんとんと階段を一段ずつ降りる足音が、だんだんと大きく聞こえてくる。
 
 音がこちらへ近づくにつれて叶也と悠は、何だか浮かない顔になった。

 反対に千紘は階段の方を気にしながら微笑む。

 全く違うそれぞれの反応に、鞠乃は世良という人物像が全く想像出来なくなった。

 恐い人が来たら嫌だなと思いながら、視線を階段の方へ向けて、スプーンですくったじゃかいもを口に放り込む。

「まだ間に合うぞ、早く座れ」

 やけに嬉しそうな千紘が壁の向こうへ話しかけた。
 
 と、同時にぴたりと止まる足音。ギシギシいっていた床が落ち着く。

「誰か、客人がいるようですが」

 向こう側の低い声はそう答えた。

 声の主は客がいることについて、喜んではいない様子だ。後に深いため息がもれるのを聞いた。

 千紘はますます明るい調子になる。

「そんな事はない。いつも通りだ。早く来ないと冷めてしまう」

 あまりにも温度差がありすぎる二人の会話に、鞠乃は笑っていいのか悪いのか分からなくなった。

 世良は諦めた、という風に重い足取りでまた歩き始めた。


 疑ってかかる動きで影から姿を現したのは、いかにもチャラそうな見た目の二十代くらいの男性。

 髪は金髪と茶髪の中間くらいの色に染めており、少し長めなのか後ろでまとめていた。

 耳たぶの銀色のピアスは小さく輝いている。

 ここにきて初めて危険と思われる人物と出会ってしまった。

 彼は鞠乃と宗介を順番に目だけで確認し、泣きそうな瞳になりながら吐き捨てた。

 ——泣きそうな瞳?

「やっぱり後で食べます」

 すぐさま後ずさりし、階段を駆け上って逃げた。

 一瞬の出来事に鞠乃は呆然と、ただ小さくなっていく忙しい足音を聞いていた。

「いやあ、おもしろいな」

 満足げに頬杖をつく千紘。


 叶也と悠が浮かない顔をしていた理由が、何となく分かった気がした。

「今の方が、世良さん……?」

と、鞠乃は悠にささやいた。

「うん。あんな見た目だけど、人見知りをこじらせてるんだ。黒川さんはそれをからかうのが好きらしくて」

 
 実は千紘は悪趣味なのではないか。