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暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】
日時: 2012/05/30 23:08
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

「——生徒会に入れ!」

唐突すぎるだろ。何を言ってるんだこいつは、と。
何で転校してきたばかりで生徒会に入れとか言われなくちゃならないんですか、と。

それもこれも、何故こうなってしまったのか時間を遡る必要があるだろう。
あぁ、面倒臭い面倒臭い、長くて長くて、酷い酷い——俺達の日常の物語……らしかった。


——————————


【前書き】
初めまして、が多いと思われます。遮犬しゃいぬと申すものです。
このたび、大幅な変更点を加えていますので、リメイクではなく、あくまで完全版として再投稿させていただくことにしました。
大幅、といっても基本は変わらないこの駄作です。この作品があったのは、本当に昔のことです。あぁ、昔すぎて自分もよく分かりません(ぇ
挫折、挫折、挫折。この同じ形で、同じ文字をしたこの三連打が僕を殴りに殴り、KOされてから結構経ちます。この作品はこれまで自分が書いた作品の中で最も思い入れが強かった作品です。
時期を見て、またリメイクしたいと思うこと、もう半年以上。僕はこの春、これを再び書きたいと思います。
思えば、何年前のことでしょうか。もう早々と過ぎ去っていってますね。もう二年前? とかぐらいですか。この作品を初めて、約一年で中途半端な終わりを迎えました。ネタ切れ、そして度重なる更新停止で読者さんがいなくなり、自信がなくなっていました。

ですが、もうやってやりますと。
この作品、完結してぇなぁと。

何度もお前の口からはそれを聞いたよ、という言葉は十分承知しております。ですが……作りたいのです。ていうか、書きたいのです。ドタバタコメディーギャグ小説を。

そんなわけで、宜しくお願いします。うっふんあっはんな作品ですが、笑いの旋風を巻き起こせるように頑張りますので、宜しくお願いいたします;



【ジャンル】
学園、ドタバタラブコメ的な、ギャグという名の純粋コメディーもの。
皆さんの表情に笑いが起こせるように、地道に書いていきますっ。
※1話完結的な、短編のようですけども、話は続いております。



【目次】

プロローグ
>>3

第1話:俺が"仮"生徒会に入ることになってしまった理由
【#1>>4 #2>>5 #3>>6 #4>>7 #5>>10
第2話:ここは何て名前の国ですか?
【#1>>11 #2>>12 #3>>13

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Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.4 )
日時: 2012/04/23 00:34
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

朝は清清しいに限る。今日の朝もそんなだった。
ガタンゴトンと電車で揺られ揺られ、目的の駅へと達すると電車から降りた。東京と同じような人混みというわけではないが、それの小規模ぐらいな人混みに流されるような形で駅のホームへと降り立った。

「えーと……こっからどこに行くんだっけ?」

目的の地である寮へと行く為の経路を確かめるべく、ボストンバックから紙を取り出した。えーと……駅から少し歩かないとダメみたいだな。
丁度いい、この街に慣れておくことも肝心なことだろう。そうこう考えている内に、随分と人混みが散ったような気がする。
早速階段をエスカレーターへと行こうとしたその時——

「あ、危ないっ!」

女性の声か何かが聞こえた。その声のおかげで、俺は咄嗟に地面へと伏せる。何かが飛んできたのを眼で確認すると、ボストンバックを地面へと放り投げ「せいやぁっ!」というダサい掛け声と共にそれを優しく受け止めた。

俺の後方付近からカランカラン、と金属がホームの床に転がる音と、胸の中には何故か子猫がいた。
ホームにいた数人のサラリーマンっぽい人とか、その他の人が俺の動きを見て感嘆の声を漏らしていた。

