コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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空を飛部
日時: 2011/01/06 19:51
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

初めて投稿します!
皆さんに読んでもらってご指導ご鞭撻をもらえると大変うれしいです。

未熟者が書いた作品ですが、どうかよろしくお願いします!!


あと、少しこの小説について^^
一応、コメディー系で行こうとしているのですが、自分が気まぐれなのか、すぐ暴走してしまいますw;
多分、読んだら分かると思うのですが結構な暴走のいきですw

後は、いろんな伏線(はれているか分からない)もちゃんと回収するつもりですww

それでは皆さんこんなお粗末な小説ですが、楽しんでいってくださいねw

登場人物>>1


プロローグ>>2 >>3

第1章>>4 >>5 >>6 >>7 >>8

プロローグみたいな章 >>9

第二章 >>10




Page:1 2



Re: 空を飛部 ( No.1 )
日時: 2010/12/23 07:50
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

    ☆登場人物☆
  
・主人公 秋月 湊 (あきづき みなと)

・湊の姉 秋月 りんご (あきづき りんご)

・湊の先輩、りんごの友達 木枯 麗華 (こがらし れいか)

Re: 空を飛部 ( No.2 )
日時: 2010/12/23 07:56
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

この世界は、白く歪《ゆが》んでいる。まるで絵の具の白を水でぼかしたようなように。
この空間は、温度がない。温かいとも寒いとも感じない。まるで現実じゃないように。
この場所は、蝶が一匹存在している。現実では存在しない、綺麗に彩られた蝶が。
そして——


この夢はとても「悲しい」。何もいない夢なのに。蝶、一匹しかいない夢なのに。


何も感じない夢のはずなのに。ただの夢のはずなのに。
なぜか俺にとっては、この世界はとても大切な夢のはずなんだ。
しかし、どう大切なのか、何が大切なのか、なぜ悲しいのか、どうして俺はこの夢を見ているのか、俺には全く分からないところだ。
だって、夢だから。
夢に理由を求めても仕方ない。
でも、理由を求めずにはいれなくて。
だから、この夢を毎回見る俺は何のためにこの夢を見いるのか、この夢の世界で理由を探している。
白くぼけた世界に温度がない空間、蝶が一匹しかいない場所に悲しい夢の中で。


                   ◆ ◆ ◆


 「……っていう事になったんだけどいい? りんごに湊?」
「そうですね。確かにそうしないといけないなら仕方ないですね。いいですよ、私は」
「………………」
「湊は——って、湊ッ! 何寝てるのよッ!」
ゴン!!
「んがぁああ!」
「ちょ、麗華《れいか》ちゃん!? 私の彼氏になんて事するんですかぁッ!」
ま、待て……りん姉《ねぇ》よ……。い、いつ俺が彼氏になったんだ…?
しかしまさか、目覚まし時計の代わりに起こしてくれたのが、麗華の攻撃とは。
マゾなら嬉しがるかもしれないが、生憎《あいにく》俺にはそんな性癖はないから痛いだけだぞ。
「何が、私の彼氏よ。姉弟《きょうだい》のくせして。それに大切な会議中に寝ている湊が悪いのよ」
俺は顔を起こしながら反論した。
「それでも殴って起こすことないだろ麗——っておいッ! 何だ、その手に武装されているとても硬そうな灰皿ッ!! どこにあったんだよ!」
「制服のポケットの中に決まっているでしょ」
「そんなの入るわけないだろッ! お前のポケットは四次元ポケットか!?」
何だ? あの明らかに麗華の手の二周りぐらいありそうな灰皿は。
あぁ〜。いてぇ。死人が出ないのが奇跡に近いだろ? 今の起こし方。
もっと、こう愛情が含まれたような起こし方は出来ないのかねぇ。『起きないとキスしちゃうよ♪』見たいな感じでさぁ。
俺は殴られた頭を抑えながら少し頭のねじがおかしい麗華(本人に言ったら殺されるが)と弟の事を心配する方向が180度おかしいりん姉(本人は自覚済み)の方に向き直った。
俺が向き直ると同時に彼女たちと目があう。
そこにある表情は俺が予想していた表情とは違って、彼女たちの見開いた目だった。
「……! 湊、泣いているの?」
「あぁ?」
そして俺は気づいた。自分の頬が何かでぬれている事に。
それを必死に拭おうとするがあふれる涙は無意識に出ているため、止める事は叶わず流れ続ける。まるで、決壊したしたダムのように。
「……みなちゃん」
「いやッ!? これは別に殴られたから出た涙であって、そんな心配するような事じゃ……」
「…………」
だが、彼女たちは気づいている。これは殴られたから出た涙でもないし、欠伸で出たような軽い涙でもない事を。


