コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Re:主人公になるには【合作小説】
- 日時: 2012/04/10 00:46
- 名前: ファンタズマ (ID: GHOy3kw9)
【いいですか? これは合作小説みたいです】
はい、クリックありがとうございます。
この小説は、遮犬と申すただの人面犬と、真兎と申すただの人面兎の合作作品です。
ファンタズマ=怪物
という意味です。とある人物から名前を考えていただきました!
ファンタズマで、犬と兎。犬と兎の怪物だーとか考えてもらっても構いませんが、実際は怪物などではなく、ただの犬と兎です。
それでは、よろしくお願いいたしますー。
【注意事項】
・荒らし等による中傷や物語進行の妨げとなるような行動は止めてください。
・これは真兎と遮犬の二人で回していく合作物語です。
・その他、この物語が気に入らない等の理由でコメントを書くという行動も禁止いたします。
・コメント等は、犬か兎のどちらかが対応するか分かりません。名指しならばその方が対応いたします。もしかしたら、まずコメントの返信自体しない可能性がありますが、ちゃんと目を通させていただきますので、ご了承ください。
【犬と兎の意気込みコメント】
遮犬「今まで合作したいと切に願っていた相手との初合作なので、大変緊張気味ですwこの作品は両者共に書きたかった題材の話で、楽しくやりたいと思っています! 二人の違った主人公達の物語にご注目くださいっ。応援よろしくお願いしますっ!」
真兎「そう、全部刈り取って。僕のトリックマッシュルーム」
【目次】
プロローグ1(真兎)……>>1
プロローグ2(遮犬)……>>2
第一条:主役は必ず目立つ
【浅葱サイド】(真兎担当)
#1>>3 #2>>5 #3>>7 #4>>11
【雄一サイド】(遮犬担当)
#1>>4 #2>>6 #3>>9
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.2 )
- 日時: 2012/02/09 23:46
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: /HF7gcA2)
ずっと一緒だった。小さい頃から、ずっと。
その理由は今ではもう分からないけれど、何となく一緒にいると居心地がよかったのかもしれない。
昔から憧れをずっと抱いていた。幼馴染にして、とても格好良かったんだ。強くて、いつも皆を引っ張っていってくれて、リーダーシップで溢れてて、頼りになる存在。こんな人が僕の幼馴染だなんて、考えもつかないほどだった。
あぁ、これが主人公って呼ばれる人なのかな、と本気でそう思っていた。それでいいと思っていたんだ。
だけど、僕は昔からヘタレだった。真性のヘタレだった。それは主人公なんて凄い存在である幼馴染とは比べ物にならないぐらいの。
けれど、それでも僕へと手を差し伸べてきた。そして僕は、それにずっと甘え、手を取り、我が物顔で幼馴染のその"力"を自分もあると思い込んで過ごして来たんだ。ただ、その"力"の作用が僕に少し降りかかっていただけだということにも気づかないままに。
あぁ、なんて僕は愚かだったんだろう。どうしてもっと、早く気づかなかったのだろう。
いつの間にか、幼馴染の君は遠くに見えて、僕は一人、何のスタートも切っちゃいなかった。ずっと停滞したまま、スタートラインさえも踏んでいない、何も参加しないままで、ずっとヘタレのまま僕はこの生涯を生きていくのだ。
最初、それが僕の運命なんだと思った。恨むなら僕の運命を恨むべきで、彼は悪くないと、都合のいいことで彼を守っていた。それさえも、彼の"力"の作用だとは知らずに。
僕はもしかして、おかしいのかもしれない。主人公とか、何だとか、ずっと一緒に暮らしてきた幼馴染のことをなんだか悪く言うようで嫌気が差していた。けれど、それはすべて事実で、彼は彼なりに成長している。僕は——何だ? 何をしている?
このままヘタレのままで、主人公という巨大な波に乗せられたまま、僕は自分の力を何も使わないで、ただそれにあやかるだけの、そんなせこい人間になるのか?