「あ、あの……大丈夫ですか?」
「あぁ、まあ……ッ!!」

目の前には、それはそれは可憐な少女がいた。心配そうに俺の方を見て、眼を潤ませようともしている。あぁ、こういうこともあるんだな。

「ぜ、全然平気ですよ。ハッハッハ。何が飛んできたとしても、俺の反射神経で……」
「あ、いえ……あの、血が……」
「え?」
「フギャーッ!」

よく見ると、愛らしいはずの子猫からもの凄い勢いで引っかかれまくってた。シャッシャシャッ、と小刻みに音が俺から出ている。あぁ、爽快——なはずねぇ。普通に痛すぎた。

「いってええええっ!!」

子猫を思わず放り出してしまった。その勢いで子猫は目の前の可憐なお嬢さんの胸元へ! 難なくキャッチしたお嬢さんは先ほどの様子とは何故か打って変わり、

「酷い! 子猫になんてことするんですか!」
「え、えぇ?」

いや、知らんよ! ていうか、俺血だらけの状態でなんで悪役っぽくなってるんだよ! それに、周りの人達までもが俺の方へと向いて、何か「最低だな」という呟きまでもが聞こえる始末とか!

「あ、あのさ……俺、その子猫を一応助けたっていうか、恩人っていうか……」
「子猫を放り出しておいてよく言いますね!」
「ニャー……」
「ちょ、おい待て待て子猫! お前さっきまで俺のこと散々引っかいておいて、急にその凶器的な愛くるしさを振舞うのはおかしいだろ!」

俺が血だらけの状態で尻餅をつきながら弁論を図っていたその時、

「黙れぇっ!!」
「ぶふっ!」

物凄い勢いで飛んできた業務員のおばちゃんによるラリアットを喰らい、その勢いで真後ろへと吹っ飛んだ。——線路の方に滑り落ちるところだった。マジでシャレにならねぇ!
ゆっくりと、見上げると、目の前には業務員のおばちゃんが仁王立ちでいた。

「あんた! 子猫は受け止めれて、私の鎖鎌はキャッチできないってどういうことよ!」
「いや、え……って、鎖鎌ッ!?」

後ろを振り返ると、確かにそこには鎖鎌が転がっていた。いやいや、皆さんこれおかしいでしょうよ。鎖鎌が何で駅のホームに……ていうか、業務員のおばちゃん、それ銃刀法違反で捕まるよ! んで、何で持ってんの!

「おばちゃん、何でそんなもの——」
「あぁん? おばちゃん?」

……いやぁ、どうサバを読んでも50代にしか見えないっすよ……。
本当、毎度のように——といっても、今日のは凄すぎるけど、何かしらハプニングが起きてしまう。これが俺の不運! というのも何だが、まあこんな感じで俺の人生は巡り巡っている。

「す、すみませんでしたっ!」

猛烈な勢いで謝り、俺は猛スピードでその場から逃げ出した。毎度のように、こういうことがあるとこんな風に逃げる。今回もこれで巻き上げれば——

「待てゴルァァアアッ!!」

ちょ、嘘だろ。この業務員のおばちゃん、見た目以上にクソ速かった。それによく見たら、何か持って——鎖鎌じゃねぇかああああ!

「うわぁぁああ!!」

必死で俺はその場から逃げ、周りの人達は何事もなかったかのように振舞うのだった。
そんな中、取り残された子猫を抱きかかえた少女は、白を基調とした薄い桃色のワンピースのような、ドレスのような服をふわりと春風に纏わせて、まるで嵐が去った後を見ているような、そんな感じの表情でその場に立ち尽くしていた。

——————————

何とか業務員の鎖鎌から逃げ切った俺は、よく通報されないでいるよ、とか思いながらボストンバックを握り締めて目的地へと向かっていた。

ちなみにちなみの話なわけだが、先ほどみたいな反射神経を俺が取れたのは、あんな風なハプニングが毎度のように起こる為だからだった。まあ、言ってしまえば修羅場に慣れたというか……日ごろの体験のおかげで、いつの間にか俺の運動神経はぐんぐんと上がり、反射神経もあがったりして、あんな感じの動きが出来ちゃうようになったのだ。だからといって、あんなハプニングが毎度のように起こられちゃたまったものではない。

