コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

episode1 カレーのシミは落ちにくい ( No.3 )
日時: 2017/01/26 18:45
名前: 雪姫 (ID: CWUfn4LZ)




家に着きました。靴を脱いだらすぐにテレビのリモコンを探してスイッチオンです。
冒頭部分を見逃してしまいましたがドラマに間に合いました。
前回のあらすじだったのでこれはセーフです。セーフとするのですよ。

「おぉ…これは、予想外の展開なのです」

ヒロインからの強烈なビンタをくらい崖から主人公は、
波に流され遠くの街に流れ着き、漁師さんに発見されて奇跡的に命は助かりました。
良かったです。ヒロインも殺人犯にならなくて安心なのです。
と思っていたのですが、そうはいかないようなのです。

まさかの主人公が記憶喪失なのです。
崖から落ちた際に、大きな岩で頭を強く打って自分の名前も全部吹き飛んでしまったようなのです。
大変なのです。
主人公にはヒロインがいるのに、新人看護師とイイ感じなのです。キスまでしちゃったのです。
新たな恋が始まってしまったのです。あんなに好きだと言っていたヒロインはどうするのですかっ。
と思っていると、ヒロインです!主人公をビンタして崖から叩き落としたあのヒロイン登場です!
修羅場です!

「ここで今日は終わりですか…。続きが気になります」

病院のベットの上で新人看護師とイチャイチャしている主人公の前に、
ヒロインが現れた所でドラマは終わってしまいました。残念です。
すっごく続きが気になります。でも続きは来週なのです。だって今日は金曜日。
ドラマの再放送は毎日、月曜から金曜まで夕方から毎日やってます。
月曜から木曜は次の日に続きが見れるので、少し我慢すればいいだけなのですが、
金曜は別なのです。金曜日は特別最悪な日なのです。
土日はドラマの再放送やってないのです!二日間もドラマの続きが見れないのです!

「たかがドラマくらいで大げさすぎでしょ」
「なっ!?たかが、とはなんなのですか!
 ドラマを一本作るのにどれだけの人々の苦労が…。
 って私は誰と話しているのです?」

今ここには私、一人しかいないはずです。
一人しかいないからこそ静かにドラマを楽しむことが出来るのです。
…です。辺りを見てみてもやはり私以外誰もいないのです。いるとすれば

「クゥ」

この毛玉だけなのです。

「そういえば貴方のこと保留したままでした」
「クゥ?」

どうしましょう。ここは学校の寮です。
当然動物を飼うのは禁止のはずです。知りませんが。
他の方にも迷惑がかかってしまいますし…でも元の場所に返すわけにもいきませんし…

「とりあえず貴方、見た目的にカレー臭いのでお風呂入りましょう」
「グゥ!!」

お風呂に入ると言う意味が解るのでしょうか?
毛玉はものすごく嫌そうに体を横に振ってます。

「そんなに嫌なのですか」
「クゥ!」
「……でも駄目です。貴方臭いですから」
「ググッ!!」

女子寮——
そこは神聖な領域とも言われる場所。
そんな場所に汚らしいカレーのシミ毛玉存在しては駄目なのです。綺麗に浄化されるのです。

「グゥー」

逃げるカレーのシミ毛玉と追いかけっこ。死闘の末、何とか捕まえることに成功。
お風呂に駆けこんで洗面器の中に投げ入れます。

「グゥー」
「まだ暴れますか。ここまで来たら諦めるですよ」

カレーのシミ毛玉はまだ逃げようと暴れます。
逃げられないように手で押さえつけて、もう片方の手でシャワーを取りお湯を浴びせます。
水なしの熱湯を。

「ギャァァァ!あっつぃぃぃぃ!!!」
「ほえ…?」

私はカレーのシミ毛玉にこびりついたカレールーを落とそうと思い、
お湯(熱湯)かけたはずなのに、湯気の中から黒い大きな影と人の声が…。

「あっついわ!これだから、風呂はやだって言ったのによぉっ」

湯気が薄れて声の主の姿がはっきり見えました。

「ぉ…女の子…ですか」
「あ?」

そこには黄ばんだ白装束を着たびしょ濡れの女の子(少女と同い年くらいの見た目)が座ってる私を見下ろし立ってました。

…お湯をかけたり水をかけたら男女が転生するあの人的な?
…キスをしたら魔法少女になる的な?

いいえ、どちらも漫画の話です。現実の話ではないのです。そうです、きっとこれも夢なのでしょう。悪い夢なのです。
では覚めてしまう前に気になることを目の前の彼女にぶつけてみましょう。

「カレーのシミは台所用洗剤と漂白剤で落とせますよ」
「カレーのシミじゃねぇよ!!」

親切で言ったつもりが、怒られしまいました…。