夢を見たからだ。とてもとても心が沈む、蝶の夢。


その夢は俺を簡単に泣かせる。
多分、現実が肉体と精神で生きる世界なら夢は精神だけで生きているのだとおもう。だから、夢で楽しい事が起これば、目覚めたときには覚えてなくても無性にすっきりするんだろう。
逆に、夢で悲しい事が起これば、目覚めたときは精神が異常に疲れている、あるいは落ち込んでいる様な感じになるんだろう。
俺のは後者の方でいき過ぎな夢なんだ、そう理解している。
だから、もう泣くことには慣れた。
けど、やっぱり普通の事ではないみたいだからクラスメイトは引いているみたいだ。
はッ! ま、それが普通の反応なんだろうな。だってさ、起きたとおもったら泣いているんだぜ? 
気持ち悪い以外に何もないだろ? 俺がそんな奴みたら絶対にドン引きだしな。
だから別に気にもしないし憎《にく》いや理不尽だとかそんな目で俺を見るななど思わない。
けど、クラスの中にも理解してくれる奴もいるし心配してくれる奴もいる。
木枯《こがらし》麗華と秋月《あきづき》りんご、この二人だってそうだ。
麗華は性格に難はあるが、それは暴力が行き過ぎたぐらいで、他は成績優秀だし、顔は知的美人とでも言うのかとてもクールな美少女だし、体つきだってそれにあわせて出ているところは出ていて引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
学園の男子生徒からは女王様扱いだ。
秋月りんごは俺の姉でとても弟思いの姉だ(こっちも行き過ぎているが)。麗華とは逆の性質で麗華がクールならこっちはおっとり系になる。顔もそうなのか、りん姉の場合は、可愛い系に入る。もちろん学園の男子からはお姫様扱いだ。
そんな一つ年上な彼女たちが俺には普通に接してくれる。馬鹿にしないで真剣に心配してくれる。
なら、それでいいじゃないか。
こんな学園のアイドル的存在に本気で心配してもらえるんだから。他に何を望むんだよ。
これ以上望んだら男子たちから殺されてしまうだろ?
「……湊?」
 「みなちゃん?」
「……あっ、…ああ。少し考えごとをしていて……」
やば、少し話し込みすぎたみたいだな。りん姉たちが本気で心配している。
彼女たちは、俺の顔を覗き込んでいた。心配しながら覗き込んでいる彼女たちに俺は不覚にもやっぱり美人で可愛い人たちだと思った。
だから、こんな雰囲気と俺の思考を変えようと話題を戻す。
 俺が寝ていて記憶にない、大切な会議とやらの内容に。
「それよりさぁ——」
俺は雰囲気を明るくしようと急にテンションの高い声で話を切り出した。
不意を突いたからな。二人とも目を点にしているぜ。ニッシシシッ!
「俺が寝ているとき、何の話をしていたんだ?」
出来るだけ明るい口調で言う。
「そ、それはね——」
麗華もりん姉も俺が無理にテンションを上げているのに気づいたらしくその流れに乗ろうとしてくれている。気づいてないフリをして。
心の奥ではいつも二人に感謝している。
ありがとう、麗華にりん姉。
「この部活の活動目標が決まったところで、それがなんと——」
麗華はそこで一旦《いったん》、話を区切ると顔を綻ばせながら視線をこちらに向け、そして話し始めた。

Re: 空を飛部 ( No.3 )
日時: 2010/12/23 07:55
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)



