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Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.104 )
日時: 2017/01/24 23:52
名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)

『第10章』

51.


———



——重たいバスケットボールが地面につく、バンッという音が隣で聞こえた。その後、先輩たちの嬉しそうな声が湧き上がる。


「すごい!すごいよ三崎さん!」
「あの位置から3回連続シュート決められるなんて……」

……三崎羽奏ちゃんは、バスケ部に入った。私と同じ、バスケ部。
それに彼女はシューティングガード———来美ちゃんと同じポジションなのだ。
このまま羽奏ちゃんが注目されてしまうと、来美ちゃんが大会に出られなくなる可能性がある———…。

羽奏ちゃんはそんなことを全く考えずに、先輩から褒められて「有り難うございます!」と笑顔で振る舞っている。
コミュニケーション能力もあり、尚かつ部活に健闘している羽奏ちゃんは、先輩から人気がある。


私がボーッと立っていると、ゆん先輩が「集合!」と声をかけた。

私は急いで皆が集まっている元へと向かう。



皆が集まったのを確認した後、ゆん先輩が言う。

「今日は丁度大会まで後1ヶ月。去年は銀賞だった……だから、今年こそは全国大会行けるように頑張ろ!皆、今日は2チームに分かれて試合するよ!」
「「はい!」」



/



部活終了。

未だに西に落ちていない太陽が、18時だというのにジリジリと照りつけていて……暑い。
そんな道路を私は来美ちゃんと歩いていた。


来美ちゃんは今のポジションを奪われそうな窮地に立たされている。
だから私は口をチャックで塞がれたみたいに——容易に口を開くことができなかった。何か気に障ることを言ってしまったらどうしよう……、という迷いが私の頭の中を巡っていた。

「三崎さん、すごいよね」
そう思っていたら、来美ちゃんからその話題を振ってきた。

「え、……ん……」
私は曖昧な返事を返す。すると来美ちゃんが手を組んで大きく伸びをした。


そして私に呼びかける。


「蒼空。もし私が大会出られなくても、ちゃんと頑張ってよ?もし私のこと気にして負けたら容赦なく………ね」


——来美ちゃんなりの気遣いだ。

やっぱり毒舌な部分もあるけど、こういう優しさで私はよく救われた。


「……来美ちゃんも出られるよ。きっと」
「だといいね——」

私にはこのくらいの応援しかできない。でもこの言葉が、現実になればいいな——そう思いながら、私は来美ちゃんと別れて帰り道を歩いていった。


私の視界が一瞬、揺らいだ気がした——。