「お……着いたか」

紙の指示通り、寮に辿り着いた。結構広く、入る前に"時雨咲しぐれざき高等学校 寮"と書かれてある表札を目にした。
時雨咲高等学校って……どこのラノベだよっていうツッコミを余儀なくされるだろう。パンフレットなしに、ただ単純に寮があって、帰ろうと思ったら帰れる距離で、なおかつ元々いた地元の人間がいないであろう学校という理由でここを選んだのだけど、何か学歴として載せるのは少し恥ずかしい学校名だと今更ながら思った。

中へと入っていくと、玄関広場的なのが見えた。そしてその奥には玄関。巨大な施設みたいなのが目の前には聳え立っていた。凄いなぁとか思いながら見ていたら、そのまた後ろの方にはなにやら学校の校舎っぽいのが……って、ありゃ校舎だよ。絶対。

「繋がってたのかよ……確か、繋がってないって」

パンフレットを見ると、玄関は繋がってませんと書かれていた。いや、どういう意味だよ。ていうか、玄関から繋がってないのは当たり前じゃないのか。何で校舎から入ってから寮の出口に……え、何か意味分からなくなってきたよ。

「とりあえず、中に入ろう……」

入り口へと向かう。あぁ、どうなることやらと、頭を抱える俺がいたのもまた事実だった。

——————————

……それから、この状況。思い返すこと、ここまで。寮に来たことはまあいい。それから、今日に至るまでが問題なんだったか。
目の前には、俺へと向かって腕を組み、何故か自信に満ち溢れた顔をして俺を見ている、美少女がいた。
着ている服装は学校のブレザーで、栗色をした髪が肩ぐらいまでのショートにまでに収められている。
ついでに言うと、俺の今の格好はブレザーではない。——何故かパンツ一丁であった。
そんな俺、篠坂 奏(しのざか そう)は正座の状態で記憶を必死に思い返しているところだ。


ええい、長すぎて俺も嫌気が差すが、
思い返し後半戦といこうじゃないか。

Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.5 )
日時: 2012/05/01 23:50
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

思い返してみて、いくつか盲点があった。そのことに気付かなかった俺は非常にバカ野郎であることを今更言っておくことにしよう。

その理由、まずその一。進学する学校をちゃんと選ばなかったこと。
まあ、条件が合えばどこでもいいとか思っちゃったわけだね。学力まあ平均程度だし、ここでいっかーという軽い気持ちで学校を決めてしまったこと。

その理由、その二。パンフレットをしっかり読んでいなかったこと。
所詮パンフレットだろ? とか思って全く学校についての事項を読んでいなかったのは、とんでもなく恐ろしい結果を招くことになるんだねっていうことを俺はここで初めて知った。

その理由、その三。俺が不運すぎて乙ってること。
もうこれは……正直どうしようもない。ていうか、どうにかしろっていう方が無理な話だ。


まあそんなところだ。盲点がありすぎて、俺も参っている状態なのは事実で、パンツ一丁姿で正座とかしているこの状況も事実なわけだ。
何でこんな盲点抱えながら俺は生きてんですかって話なわけなんだが、理由その三辺りはどうしようもないから許してくれ。
とりあえず、生徒会室の中で目の前の女の子相手にパンツ一丁で正座させられるハメになった経緯をお教えした方がいいだろう。
——それは、寮での出来事だった。

——————————

寮の中に入ると、大きなロビーに出た。
ロビーは結構広く、ちゃんと受付までもがある。受付の中には人がいるようで、どうせ歳をとったおばちゃんだろうなぁとか思っていたら、意外とかなりの美人さんだった。おっとり系のお姉さんのような外見で、長くて艶やかな黒髪が光っている。

「あの……」
「あ、はい?」

柔らかい声だぁぁ……! と、心の中で密かに感動しつつ、なるべくキリッとした表情で受付のお姉さんへと話した。

「今日から此処でお世話になる、篠坂 奏っていうものです。よ、宜しくお願いしますっ」
「え? あ、はい。えっと……紙、ありますか? 此処の住所が書かれた……」

何となくだが、スルーされた感じがするのは気のせいだろうか。……まあ、そんなことは一旦置いといて、例の紙を取り出した。

「あぁ、ありますね。その紙の下の方に書いてある部屋番号の所に行ってください」

少し身を乗り出して、お姉さんが俺へと教えてくれた。……っと、待て待て、有り得んほどの悩殺ボディじゃねぇか……。
少しばかり赤面になりつつ、俺は部屋番号を慌てて確認した。自分の名前が書かれた隣に『215』と記されてあった。

