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『第5章』2年間の友達。

22.


———




……土日明け。一番辛い、月曜日。
私はスクールバッグを肩にかけ、家の玄関を開けて歩き出す。


「はぁ……」

日曜日の部活の疲れがまだ取れないなぁ……。
何だかストレスも溜まるし。
今日は前の練習試合の後の雨とは打って変わって、快晴だ。

本当に、どこまでも青い……。


「あー」

私の数m後ろから、そんな声が。……タッ、タッ、と音を立てて私の方に近づいてくる。
……走ってる……？

私は急いで振り返る。——振り返った先には、膝に手を当てて息切れした様子の…千帆ちゃん。

「千帆ちゃん？」
「蒼空ちゃん、…歩くの速いね……おはよ…」

所々にはぁ、と口から大きく息を吐きながら千帆ちゃんが話す。

「そうかなぁ？…まあいいや、おはよー」

私はいつもより抑揚のない声で返す。……私は、いつもと違う……何だか違和感を抱いた。


「あれ？……千帆ちゃん、髪切った？」


いつも腰くらいまである髪の毛が、……肩よりもう少し長いくらいの長さになっていた。


「おぉっ！さすが〜。私中1の時はずっとこのくらいの長さだったんだけどね！私散髪は美容院に行ってるんだけど……面倒くさくて行ってなかったけど、久しぶりに行ってきたの！」

少し早口で話しながら、ふわふわと巻いた髪を触る。

「へぇ……」

ごめん、あんまり聞き取れなかった……。といいかけそうだったが、一応。







「あ、宮瀬」


突然、右隣から……そう、声が聞こえた。——










——


昼の更新終わります。夜はちょっと分かりません……。

明日から学校なので、ちょっとペース落ちるかも。

23.


———



「……？」

一瞬、私の髪が顔に当たり……誰なのか分からなかった。
髪を耳にかけてから私は、光の加減でよく見えない……その、男の子の姿を見る。


「……室川？」
「そーだよ。気付くの遅ー」
「光の加減でよく見えないよ」

何だかんだ言い争っていたら、横で少し恥ずかしそうに、両手の人差し指を会わせながら……、

「あの、室川くん……おはよう……」
「え？……っと、立花？」
「うん、私立花千帆……」

千帆ちゃんが今までにはないような表情で……室川に言う。

「千帆ちゃんどうしたの？真っ赤」
「…っええ！？？」

気付いてなかったみたい。
……どうしたのかな？いつもの千帆ちゃんじゃないみたい……。



「——じゃーな」

しばらくしてから、室川は私たちに背中を向けて、そのまま走っていった——…。

その姿に少しだけ、寂しさのようなものが上から降ってきたような気がした。



「——あのね、蒼空ちゃん」

「…ん？」


唐突に千帆ちゃんが、いつもより少し低い——そんな声を出す。
私はすぐに聞き返した。千帆ちゃんはしばらく間を空けてから……私の方を向き、



「私、室川くんのことが好きなの」






……——え？











———

てなわけで、少し関係が複雑化？してきましたかね。


明日更新できたら続き書きますー(・・)v

24.


———




「……そ、そう、なの？」
「うん……。室川くんは…小学校で2年間友達だった……。
　まぁ、小1と小2の間だから——覚えてくれてはないんだけどね」


—……覚えていない。


何だか私は、少し前に思い出した……『楽しいって思う方を選べば？』と言う言葉がまた脳裏をよぎった。
……言葉しか思い出せない……でも千帆ちゃんの場合は、何も覚えられていない——。


「私は…その頃ムードメーカーだった室川くんのことよく覚えてるんだけどね。あぁ、その後は段々孤立していったって前の友達に聞いたけど……。———前に室川くんに『私のこと覚えてる？』って聞いたら何か戸惑ってからさー、ちょっと申し訳なさそうに『分からない』って言った。……私の存在あんまり認識されてなかったんだなーって、———」



——その続きは何も言わなかった。

言いたくない………というのが本音だろうな……。


そんなことないよ、と言おうと思ったけど——その言葉は、千帆ちゃんの無理に明るい声で遮られる。


「って、あ、蒼空ちゃんごめん！……私の事情ばっかり話しちゃって」
「え、いやそんなことないよ……？」


——何だか私は、胸の奥が締め付けられるようだった。



私は、本気で片思いしている千帆ちゃんに——室川に「付き合って欲しい」と言われたことをぱっと思い出した。

このことを言ったら……多分千帆ちゃんは悲しむ。

言わなかったら……千帆ちゃんを傷つけることになるのかな——。











——


こんにちは。新学期始まりました……。
もう明日から1日授業らしいです。



コメント絶賛募集中です！！

25.


———




「——ん、蒼空ちゃん」

ボーッと突っ立っている私の肩を、千帆ちゃんが軽く触れる。

それに私はハッとした。……何、考えてたんだっけ……。


「ごめんね！何か蒼空ちゃんと室川くん、仲良いみたいだから……ちょっと話しておこうかな、って思っただけだから……気にしないでね？ってか忘れて！！」
千帆ちゃんが頬を赤らめる。……やっぱり、こんな純粋な彼女には、言えなさそう——…。


「蒼空ちゃん、やばい！やばいよ！遅刻しそう！！」


千帆ちゃんが左腕に付けた白色の腕時計を見ながら焦った様子で私の方を見る。……私も急いで腕時計を確認すると、8時18分……朝のHRまで7分！？


「わ、…急ごう！」
そう言い、私は千帆ちゃんの手を取り走り出した——。




/




数秒先に着いた私はドアを勢いよく開ける。その後に続いて千帆ちゃんも教室へ入る……。

クラスメイトの皆が目を丸くしてこちらを見ていた。……うわ、恥ずかしい……。


そして、私は教卓の方を見る。……よし、先生来てない。



千帆ちゃんと私は急いでスクールバッグから教科書や筆箱を出し、もの凄いスピードでロッカーへバッグを入れにいった…——。











———


今回本編475文字らしいです。

少ないですね笑
あと1話1話で話があまり進まない……汗

26.


———




……今日は部活、休みか。

波留ちゃんたちと一緒に帰ろう…——。


「波留ちゃん！」
「蒼空ー…」


私たちは、お互いを呼ぶ声が重なり……笑いに包まれる。



——しばらくして笑いが収まった後、私は笑顔で「一緒に帰ろ」と、まだ笑った後にじわじわ来る笑いを堪えながら言った。
波留ちゃんは「らいちゃん呼んでくるー」と返し、来美ちゃんの席へと小走りで向かっていった……。
そしてしばらくした後、

「あ、来美ちゃん！いつものメンバー揃ったね〜」
「確かに。最近は千帆たちと行動することも多いけど」


——千帆ちゃん……—は、本当に室川のことが好きなんだろうなぁ……。


やっぱり私は千帆ちゃんに、室川に告白された……なんてことは言えなかった。——本当、どうすれば良かったんだろう。

千帆ちゃんは大切な友達。知り合ったばかりだけど——話も合うし、いつも元気で私たちを和ませてくれる存在でもある。……だから千帆ちゃんとの仲は悪くしたくなんてない……—。



「蒼空ー？」


「……あ、え？」
「話聞いてなかったでしょ。蒼空最近危なっかしいよねー…」
「そうかな？いつものことじゃないー？」

あぁ確かに。……と、来美ちゃんがすごく納得していた。
——それはそれで傷つくけど。






——千帆ちゃん。ごめんね——…。


私は心の中でそう呟き、スカートをぎゅっと握った。