「みなちゃんは私の彼氏かそれとも、麗華ちゃんの知人かの話ですよ、みなちゃん」


「——そうそう、どっちの……って違うわよッ! しかも私だけ知人って平等じゃないでしょッ!!」
「じゃあ、友人がいいんですか? 麗華ちゃんは?」
「さっきと対して変らないじゃないッ!」
…………何を言ってるんだコイツらは?
……雰囲気ぶち壊しじゃねぇかよ。もしかして聞いた俺が悪いのか?
「もう、わがままですね……麗華ちゃんは。……はぁ」
「いやいやいや。ため息つくっておかしいから、そこッ! ったくそんな事だからりんごは——」
「………………………」
いや、さぁ。なんかね。うん、違うんだよ。二人とも本当はさっき自己紹介したみたいにさ、ちゃんとまともな人物なんだよ。
だからさ、そこで『フンッ。なんだ所詮、主人公に惚気《のろけ》る典型的な小説じゃんかよ』とか言って読むの諦めらめないでくれぇッ!!
頑張って俺が話し戻すからさぁ! もう少し読んでみようぜ、なっ?
「何を言ってるんですかぁ! 麗華ちゃんこそ——」
「りんごだって——」
大丈夫だ。俺はよくある主人公みたいに女におどおどしたりはしない。
きちんと止めてみせるさ! 見ていてくれみんなッ!!
「まぁ、落ち着け二人と——」
「みなちゃんは絶対に渡しませんからねッ!」
「いや、だからおち——」
「何言ってるのよッ!! 姉弟でしょ!?」
「おちつ——」
「愛は時に肉親の壁も壊すんですッ!!!」
「あの——」
「そんな歪んだ愛なんて存——」
ピキッ!
「お前らぁぁあーーーー!! いい加減にしろぉぉぉーー!!」
ゴスーーーン!!!
ゴスーーーン!!!
 二人の頭を思いっきりグーで殴ってやった。
「「すいませーーーーん!!!!」」
手加減も優しさも抜きで。それはもう、本気で殴ってやったさ。
だって、俺の頭の血管が切れた音したしさ。正当防衛だろ? このままいったら俺の髪、金髪に染まるところだったんだぜ、地球人なのにさ。
「いい加減にしろよ? 二人で醜い争いしやがって」
まったく、学園の女王様とお姫様が聞いてあきれるぜ。
「「だって、麗華ちゃん(りんご)がぁ〜」」
「だっても、ダンテもありません!」
二人とも頭に大きなこぶをつくり、泣いていた。
もうこれじゃどっちが年上か分からんな。 
 俺は仕方なく、並んで泣いている二人の方に歩き出した。
「……はぁ。ったく、二人とも子供じゃないんだから。それに二人とも大切な——」
一旦、俺はここで言葉を区切り二人の肩に手をおき、涙で濡れた瞳をしっかりと見ながら言った。
——もちろんベストスマイルで。


「俺の嫁だろ?」


「…………ッ!」
「…………えっ!」
フン、どうだ? 人身掌握をすべて知っている俺にとってこんな事、俺にとって楽な仕事さ。
そこらへんの主人公とは訳が違うんだよ! 今からはこういう脇役より主人公の方がかっこいい事を言うのが流行《はや》るのさ!
ックククク……フハハハハハーーーーーーッ!!!!
「気持ち悪いこと言わないで。湊、あなた頭大丈夫なの? さっき殴ったときに打ち所悪かったのかしら?」
グサッ!
「こんな子は私の弟ではないので、ちょっと探してきますね」
グサグサッ!!
あれ〜? あれれれ? もしかして俺今すごい気持ち悪かったのか?
いや、そんな馬鹿な!? そんな事はないはず…。だって、これで、確かに落としている奴がいたんだ。主にゲームの中でだけど。
つまり、恋愛シュミレーションゲームで役に立つって事は、現実世界でも役に立つはずなんだ! そうじゃないと俺は何のために女王様風の先輩系が出てくるゲームとお姉ちゃん系のゲームしたんだ! 
これじゃ、全く意味がないじゃないかッ!!
「ね、ねぇ? ちょっと? 湊大丈夫? あんまり真顔で変な事言うから、からかっただけなのよ? だから、そんな落ち込まないで?」
その励ましはもちろん俺の耳に入るはずもなく。
「……ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
「み、みなちゃん!? 顔が現実世界に生きる価値がなくなった、そ、そう語ってますよ!?」
 くそ、何で思い通りに行かないんだよッ! これだから、リアルは……ッ! 
二次元のみんなはこんな感じの言葉ですぐ落ちたのに。1次元超えるだけでこれだ、こんな歪んだ世界のどこがいいんだよッ! セーブも出来ないこんな世界のどこがッ!!
 「麗華ちゃんッ! みなちゃんが2次元がなんちゃらかんちゃらって言ってるよ!! どうしよう〜?」
……ん!? ……まてよ。今、何か閃《ひら》いた気がする。 えぇっと、確かセーブもできないあたりで……。
……セーブ……。…続きから……。もういちど……。……何を……。…この世界…。
「ま、待って! …………。今度はセーブとか呟き始めたわよ。早く止めないと何をするかわかんないわ!!」
そして思考はどんどん危ない方向に固まってきた。
そんな中、りん姉と麗華は俺の事を必死に正気に戻そうと頑張っていた。けど、そんな頑張りは虚しく、すこしずつ真実にたどり着く俺。
……人生……。……やり直す。……リセット……。
ッ!! そうかッ!! 