——嫌だ。嫌だ、嫌だ。絶対に嫌だ。僕は、僕のままで居たいと、そう切実に願ってしまった。
だから僕は、こんなものを作ってしまったのだろう。
衝動を抑えきれないがままに、パソコンを立ち上げ、とあるサイトへとログインする。そのサイトは、結構重い話や、討論などが多く、普通の雑談場ではないサイトとして結構有名な方のサイトだった。
そのサイトで、僕は思わずキーボードを打ち込んだ。
『題名:主人公になるには』
ふざけていると思われるだろうか。いや、きっとそうじゃない。中には、僕と同じ気持ちでいる人間がいるはずだ。この世の中は広く、様々な考えも張り巡らされているはずだ。
何も、幼馴染を勝ちのめしたいなどが目的ではなかった。ただ、僕と同じ思いでいる、またはその他の人間に「気にするな」の一言だけでもいいから声をかけて欲しかった。
主人公——その概念に対しての自分の答えをハッキリ出したかったのかもしれない。
題名を入力し終えると、僕は一息吐き、キーボードのエンターキーをゆっくりと押した。
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.3 )
- 日時: 2012/02/12 22:35
- 名前: 真兎 ◆Kb.9rC/zfY (ID: /HF7gcA2)
朝挫鷺浅葱(あさささぎ あさぎ)の印象をクラスメイトに聞いてみれば十中八九「薄気味悪い」「不気味」「陰気」そう答えるだろう。
その朝挫鷺浅葱である僕が直接聞いた訳ではないけれど、独りで居ると普通の人間よりも視界が広くなり、誰が誰をどう思っているかをだいたい予想することが出来る。クラスメイトの人間が僕を見るときの目は不気味な物を見るような感じだ。
人はみんな自分と違った人間を恐れ排斥する。と言っても今のところ人畜無害であるこの僕を表立って排斥する者は居ないけど——裏でいないわけではない——やはり僕という異常で異質で不可思議な人間をみんな怖がっているみたいだ。まあそれは僕も同じ事なので攻めるような事は言えないのだけど。
ガラガラと教室の扉が開く音がする。ああ、来たな、と僕は教室の中に入ってきた者を見る。ツンツンに立った黒髪、整った顔立ち、適度に引き締まった身体、そして僕の全身の細胞がザワザワと騒ぎ出すこの感覚。
《主人公》桐上竜牙(きりじょう りゅうが)。
彼が登場したことで今までバラバラになって会話していたクラスメイト達が黙り、彼の方に注目する。この時点で僕は全身に鳥肌が立つぐらい恐ろしい。
「おっす、おはよう」
桐上が人なつっこい笑みを浮かべて挨拶すると、クラスメイト達も笑みを浮かべて挨拶を返す。不気味だ。恐ろしい。
畏怖の感情を浮かべると同時に、僕は彼を羨望している。みんなに好かれ、みんなに信頼され、みんなに愛される。何事にも成功し、失敗すらも成功への材料に組み替えてしまう、そんな《主人公》に僕は憧れている。
敗北、失敗、不成功。不条理で理不尽で不平等な僕の持っている体質、性質とでも言うのか、《主人公》の間逆、《敗北者(エラー)》。生まれながらに持ったこの《敗北者》を僕は捨てたい。こんな辛い日々はもうたくさんだ。僕は変わる。
《敗北者》を捨てて。
《主人公》になってやる。
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.4 )
- 日時: 2012/02/14 22:06
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: /HF7gcA2)