「215なら、B館のVIPですね。すぐに見つかると思いますよ」
「あぁ、親切にありがとうございました」
「いえいえ、それが仕事ですから」

営業スマイルで言われる。……何か所々言葉が厳しいような気もするが、とりあえず今は部屋へと向かおう。聞いた話によると、既に大部分の荷物は部屋にあるみたいだし。

(にしても、VIPって何だ? 優遇される的なあれか?)

疑問に思いながらも、B館へと向かうことにした。そういえば先ほど身を乗り出してきた時に見えたんだが、胸の方に名前が書かれたステッカーが見えた。あのお姉さんの名前は、牧野 有紀(まきの ゆき)さんというらしかった。あぁ、なんとも見た目並みに可愛らしい名前なんだろうか。

「それじゃ、俺はこれで……」
「あぁ、はい。お気をつけてー」

牧野さんと別れると、俺はB館へと向けて歩き出した。
そんな俺の後ろ姿を見つめ、牧野はゆっくりと机の中から無線機を取り出した。

「ターゲット、そっちに行ったわよ」

無線機に繋がっているであろう相手へと向けて、牧野はそう呟いた。

——そんなこんなで、ロビーを離れ、B館へと向かったわけなのだが……もしかして、学校と直接繋がってる館なのだろうか。いや、そんなことないのか?
でもどう見たってパンフレットにある地図にはB館と校舎が引っ付いてしまっていた。ご丁寧に「※引っ付いちゃってます」とか書いてある。いや、そんな悪戯でやりました、みたいな言い方されても困るんだけども——

「って、此処か」

渡り廊下とか渡っての別館がB館らしかった。ちょっと待て、こっから校舎の中庭付近見れるんだけど、っていうか敷地広すぎだろ! そのことにビックリだわ!
俺の元いた地元の高校より大分広いじゃないか……。さすが俺の地元より都会。学校も進化してるってことかい?

「何かいい感じだなぁ……」

何故かそんなことを呟いてしまっていた。また、何を言ってるんだ俺は。


いまだに俺は順風満帆な学校生活を送りたいと望んでいるのか?


戯言も大概にしないと、後が取り返しつかなくなる。
そのことを、俺は誰よりも知っている気でいた。

気を取り直して、寮の番号を確認していく。215、だったよな。いくつも部屋があって、まるでホテルみたいだった。結構一つ一つの部屋が大きいみたいで、何人用かに恐らく分けられているみたいだった。部屋の番号の隣に名前が記されてあって、えっと例えるとしたら病室と同じような感じか。あんな風に学年と名前が記されたステッカーが貼られている。

「215……215……? あれ? 無くないか?」

どこをどう見たって、215号室が存在しなかった。210まで存在するが、それから先の5部屋はない。どこをどう見てもない。マジかよ。此処に来て、俺の部屋ないですよっていう不運か? マジで? それはあまりに大袈裟すぎる不運だろうよ……。

「どうなってんだ……?」

わけも分からず、その場で立ち尽くしていると、何か不自然なところを見つけた。それは奥の突き当たりの部分だった。
部屋がいくつか分けられているのだが、奥の突き当たりの部分だけ妙にスペースがあったのだ。それも、もう一部屋作れるだろうっていうぐらいのスペースだ。

「これって——ッ!?」

おそるおそる壁へと手をやると、その瞬間何かが外れる音がして、俺は壁の中へと吸い込まれた。というより、壁が突然抜けるような感覚で中に入ることが出来た、という感じだった。

「何だこれ……発泡スチロール?」

壁の正体は発泡スチロールで、例えるならばスッカスカな感じだった。誰だ、こんな悪戯をしたのは……。
奥には、階段が見えた。まだ上に行けるのか? おそるおそる、俺は階段を上がることにした。