「みんなぁ! 俺、人生にリセットボタン押してくるよ!!」


「「えッ?」」
俺は、りん姉や麗華の背中側にある窓に走り出した。もちろん、途中にある椅子や机は走行中に邪魔になったが、そんな事で止まれるほどの人格をもうすでに保ってなかった。
「みなちゃん!? そっちは窓しかないですよッ!?」
りん姉の声も後ろの方から聞こえてくるが、そんな事では止まれない。
ここは10メートルぐらいの正方形の個室だ。だから、走ればすぐにその窓のところに
着いた。
 後は、窓を開けるだけ。
「ちょ、湊!? あ、あなた、まさかッ!?」
麗華の叫び声と同時に俺は、窓のロックを解除していた。
そして、後は羽ばたくだけ。怖くない。だって、ここから飛べばすぐに死ねる高さだしね。現実世界のリセットボタンを押すんだ。
そう意気込んで俺は、飛んだ。
後ろには麗華やりん姉の叫び声が聞こえるが今となっては関係ない。
その昔、ロウで固めてつくった羽は太陽で燃やされたと言う。
なら、何も着けずに飛べばいいだけの事だ。

飛んだ瞬間は、上に上《あが》がって気持ちいい。

けど、その後に待っているのは予想以上の恐怖。

たかが数秒は、俺の心を恐怖で蝕むには丁度いいかもしれない。

恐怖に蝕まれる時間、その時間がとても長く感じる中思った。

——やっべ、りん姉や麗華に俺のコレクション見つかったらどうしよう——

                               〜BAD END〜


Re: 空を飛部 ( No.4 )
日時: 2010/12/24 03:05
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