カーテンから垣間見れた太陽の光が朝を教えてくれた。毎朝、定められたかのように太陽は朝を迎えさせる。その太陽が、どうにも眩しすぎて、僕にとってはあまりいいものではない。
ベッドから起きると、まず初めにため息が出てくる。怠惰という言葉が一番似合うのかもしれなかった。
僕の心は自分で分かっている以上にどうしようもないのかもしれない。
今日も、学校があり、そしていつものように学校へ行く。——幼馴染の、涼代 護(すずしろ まもる)と共に。
僕の名前は古坂 雄一(こさか ゆういち)。この主人公的な存在にして、僕の幼馴染である涼代 護は毎朝僕の家へと来て、一緒に学校へ行く。僕の家の方が学校から近く、護の家は僕の家よりも遠い。だから僕の家に毎度のように寄ってくる。
前までの僕はそのことを有難く思い、それよりも友人でいてくれて、信頼できて、頼もしい限りだった。けれど、今はどうしてか、護に拒絶感がある。それは、昨日ふと思いついた"あのスレ"をたててしまったことが関係していた。
"主人公になるには"
その言葉を打ち込んできた時、自然と僕は手が震えていた。どうしてこんなものを作ったのか。ただ、護という存在がどういうものなのか、知りたかった。
——主人公。その名の如く、彼には力がある。超能力とか、身体能力云々じゃない、もっと特別な力が彼にはある。
それを僕は知っている。人一倍、そのことに敏感なのかもしれなかった。
「はぁ……何を考えてるんだよ、僕は」
バカじゃないのか、と僕は思いをかき消した。胸の奥にそっとしまいこむ。いつも臆病の僕は、そうして生きてきた。どんな時も、そうして心の中に思いを閉じ込めて生きてきたんだ。
「用意しないと……」
パンパン、と軽く頬を両手で叩くと、支度をすることにした。余裕のある時間、今の内に。
それもこれも、これから後に訪れてくる護の為にだった。
支度はすぐに終えることが出来た。寝る前にベッドの横には必ず支度の用意をしておくようにはしてるし、他に朝やることといえば、朝食と歯磨きやらのその他の支度だけだった。
父さんは仕事の都合上で単身赴任、僕と母さんの二人でこの家に今現在住んでいる。兄弟はいたことはいたが、生まれてすぐに死んでしまった。僕の弟となる子だったそうだ。
そのことについて、僕本人は何も覚えておらず、ただ弟になり得る子がいたということぐらいだった。父さんと母さんは悔やんでいたが、僕の前ではそのことはあまり言わない。弟のことを聞いたのも、随分前だったような気がする。
母さんと僕で二人暮らしなのだが、母さんは料理教室の先生をやっていたりするので、朝早くに出かけてしまう。なので、朝食は一人、晩は二人で食べるという感じだった。
誰もいない広々としたリビングのドアを開くと、早速朝食の準備をし始める。毎朝のように決まってメニューを変えていき、今では母さんからも料理を教えてもらったりして、多くの料理を作ることが出来るようになった。
「うーん……今日は簡単に、スクランブルエッグにベーコンとトーストでいいか……」
といっても、その料理の多くは朝に本領を発揮せず、夜に本領を発揮する。母さんが作る料理と僕が作る料理で一つか二つずつ、それでご飯を作る。時に連絡せずに帰ってくる父さんの為にも、母さんは密かに多めに作っているということも僕は知っていた。
朝、母さんが作っていってもいいと話してくれていたが、僕がそれを断った。頼りきりは嫌だったし、何しろ、母さんの朝は忙しいことを理解してきたからだった。
適当に朝飯を作り終えると、早速それを食べる。食べながら、時間配分を考えて、いつも護が来る時間なども——
あれ? 何で僕は、こんなにも護の為にこんな時間配分なんて考えてるんだろう?
