コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.107 )
- 日時: 2017/01/25 18:48
- 名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)
52.
———
「よしっ!皆ー今日は大会に出場するメンバー、発表するよ」
1週間経った後、ゆん先輩が皆を集めそう言った。
メンバー発表か。そういえば去年もこのくらいの時期にしていたっけ——。
私は去年も出たから今年も出られるかな、それとももしかしたら1年生が——そういう期待と不安を入り混じらせながら、後ろに組んだ手を固く握ってゆん先輩の言葉を待った。
「まずポイントガードは東雲さん」
3年生だ——去年もメンバーだった。
シューティングガードは2番目、パワーフォワードは4番目に発表される。
「次、シューティングガード———三崎さん」
……三崎さん。
そう言った先輩の言葉を私はしばらくの間、信じられなかった。
来美ちゃんが選ばれなかった……。
私が呆然としている中、ゆん先輩はどんどん進めていく。「スモールフォワード、内海さん」と、先輩の口から発せられる。
「パワーフォワード、宮瀬さん」
選ばれた。…選ばれたのに、素直に喜べなかった。
来美ちゃんと一緒に出られない、という現実を突きつけられたみたいで。
去年も私だけしか出られなかったから——今年こそは、と思っていたのに……。羽奏ちゃんが上手かったのは認めるけど、それでも来美ちゃんと出たかった。
『あたしが大会出られなくても、ちゃんと頑張ってよ?』
頑張れるのかな、私——。
/
「「有り難うございました!」」
部員全員の声が振動を起こし、体育館内に響く。
ずっと私の心の中にはもやもやがあった。
そして……来美ちゃんの顔が見られなかった。恐怖——という訳ではないけれど、何を思って今日部活をやっていたのか、が知りたくなかったから。
すると私の気持ちを吹き飛ばすような、妙に明るい声が聞こえた。
「蒼空ちゃんっ!一緒に帰ろう!」
羽奏ちゃん。
……何を考えているの、羽奏ちゃんは?
でも私の首は横に動かなかった。頷く形となってしまい、羽奏ちゃんはそのまま私を引っぱっていった。
「蒼空ちゃん、メンバー入りおめでとう!」
そう羽奏ちゃんに言われたけど、やっぱり素直には喜べなかった。
「あ、はは…ありがと……羽奏ちゃんもおめでと……」
無理してでも笑顔を向けたいのに、顔が引きつってしまうのが自分でも分かった。
来美ちゃんが羽奏ちゃんのせいでメンバー入りできなかったから、というのもあるけれど、羽奏ちゃんの腹黒さに心底恐ろしさも感じている。
「……月丘さんに」
羽奏ちゃんがさっきの明るい声とは裏腹に、低いトーンで来美ちゃんの苗字を呟いた。
そして同時に私の方を振り向く。
「月丘さんに、ごめん——って言っておいてくれないかな」
羽奏ちゃんの長めの前髪が風で目にかかり、彼女の顔は見えなかった。
けれど私は少しだけ、嬉しい気分になった——…。
——
今回1109文字らしいです。
いつもよりかだいぶ長い、と思います(
- Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.108 )
- 日時: 2017/01/25 21:41
- 名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)
53.
———
登校途中。来美ちゃんとも羽奏ちゃんとも出会わず、私は部活用のリュックを背負ってゆっくりめに歩いていった。
「……10時から、か」
私は腕時計を見てからぽつりと呟く。今は、9時半。
少しだけスピードを速めて歩く。
着いたのはその10分後だった。私は体育館に入り、体育慣用の靴へと履き替える。ドアを開けると、数人の部員が居た。
羽奏ちゃんはまだ来ていなかったけど、来美ちゃんは一人でシュート練習をしていた。
ドアが閉まる「キィ——」という音に来美ちゃんが振り返る。私の姿にも気付いたようで、来美ちゃんは私の方に向かってきた。
「蒼空」
私の体が小さく震える。
なに、と聞き返そうとしたけど私は言葉に出せなかった。
「頑張ってね」
………来美ちゃんはどうして、そんなに優しいの——?
私ははっとして、昨日羽奏ちゃんに言われた言葉を思い出す。
「来美ちゃん!」
「ん?」
来美ちゃんはすぐに聞き返したけど、私は戸惑わずに、
「羽奏ちゃんが、ごめんって——」
最後はよく聞き取れないような小さい声になってしまったけど、来美ちゃんは小さく微笑んだ。そして、
「……ありがと」
と言った。
来美ちゃんと出たかった。けど……取り乱しては駄目だ。
来年は絶対一緒に出ようね、来美ちゃん——!