 「ギャアアアアアッ!! 落ちるゥゥゥゥ!!……………………………ってあれ? 俺、部室から飛び降りたんじゃなかった?」
あたりを見回してみるとそこは空を飛部《とぶ》の部室の中だった。
いつものように三つだけある机は、しっかりとくっつけられて大きな机を作り出していた。
「……さっきのは夢なのか? リアリティがすごかったから現実だと思ったぜ」
ってまてぇい! 何ださっきの俺は!? 
俺の嫁? はぁ? 馬鹿じゃないのか? 
かっこつけるときに言うセリフじゃなねぇだろッ! しかも最後の方なんて誰だよ?
俺は日頃あんな言動はしないぞ!? 明らかに違う人格入っていただろ!?
俺はさっきの夢の事を考えながら、激しく自己嫌悪に見舞われた。夢の事なのだがあまりにも現実味がありすぎて、どうしても夢だと割り切ることが出来なかった。
「…………………」
「…………………」
そして俺はまた自己嫌悪する事になる。
………なんで気づかなかったんだ? この部室には俺以外にも部員がいる事に。
そう、麗華とりん姉だった。
俺は、何とか振り向くことができた顔で、二人の表情を窺《うかが》った。
……………………絶望した。
いや、だってさ。俺の顔を見る目がなんかいつもと違うんだよ……。いつもは優しい目で見てくれるのに今回は…………。
顔すら見てくれなかった。
正確に言うと違うけど、俺の顔を見てるような感じで俺の後ろに焦点があるんだぜ?
これって、明らかに異常な行動だよな?
「い、いやぁ〜、二人とも。いたんだ?」
俺は、精一杯の勇気で彼女たたちに話しかけた。それはそれはさっきの夢で飛び降りるぐらいの勇気で。
「——ッ! …………………………………………………う、うん。」
麗華ああああああッ!! 何そのタメは!? 俺ってそんなに異常人に見えたの!?
そりゃ、一人で頭を抱えながらって馬鹿みたいな行動してたかもしれないよ? 
でもそんなタメがいるくらいの話にくさなのか、今の俺はッ!?
麗華の様子は、明らかに挙動不審で俺の事から逃げるように視線をはずしていた。
一歩勇気を出して近づいてみた。
うん、見事に『ヒィッ!!』っていいながら後ろに下がられたよ。そんなに気持ち悪いって事なんだね。あはははは。
…………………。
…………………そんなに悪い事ですか? 飛び降り発言は?
「れ、麗華ちゃん。そ、そそそんなに引くこともないじゃなななないんですか?」
……りん姉……。そんな顔を引きつらせながらフォローしても、俺の心はえぐられるだけだよ?
りん姉は、必死に(顔を引きつらせながら)麗華を説得しようとしていた。多分、その中には自分の心も説得しようとしてる。そんな気持ちも混じっているはずだ。
二人とも俺の発言に対して明らかに動揺しているのが感じ取れたので、少し時間をおくことにする。
しかし、なんっていうんだ? さっきの夢といい、今の俺といい少し自爆している感じがあるな。冷静になった方がいいかもしれない。
少しずつ、問題を片付けていくか。
まずここは、部室。俺たち空を飛部の部室。部屋は十メートルぐらいの正方形の部屋に机が三つ。そこに教卓が一つあって、その部屋で俺は寝ていた。
しかし、人格が異常な俺がアホな事を考えながら(俺のコレクションの事)自殺した夢を見て、そこから奇声をあげながら目が覚める。
そこで、麗華やりん姉に見つかって今の現状。
この現状を元に戻すには、『説得』以外はないわけで。  
……はぁ。
俺は、ため息をつきながら少し考えをまとめていく事にした。もちろん、説得するためにだ。そうしないとこの異常な環境からの脱出は不可能と感じたからだ。
「ちょっと聞いてくれ。麗華、りん姉」
俺はそう切り出して、怯えている二人に話しかけた。夢であった事をすべて話すためには二人の態度に我慢しつつ、語らなければならない。
「な、なに?」
「な、ななんですか?」
二人は少し怯えながら俺の話を聞いてくれた。

Re: 空を飛部 ( No.5 )
日時: 2010/12/26 13:47
名前: こるね (ID: mwz5SFMT)