食事をとりながら、不思議に思う。きっとそれが護の力なのだろうか、と。
自分でもとてもバカらしかった。そんなの、あるはずないし、第一それは漫画とかアニメの話だと思われるし、護がそうだと限られたわけでもない。
ただ、そんな気がしただけ。その確定もない"そんな気"によって、僕は最近悩まされているということになる。
「……バカバカしい」
呆れたように、誰もいないリビングの中、僕はトーストを頬張って呟いた。
すべての朝食を食べ終えると、軽く自分自身の用意(歯磨きなど)を行い、護が来るのをリビングで待つ。すると、思った通りの時間に家のチャイムが鳴った。
荷物を抱えて、外に出ると、そこに待っていたのは——
「よっ、雄一!」
「あぁ、おはよう、護」
護が鞄を肩越しに持ち、片手をあげて人懐っこい笑みを浮かべて僕へと声をかけてきた。
僕はそれに対応し、返事を返す。勿論、笑顔で。
「さすが雄一。ちゃんと用意出来てるな」
「はは、もう慣れたよ」
「よしっ、じゃあ行くか?」
「うん、そうだね」
毎度のように、こんな会話をする。どうして護はこんな僕と一緒にいるのだろう。そんなことを考えたりしたことがある。
何をするにしても、周りから好かれる護は、僕と一緒に学校へと行かなくても全然いいのに、と思うのだ。
僕という脇役を、護は無意識に利用しているだけなのかもしれない。
この朝は、特にそんな変なことを考えてしまった。
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.5 )
- 日時: 2012/04/08 17:40
- 名前: 真兎 ◆Kb.9rC/zfY (ID: 4CT2wXi/)
《主人公》というのは非常に目立つ。
呼吸するように存在感をばらまき、一歩事に魅力を振りまく。
まるでそうあるのが自然だと言わんばかりに、《主人公》は目立つ。それを不思議に思っているのは僕以外、このクラスには居ないようだ。いや、もしかしたらこの学校に一人もいないのかもしれない。
大きすぎる《主人公》の存在を誰も認識する事が出来ず、当然のごとく受け入れてしまう。それは僕からしてみれば不自然極まりない風景だった。
《主人公》の間逆とも言える底辺に居る僕だからこそ、その存在を認識出来ているのかもしれない。
まあどちらにしろ、僕はこれから底辺から頂点までを目指すわけだ。《主人公》に。
ならばまず《主人公》の特徴をあげてみようと思う。
全身から外へと放出される不自然極まりない存在感と魅力。
《主人公》の元へ集まってくるのは大体が女性。
成功も失敗も全てを勝利へと繋げてしまう。
異様なまでにトラブルに巻き込まれやすい。
異常なまでに運が良い。
女性に大して鈍い。
…………。
自分で初めておいてなんだけど、こんな化け物に僕はなることが出来るのか? ちょっと自信がなくなってきた。
では次は《主人公》桐上竜牙の人間関係について。
甘津甘甘楽(あまつあま かんら)。いつも桐上の近くに居る女。《ヒロイン》だと思う。どう見ても桐上に惚れており、際どい発言を何度もするが本人には気付いてもらえず、そのたびに暴力をふるっている。
大太崎回剣舞(たちざき けんまい)。こいつもいつも桐上の周りにいる女。《ヒロイン》。太崎家の三女。太刀崎という名字は誰でも一度は聞いたことがある有名な物だ。
大太刀回財閥。かなりの規模を誇る超巨大な財閥。
彼女はつまり超大金持ちの娘と言うことだ。金を使って桐上を自分の物にしようとするがことごとく失敗。甘津甘とは犬猿の仲だ。
因みに彼女の家は何だか訳ありのようで、彼女は出来損ない、なんて呼ばれているらしいけど、そんな彼女を救ったのが桐条だ。
まあメインヒロインはこの二人って所だな。ほかにも桐上をねらっている女は沢山居るが、今の所はこの二人が優勢だ。
人間関係がほぼ零の僕には、《主人公》はあまりにも遠いな。
- Re: Re:主人公になるには【合作小説】 ( No.6 )
- 日時: 2012/03/18 05:13
- 名前: 遮犬 ◆.a.RzH3ppI (ID: /HF7gcA2)