今は大体昼時ぐらいなせいか、妙にお腹が空いた。あぁ、早く部屋にいって、荷物整えてからどこか飯でも食いに行きたい。
そんなことを考えながら一段一段、階段を登っていくと、先ほどと同じように長い廊下が見えた。ここは一体何階にあたるんだろう。
そうして、廊下の奥を見つめていたその時だった。

「あれ?」

後ろの方から声が聞こえた。やたらと高めの声で、女の子の声だと思った。後ろをさっと振り返ると、そこには不思議そうな表情をし、ショートヘアーな感じの子がいた。顔も、かなり可愛い。普通にアイドルかそこらになれるんじゃねぇかとか思ったぐらいだったが——その子は違和感の塊でしかなかった。

「……あれ?」
「え?」
「……いや、何で男性用のブレザー?」

そう、それはこの可愛い"外見女の子であるはずの子"が、男性用のブレザーを穿いていたのであった。コレは何だ、何かの趣味なのだろうか。
しかし、彼女の口から出た言葉はとんでもない言葉だった。


「え? 僕は男ですよ?」
「……はい?」


いや、どこからどうみても男じゃないだろ。ていうか、よくよく凝視すれば胸も少しありそうな感じがする。ダメだ、見れば見るほど男じゃねぇよ。

「あの……それより、何故ここに……?」
「え? あ、いや……部屋を探してて……」
「部屋?」

目の前のどこからどう見ても女の子としか思えない子がずんずんと俺の方へと向かってきた。ていうか、声も女の子なのに、どうやって男だと認めればいいんだ。もう俺の脳内はテンパってどうしようもないよ!
近づかれた瞬間、とんでもなく良い匂いがした。畜生、やばい、顔を見れない。

「あの、どうしたんですか?」
「あ、いや、気にしないでくれ……」

少し顔を赤くしながらふるふると顔を左右に振った。いかんいかん、このままじゃ、俺はいかんぞ。色々と。
そうして気合を入れようと顔を両手でパンパンと叩こうとしたその時、

「215? あぁ、ならこっちですよ」

笑顔でこの子は俺を連れて歩き出した。ちなみに、俺の袖をこの子の手が掴んでいて、引っ張ってくれてるような状況で——まずいって、これは……! とか、普通に思ってしまう。
離してくれ、という所までも声は出ず、少しの静止を投げかけるような……「ちょ」「え、あ」とか、何かこんな言葉をちょろちょろと呟くばかりで、結局この子に連れられるハメとなった。
ほどなくしてから、どうやって行き着いたのか分からないわけだけど、215の文字が書いてある部屋の前に来た。やたらと豪華なプレートで、そこには名前が書かれてあった。
俺の名前と、そして——七瀬 椿(ななせ つばき)という名前が。


「あ、申し遅れました。僕の名前は七瀬 椿ですっ。ルームシェアな感じで僕と暮らすことになったみたいなんだけど、よろしくね♪」
「……え?」


いやいやいや、聞いてないですよ?
ルームシェア形式の部屋? はい? 何だそれは。

俺は頭を抱え、混乱するばかり。
目の前の、少女なようで男と語る男の娘は、ただただ笑っているばかり。

Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.6 )
日時: 2012/05/01 23:49
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

この学校の寮制度について。
当学校では、あくまで学校の基本教育目標とされている個々の自主性に関しての教育を育む為、個人部屋は特別枠として基本は二人以上のルームシェア制度を実施している。……参照、パンフレット。

