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Re: 【短編集】この一杯を貴方と。【開店中】 ( No.8 )
日時: 2017/01/13 23:45
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

#4 「影響」

「chestnut」は最近変わった。
その理由の一つに、「若水青の来店」が大きな影響を及ぼしている──。
嫌なものではなく……素晴らしくいい影響で、土日を中心に客の出入りが盛んになってきている。
それでも尚、圭介が店員の数を増やそうとしないのはこの「chestnut」を2人で守るというプライドがあるからなのだろうか。

増やさないということに対しては秋乃も賛成で以前より増してテキパキと仕事をこなして他人様の悩みを聞いて自然に解決する……という神技を披露している。

そういえば、「秋乃はただ話を聞いているだけなのに自然に解決し過ぎじゃないか。そんなもので解決する程度の悩みなのか」と思った方も少なからずいるだろう。
……私、客観的に圭介や秋乃を見ている私もその疑問を抱える1人だ。

──今のところそれが改善されることは伺えない。
悩みの程度もよく分からず、ぼやかされたままである。


「すみません!」
「はい、少々お待ちください」
注文を取っている最中に他のところから注文を取るようにとの声が上がる。
……秋乃の働きぶりは、ここにいる誰もが認めており誰1人として文句をこぼす者はいない。



でもそんな中でも、
「お待たせしました、こちら本日のケーキのアップルシナモンパイとホットコーヒーになります……」
「そんな事よりも、やっぱり青ちゃんが認めただけあって可愛いね! 良かったら連絡先とか交換しておかない? 連絡取りたい時とか便利だろうし……ね?」

まだ注文された品の説明が終わっていないにも関わらず、秋乃に「連絡先を聞く者」──はっきり言ってしまえば、ナンパする人が増えているのだ。

変な話だが、若水青が「chestnut」の紹介と共に「可愛い店員さんに会える」というコメントをしたら、それに食いつく者も増え、秋乃自身もそれに戸惑っている。


そんな時に参上するのが、ただただコーヒーを只管淹れているイメージの圭介。フロアに出てきて、「秋乃、もう出来てるから運べ」と言うのだ。

秋乃はそれを待っていたかのように頷いてそのナンパをされた場所から離れる。
圭介と秋乃の関係をしらない客は「もしかして年の差での夫婦」かと勘違いする人も多いようで……「親子」だと説明すると二度驚き、「父の前で娘をナンパなんて出来ない」と一度八栗親子の真実を知ると無駄に秋乃に声をかけるものはいなくなり、悩み者だけが秋乃に相談するという以前と変わらない状況に出来るのだ。

──少しぐちゃぐちゃと説明してしまったが、秋乃や圭介だけでなく猫のこんぶも、人気者だ。

ウトウトとしているこんぶを多くの客が撫でていくため、少しずつこんぶも愛想を覚え始めている。

……とはいえ、まだまだしっかりと使うには時間が掛かりそうだ。


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