僕達が登校している学校は徒歩で15〜20分程度かかるぐらいの距離で、案外近い場所にある。住宅街を抜けると、すぐに都市の方へと出るが、そこを上手い具合にすり抜けたところにある。都市の方より、住宅地からの方が近い高校だった。
学校は既に賑わいを見せていた。廊下や教室、様々な所で行き交う挨拶が耳に届き、そして隣にいた護は周りからかけられる挨拶に笑顔で答えていた。
「おはよーっ、涼代」
「あぁ、おはよう」
護が行く道を、僕はその少し後ろから着いて行く。周りからかけられる声は、ほとんど全て護に対してのものだった。
成績は優秀というわけではない。けれど、運動は出来る方で、性格も良く、人受けが良い。……これが主人公と呼ばれる者の所以なのだろうか。
「護ッ!」
その時、凄まじい勢いで僕の隣を駆け抜け、まるで僕がいないように、まっすぐ護の元へと飛んできた女の子がいた。
その容姿は綺麗というより可愛らしく、身長も小さい。髪をお気に入りのリボンで結び結びしている肩に少し当たる程度の髪の長さを持つ女の子で、正直の所、美少女と呼べるような容姿の女の子だった。その女の子の名前は、初宮 結衣(はつみや ゆい)。
僕は、苦々しい想いでいっぱいだった。
それは——彼女は、僕の初恋の人だったからだ。
「いってぇ!」
その直後、初宮は護の頭を勢いよく叩き、そのまま前のめりになりつつも腕を組んで護の目の前を立ち塞いだ。
「何すんだよっ」
「何するもクソもないわよ! まずは部室の方に覗いてから来いって言ったでしょー?」
「あれ……そうだっけ?」
ボリボリと、頭を掻きながら護は言った。それを呆れたようにため息を吐くと、即座に表情を鬼のように変えて、
「このバカちんッ!」
と、チョップを護の頭上に振り落としていた。
それを喰らった護は、痛みを抑えきれないかのように頭を両手で押さえて唸る。それを見ていた周りの人達は、またかという感じに微笑む。
これだ。この雰囲気。
何も、護はもの凄いイケメンで、学校中から騒がれるほどのものでもない。確かにブサイクでもなく、どちらかといえばイケメンというか、童顔混じりな感じがするような顔だが、これだけ多くに影響を与えるものなのだろうか。
ちなみに、僕は今の今まで挨拶を今日交わされたといったら全て護の後のことだった。護を見て挨拶をしたら、後ろに僕がいたから適当に挨拶を。そういうものだ。中には、護だけに挨拶をして、僕の存在に気付かない奴もいる。
「あ、雄一! あんたからも言ってあげてよね? 本当に……一応、幼馴染だし」
「え? あ、うん」
突然、初宮に声をかけられたので驚いて返事を返してしまったが、一応幼馴染という言葉を聞き逃すことはなかった。
そう、一応なんだ。幼馴染というのは、あまりに飾り物だった。僕が護に繋がることといったら昔からの馴染みということぐらいしかない。他のことについてはかけ離れすぎている。けれど、護は——
「おいっ、一応とか言うなよ。雄一は俺の一番の親友だっつーの!」
といって、護は初宮の頭に軽くチョップを喰らわせた。
「いたっ! 女の子に手をあげるなんて! サイテー!」
「サイテーもクソもあるか! 雄一をバカにした罰だ」
「バカになんかした覚えないわよ! アホッ! このバカ護!」
「勝手に言ってろ」
いつものように、こんな会話もはたまた起こる。
この雰囲気に、護はしっかりと僕のことを介護してくれる。これだよ。これだから、僕は戸惑うことになって、あんなスレをたててしまったりしたんだ。
どうしてそんなに僕のことを介護するんだよ。僕はただのお飾りで、君にとって僕はただの幼馴染という名の脇役なのに。
自然と手が握り拳を作ってしまっていたことに気付き、咄嗟に力を解いた。何だ、最近の僕は本当におかしい。
「行こうぜ、雄一」
「あ、あぁ……うん」
いつの間にか初宮はいなくなっていて、視界には護が笑顔で僕に向かって声をかけてきていた。
実際のところ、何を考えているか分からない。護は本当に僕のことを幼馴染で、大切だと思っているのか。いや、ただ見下して、そういう風にしているだけじゃないのか?