「ね? 言った通りですよね?」
「……見ていなかった俺が悪い、ということか」

ため息を漏らす俺に、両手を後ろで組んで、いかにも女の子らしい仕草と笑顔を見せながら七瀬 椿は言った。
どうしてこんなことになっちまったんだ、といくら思い返しても、自業自得という言葉以外出てくるはずもない。それ以上でも以下でもないし、あるとするならば己の不運という非科学的なことを呪う他に手立てもない。
部屋の中へと入った俺は、えらく豪華な造りに驚いた。……というか、ルームシェア制だと知ったことの方が驚いたわけだけど。
その豪華な造りはまさにVIPと言っても過言ではないほどの出来栄えだった。二人で住むただの個室にしては、やたらと大きい。普通の寮生の部屋の二倍、いや三倍程度はあるんじゃないだろうか。
そんなところで、俺はこんな女の子染みた男と名乗る奴と一緒にこれから過ごしていくわけか? 待てよ、聞いてないって、こんなシナリオ。
神様はどんだけ俺の人生で遊んだら気が済むんだ、とも叫んでやりたい。いますぐこの場所で。

「どうかしましたか?」
「……いや、心の底からやってやりたいことがあったが、もういいや……」

首をかしげて不思議そうなリアクションをする椿の表情もまた可愛い。——って、何を言ってるんだ俺はぁぁああ!! そんなBL路線で行くわけないだろ! やめろよ! 相手は男! これでも……

「何でお前が男なんだぁぁああ!!」

頭を抱え込むしかない。確かにただの生徒ではなさそうだった。この女の子にしか見えない驚異的な可愛さを秘めた男が存在するなんて、俺はこの世の中で生を受けてから初めてのことだった。嘘だろ、そこらの女子より普通に可愛いぜ、マジで。

「あはは、よく言われるんですよ。だから僕の前のルームメイトさんも辞めちゃって……」
「個人部屋にしたらいいだろ……」
「個人部屋は数に限りがありますし、それに色んな人と仲良くなりたいですから♪」

そんなルンルンな感じで言われても困る。
というか、何だこの高級そうなテーブルに椅子は。貧乏性の俺は何だかそわそわしてしまう。

「ところで……」
「え?」

突然、椿が俺に声をかけてきた。どこかしら、表情は笑顔なんだけど、どこか真面目な雰囲気というか、冷たいようなものがこもっている感じがした。

「篠坂クンは、今めちゃくちゃ不運ですか?」
「……はい?」
「言葉が悪かったですかね? ……うーん、それじゃあ……死にたいぐらい残念な人生を送ってきましたよね?」
「いや、酷くなってるから! そこまで言われると何をしているわけでもないのに死にたくなるよ!」

突然何を言い出すのかと思えば、まるで俺の人生全てを知ったような言い振りの言葉だった。どういう返事をすればいいんだ、と多少俺でも迷ったが、とりあえず正直に言っておいて何をデメリットはないように思えた。

「あぁ……まあ、確かに結構不運な毎日を過ごしてきたな。今日だって、朝で駅のホームで——」
「あ、そこまでは聞いてないです♪」
「……そうですか」
「あぁ、じゃあそれで身につけた運動神経はあるわけですね?」
「運動神経もだけど、主に反射神経だな……。とりあえず即座には対応できるように体が馴染んでいる、というか……」
「なるほど。やはり貴方は篠坂 奏クンですね♪」
「……いや、そうだけど?」

そりゃここまで来て実は篠坂 奏じゃないんです、とかどこのドッキリ番組だよ。他人にそんなことをしようなんてことは思わねぇし、面倒臭い。

「合格ですよね? ——さん」
「え? 誰に言ってんの?」
「いえ、少なくとも篠坂 奏クンにではないですよ?」

……怪しいな、おい!
さっきからもずっと思ってたんだけど、何か隠し事というか、只者ではないというか、変な質問しかしてこないし……もっとどこの高校だったの? とかいう素朴な疑問が来ることを俺は最も恐れていたのに対してわけのわからない質問ばかりで戸惑うばかりだ。
もしかしたら、こいつ男とか言っているけど男装が趣味の女の子なんじゃねぇのか、とか思い始めてきた。うわ、そんなこと思ってたらだんだんこいつが女の子に見えてきた。やばい、そんなこと思うんじゃなかった! 何をしているんだ俺は! 凄く心臓がドキドキしてきたじゃないか! やめろっ、誰か止めてくれ! やばいやばい、やばいって——