「へぇ〜。そんな夢を見ていたのね」
「そうだったんですか……」
やっと理解してくれたのか、二人は怯える事もなくなって普通に接してくれるようになった。
説得した時間は、二十分程度だったがそれでも俺にはとても長く感じられた。
もちろん、最初は信じてくれなくて俺の事を精神病院に連れて行こうとまでしやがった。さすがにそれは困るから病院の件も説得した後に夢の事を説得した。
 まさか、一つの事柄に対して二つの説得が必要にならとは思わなかった。
 「長かった……。ここまでの道のりは長かった……」
マジ、泣きそう。だって、やっと信じてくれたんだぜ? 
……考えてみろよ。自分の大切な人からドン引きされて、接し方は異常者扱い。
さらには精神病院に連れて行こうとする。
ここから普通の関係に戻すのがどれだけ大変なのかを。そりゃあ、泣いても仕方ないだろ?
「……はぁ。ったく、それなそうと言えばいいのに」
話を聞こうとしなかった奴にため息つきながらいわれるとカチンとくるな。
でもまぁ、いい。ここは抑えておこう。
「でも良かったです。みなちゃんが元に戻って」
いや、俺が元に戻ったんじゃなくて、りん姉たちが元に戻ったんだからね?
けど、そう言ったりん姉の顔はとても女性的な顔で、さすがお姫様と言われる事だけはある。
だって、可愛い過ぎるんだぜ?
姉弟? そんなの関係ないな。ほんとに可愛いものはすべての壁を越える事が出来るんだよ。
俺は、自分の姉の可愛さに酔いながら麗華に聞きたい事があったのを思い出した。
「そういえば、麗華。今日は何かするために集めたんだろ?」
俺は今日、麗華から何かをするって聞いたから、こうして部室にきたわけだ。
教卓の上に座っている麗華を見ながら言うと、彼女は待ってましたと言わんばかりに顔を綻ばせた。
「この部活の活動目標が決まったわ。それはなんと——」
部活の目標かぁ……。何になったんだ?
…………。
………ん!?
まってよ!?
……………………なんか俺の気のせいかもしれないが……。
……かなりの既視感《デジャブ》に襲われるのなぜだろう?
俺は背中にいやな汗を感じながら、一旦、区切った麗華の発言の続きを待った。
そして麗華はこちらに微笑みかけながら言——
「みなちゃんは——」
「それ以上言うなぁぁぁッ!!! りん姉ッーーーー!!」
 ——おうとした言葉をりん姉は遮《さえぎ》った。
「私の彼氏か——」
ちょ、まじかよ!? しんじられねぇッ! 俺、また死ぬだろッ!?
俺は急いで続きを言わさないために姉の口を手で封じた。
「ふんがぁ!? ふんぐぅぐうぇッ!」
「いいから少しは黙れッ!!」
もう今は姉とは思わねぇッ! 俺はまだ死にたくないからなッ!!
「ちょ、ちょっと? 何やってのよ?」
「……麗華。これは大切な躾なんだ。だからガムテープをもってきてくれ」 
麗華は俺が何を言ってるのか分からないという顔をしているが、俺の顔があまりにも真剣だったのだろう、部室の棚にある物入れからガムテープをとってきてくれた。
ガムテープを麗華から貰い受けるとそこからはまず抵抗しようと頑張る手を縛ることにした。
「み、みなちゃん!? なんて事をするんですかッ!! お姉ちゃん、許しませんよッ!?」
手を縛ろうとしている間は、口を押さえる事が出来ない。なので、りん姉は口で何とか説得しようと俺に話しかける。
「み、みなちゃん? こんな事しても何の得も——」
「うるさいッ! 少しは黙っていろッッ!」
やっと、手を縛る事が出来た。
りん姉が必死に抵抗するもんだから手を縛るのにかなりの体力を使ってしまった。
「うぅ……。おねがい……。みな……ちゃん。もう……や……めて…。」
「ハァ……ハァ…大丈夫だ。ハァ……ハァ……すぐに済むから……」
俺は息切れをしながら、瞳を涙で潤ましているりん姉の口をガムーテープで塞ぎにかかった。
「……お…願い……。…これ以……上は……」
りん姉はまだ説得しようと頑張っているが、鬼の仮面をかぶった俺の心には通じなかった。
「…ハァ…往生際……ハァハァ……が悪いんだ……ハァハァ…よ。」
俺は必死にりん姉の口を塞ごうと、手がガムテープで縛られて地面に転げている彼女の体の上にマウントを獲得した。
ったく、てこずらせやがってッ! やっとこれで終わるッ!
そう俺が確信したとき——
「姉になんて事やってるのよッ!!」
ドカッ!!
「ごほッ!?」
麗華に殴られた。
何で殴られたと思う? 一、やけにバットに似た木製の棒。二、木製バット。三、釘つきのバット。
正解は全部。信じられる? 麗華はそれで俺を本気で殴ったんだぞ? しかも、鳩尾《みぞおち》。痛いなんてレベルじゃないだろ、普通。
「……ごほッ。れ、麗華…。お前なんて事するんだよ……」
りん姉の上でマウントを取っていた俺は吹き飛ばされて、壁にぶつかっていた。何とか体を奮い《ふる》立たせるが、口の中は不純物の味でいっぱいだった。
そんな俺を麗華は、さらに素手で殴りつけてきた。
「姉にセクハラするなんて信じられないわ」
そう言いながら、殴り続ける。
顔、腹、鳩尾、男にとって一番大切な場所。男にとって二番目に大切な場所。
多分、1分ぐらいしか殴られてないと思う。だが、俺にとっては長すぎる1分だ。
まさか、命守ろうとしたらこうなるとは、誰が想像できよう。
ガッ、ゴッ、ボコッ、グチャッそんな音を立てながら麗華は殴り続けた。


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