幼馴染という、"設定"があるから。その設定を上手く利用しているだけなんじゃ……。
(あぁ、何を考えてるんだ、僕は……)
頭がグルグルと回転し、教室に辿り着いてもこんな感じだった。
「おうーっす! 護に、雄一じゃんー!」
その時、勢いよく教室の中から飛び出してきたのは、活発そうな、いかにもツッコミ役のキャラだと言わんばかりの男だった。
この男の名前は、久利 銀之助(くり ぎんのすけ)。僕と護とほとんど一緒に行動する、いわゆるいつものメンバーの一人だった。
「銀、おはよう」
「おぉ、雄一っ、おはような! 護も!」
「あぁ、おはようおはよう。今日もテンション高いな」
「まあなぁ! お前ら、来ないかと思ってたぜー」
うんうんと何故か頷きながら、銀之助こと銀は嬉しそうに顔を綻ばせていた。
銀は僕とは似てないけれど、同じような配役であることは間違いないだろう。違いといえば、護と幼馴染かどうかということだ。銀とは、高校1年の頃から一緒で、本当に一年未満しか一緒に行動を共にしていないけれど、とても仲は良くなった。僕の頼れる友人の中の重要な一人であることは間違いない。
「連休明けだからなぁ……最近、風邪とか流行ってるみたいだしな」
「おいおい、まだ春の季節よー? 護ちゃーん。そんな心配より、護ちゃんは自分の身の心配した方が良くないかい?」
「あ? それって、どういう——」
あぁ、そうか。忘れていた。初宮だけじゃなかった。初宮は1年の頃に僕と護と同じクラスだったけれど、今の2年になってからは別のクラスになっている。だから先ほどのように部室に寄れなどを言ってきたりはする。勿論、それだけが理由じゃないけれど。
で、忘れていたというのは、何も印象が薄いとかそんなわけなくて、ただ単に、護の影響受けている人がこのクラスでいたなぁということを思い出したのだ。
「おい、涼代」
凛々しい面持ちで、ポニーテールに髪を纏め上げているいかにも剣道をやっておりますといった和風な雰囲気の彼女の名前は、久鷺 郁(ひささぎ かおる)。漢字で郁と書くので、名前の読みを「いく」と呼んでしまう人が多いが、実際は「かおる」と呼ぶらしい。
久鷺はその美女的な容姿もそうなのだが、高校生らしからぬモデル体型のように足が長くてスタイルも抜群のお姉さんのような雰囲気を持っていることから男子と女子共に人気だ。
しかし、この久鷺は見たところ無口そうで、なかなかフレンドリーな感じになりにくい印象を受けるのだが、結構可愛いものとかが好きで、意外と女の子ぽかったりする。
「ん、久鷺か。おはよう」
「おはようはいいのだが……桐嶋が探していたぞ」
「桐嶋が? 分かった、ありがとう」
護が久鷺に礼を言うと、一言だけそれに対しての返事のつもりなのか「ん」と呟くと、久鷺は自分の席へと向かっていった。もしかして、照れているのだろうか。
先ほど出てきた桐嶋だが……これはまあ、後でまた現れた時に説明でもすればいいだろう。それよりも今は——
「SHR、始めるぞー」
忙しなく教室に入ってきた教師に合わせ、席へと戻った。護は何気無く自分の席へと向かおうとする際、僕と銀に向かって「後でな」と一言呟いてから座った。
さて、今日もひっそりと暮らすのか。護の脇役として。
そう自然と思ってしまっていたことに、自分自身でも気付かなかった。
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