「あの、聞いてますか?」
「へ?」
「いや、あの、ご飯とか食べました?」
「あ、いや、まだだな、そういえば……」

そんなことを言っていると、お腹が鳴ってきた。ううむ、腹は正直だ。昼飯時だったし、早く飯を食いたいと思っていたことをすっかり忘れていた。
気付けば、時間は既におやつの時間すらも過ぎていた。随分とこの部屋、205号室を探していたもんだと、我ながら時間を無駄に感じた。

「ならよかった! 今日、貴方が来ると聞いてご用意しておいたんです♪」
「え? 何を?」
「決まっているじゃないですか! ディナーをですよ♪」

とか言った矢先、椿が指を鳴らした。その途端、突然どこからか黒服のごつい野郎達が凄い勢いでこの部屋の中へと入ってきた。かなり広い部屋なので、こんな男達が入って来てもあまり苦にはならなかったが——無理矢理にもナプキンをつけられ、何か色々スプレーみたいなんで消毒させられ、気付いたら目の前のテーブルには山ほどの食事が並んでいた。それも、どれも豪華なものばかりで海鮮料理やら肉料理やらパスタ料理やらも色々あった。まず、これだけの量を食いきれるわけがない。

「どうぞ、食べてください」
「いや……食べてくださいとかって、こんなに食べれないっていうか……一体、お前は何者な——」

と、その時。
ガチャガチャ! っと、何やら物騒な音がした。んで、俺の周りをおそるおそる見てみると——黒服の男達が皆、俺に向けて銃を構えていた。いや、モデルガンじゃないと思うよ? 本物の銃? え、銃刀法違反とかじゃね?

「あぁ、そんなにカリカリしないでください。篠坂クンは大切なVIPですから、やめてください」

椿のその言葉で、黒服の男達は一斉に銃を懐へと隠していった。……いやいやいや、何の映画のワンシーンですか、今の!

「あ、あのさ……えっと、七瀬 椿さん?」
「はい? 椿、でいいですよ♪」
「……そう呼んでも大丈夫?」
「勿論♪ もう拳銃なんて出しませんから」
「……それじゃあ、椿——」

ガチャガチャ! 
……って、おい。普通に出してるじゃねぇか。

「いえ、中身は水ですから」

と、椿が言った途端、黒服達は一斉に水鉄砲を放った。水が俺の顔へと四方八方にかかる。ねえ、何これ? 何この珍プレー?
放水が終わった頃には、俺の顔はビチョ濡れだった。

「あれ? 得意の運動神経を見せてくれるかと思ったのですが……」
「見せれるか! アホか!」

ガチャガチャ! ピュー……。


もう嫌だ。誰か助けてください。


——————————

「という夢を見たんだ」
「いやいや! 全部事実だから!」

パンツ一丁で縛られながらも、俺は目の前の女の子に向けてツッコむ。
回想的には、それが昨日の食卓というか、あれから何度か水鉄砲の餌食になってからようやく食事にありつこうと思ったら、食い物が皆水鉄砲による水で台無しになってた。
それからとりあえず、寮専用の風呂場へ行って、着替えて、寮部屋へと戻って、色々と仕度をしたりした後、普通に寝た。

んで、気付いたらこうなってたというわけです。

はい、ここに至るまでの回想は終わり。果てしなく長かった。何ページ使うことになっただろう、これだけで。
両手両足が縛られてて、何故かパンツ一丁で。俺は目の前にいた女の子から突如言われた言葉。それが——


「生徒会に入れ!」


だったのである。

Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.7 )
日時: 2012/05/06 20:55
名前: 遮犬 ◆ZdfFLHq5Yk (ID: GHOy3kw9)

「後半、あまりに適当な回想すぎて、こちら側もビックリだわ」
「いや、何か回想するのも飽きたんで……」

生徒会に入れ、といわれてから何分経っただろうか。いまだにこうした臨戦態勢の状態が解けずにいる。
俺的に、何でこんなところにいるのかもわけが分からないし、さっさと帰って影薄く学校生活をそれなりに過ごせたらいいな、あはは。ぐらいにしか思ってないわけで……
それを何だ? 生徒会? おいおい、冗談は俺のこれまでの人生だけにしてくれよ。

