コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.125 )
日時: 2017/02/05 00:03
名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)

60.


———



夕陽が山の間から覗いている。今日はすごく遅い時間まで練習があった。

部室で長ズボンをはき、私は部活用のリュックを背負って赤く染まった道を歩く。


校門を出たところで、肩で息をしている——室川が、私のもとへと走ってきた。

「どうしたの?」
「え、と今帰り?」

ぜぇぜぇと息を切らしている室川に私は「そうだよ」と素っ気なく言う。
私が歩いていくと、室川も深く深呼吸をしてから歩き始めた。

「全国大会行けそうなのか?」
「……どうなんだろうね。地方大会に出場できたら、だけど」
「てか県大会ってもう明後日だろ?」

そうか、県大会……って明後日か。
全国大会に目がくらみすぎてあまり実感が湧かない。明後日、か……。

「サッカー部は相変わらず?」
「相変わらずっていつも弱小みたいに言うなよ」
「だってそうじゃん。今まで県大会落ちのくせに」
「しゃーねーだろー」

あぁ……少しだけ、私の中にふわふわしたような気持ちが巡っている。

でもその気持ちをかき消す、高い声が聞こえた。

「「室川くんたち、今帰り?」」

……千帆ちゃんと羽奏ちゃんだ。
2人とも室川のことが好き……なのこの空間、居づらいな。



「室川くんってサッカー部だよね!」
「え、あ、うん…」
「サッカー楽しいよね!小学校の時はやってたの!?」
「え、まあ…」
「どんなところが楽しい??女子マネって可愛いの!?」
「え、と……」
「小学校の頃サッカー誰とやってたの!!?」

羽奏ちゃんの質問攻め。
千帆ちゃんは室川に自分のことを思い出してもらおうとしているのか…小学校の頃、と言う話題を口走っていた。
室川不憫だな。それに私のこの疎外感が……。


それと合わせて……私は、この場がすごく嫌だ。

何もできない自分を知らしめされているみたいで。

室川は私のことが好きらしい。でもこんなに千帆ちゃんたちがアピールしているのなら、室川は2人の中のどっちか、好きになったりするのかな…?


そう思うと苦しくなるのが自分でも分かった。



——やっぱり、私は。


千帆ちゃんが室川のことが好きだと私に告げた日。不意に話しかけられるいつもの日常。
柵にぶつかりそうになっていた私を、助けてくれたあの日。



このドキドキともやもやは、「恋」なんだ。


別に室川に特別な感情が昔からある訳じゃないけど、告白されたあの日からよく胸の高鳴りを感じていた。
そして、同時に……室川が千帆ちゃんや羽奏ちゃんと話している姿を見ると、苦しくなったんだ。


やっぱり私は、恋、をしているんだ。

何の個性もない——強いて言うならば気が利くとか、スポーツがちょっと得意とか、そんな男子に。













———


私の気持ち

(ああ…60話にしてここまで意識しちゃったのか……)

本当ならもっと後にしたいんですけどね。
両思いになっちゃったらこの先どうしよう(苦笑)


室川は結構恋愛となると一途かもしれませんけど、蒼空はごまかしたいところもあるようです。
何とか色々引っ張って、にやけるようなエピソードを書いていきたいでs((

Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.126 )
日時: 2017/02/05 20:35
名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)

61.


———



室川は私に告白した。

そして今、私は室川に恋をしている。


一致しているのだ。いわゆる「両思い」というものなんだけど……。

千帆ちゃんや羽奏ちゃんが傷つく顔を想像してしまうと、私から告白なんてできなかった。


こんな気持ちが混ざっていたら、大会にも集中できないよ……。




「蒼空ちゃん、今日ちょっと集中できてないね?」
「宮瀬さんの様子が変……」
「明日もう県大会だよ〜?」

次々と浴びせられる先輩からの言葉に私は切羽詰まっていた。

集中力がない。確かにそうかもしれない……昨日、やっと自覚してからそのことしか考えられないのだ。


ゴール付近からのシュートを担当する私が、こんな調子じゃ——全国大会所か、県大会も突破できなくなってしまう。



全部忘れて、今は大会に集中しないと。
私はそう言い聞かせて、オレンジ色のボールを追っていった。

Re: 粉雪[コメ・オリキャラ募集中☆*・:] ( No.127 )
日時: 2017/02/07 20:56
名前: ましゅ ◆AG5AfKu9Dk (ID: QYM4d7FG)

62.


———



「……あ」
「あ」

声が重なる。

私の前には、室川が居た。


「朝早いな」
「……最近ちょっと上手くできなくて…」

嘘。本当は、室川のことを気にしてしまうから。

あんたのせいだよ……。


気にしたら駄目。…七島くんに振られた後と同じことなのに、違う感情だ。
あの時は振られたけど笑顔で居ないと、という思いでいたけれど——今は、室川と普通に話すため。

せめて、部活が終わるまでは——。

集中しなければいけないときまでは、室川に対する気持ちなんて考えちゃ駄目だ。



「今日、頑張れよ」


県大会当日。一度学校に行ってから、部員全員で会場に行く。


「……ん」

曖昧な返事を返して、私は室川に背を向け体育館へと向かった。