「何度も言ったが、生徒会には入らない! ていうか、何者だよ! 何で俺はパンツ一丁で手足縛られた状態なんだよ! 放置プレイか! 何なんだこのプレイの名前は! えぇ、このプレイ魔が! どういうプレイが好みだ畜生! このプレ——」
「うるっさいわぁぁっ!! プレイプレイって、人をそんな数あるプレイをやってきた猛者みたいなキャラ位置にしたてあげないでくれないかな!?」

目の前の少女は、髪に結ばせてある鈴をチリンチリン、と鳴らして怒鳴った。それから腕を組み、多少先ほどより不機嫌な顔をしつつ、ふっと鼻で笑った。

「まあいいわ。じゃあ簡潔に、大胆に説明してあげる!」
「簡潔なのに大胆っていうのがどんなものかさっぱり分からんけど、説明はしてくれ」

俺の言葉に順応するが如く、大きく胸を張っていつの間にかあったダンボールみたいな箱の上へと右足を置き、スカートが少したくし上げられてちょっと見えるんじゃないか、と思いつつ中に勿論スパッツを穿いていてガッカリしたことはさておき——少女は俺へと指を差していった。

「私の顔、覚えてないわけ?」
「……は?」

突然何を言い出すんだ、と思いながら俺は少女の綺麗に整い、誰がどう見ても童顔だろうと言わざるを得ないその顔をじっと見つめた。
確かに、どこかで見たことある気がする。というか、凄く懐かしいような……いや、もしかして?

「あー……」
「……何?」
「いや……名前、教えてくれるか?」
「思い出して当てなさいよ」

そう言われて、またぼやけている残酷な思い出ばかりの中に見つける、まるで楽園のような記憶。それを探り出して見つけた時には、俺は既に驚きを隠せずにはいられなかった。

「ま、まさか……! お前……!」

唾が詰まりそうになる。慌ててその唾をゴクリと喉へと通しきり、なんとか声を出す。指が自然に少女の——いや、幼馴染の顔へと向いていた。

「桜月 夕姫!?(さくらづき ゆうひ)」

そう、その名前は俺が勝手に残念な記憶の中でも最高の思い出だったと認識している幼少時代の頃。突然引っ越してしまったあの泣き虫の幼馴染が、目の前にいた。
そういえばそうだった。こいつの顔、よく見るとあの幼少時代のあの顔から——あんま変わってない? 少し大人になって、体の感じがふっくらと成長した感じ? まあ何にせよ、もう会えないだろうと思っていた幼少時代オンリーの幼馴染が今目の前にいるのであった。

「今頃気付いたの? まあ、涎垂らしながら回想してたから気付く暇もなかったのかもしれないけど」
「垂らしてない垂らしてない! 嘘を混ぜるな!」

ふふふん、と何故か得意げな笑みを見せる夕姫は、何か懐かしくも、違う感じがした。
昔はもっと泣き虫で、気弱な性格だったはず。こうしてダンボールの箱の上に片足を乗せて、胸を張って人に指を差して……なんて行動は取れなかったはずだ。
やっぱり、変わってしまうものなんだな、とどこか寂しく思えた。俺としては、綺麗な、純粋な記憶としてとって置きたかったからだった。
あんな楽しい思い出はもう二度とないだろうと過ごしてきた過去の人生。俺は今高校一年生として、その幼馴染と対面することになろうなどとは、想像出来るはずもなかった。

「引っ越した所って、この地域だったのか……?」
「まあ、そうね。でも、来るのは分かってたよ、この学校に」
「どういうことだ……?」

俺がこの学校に来ることを分かっていた? そんなテレビに出ているマジシャンみたいなことを言われても困る。そんなの分かるわけがないし、そもそも俺自身、行き当たりばったりな感じでここを選んだから、そんなはずは——

「行き当たりばったりな感じでここを選んだから、そんなはずはない……なんて思ってるんでしょ?」
「な、何で分かったんだよっ」
「ごくごく単純で、君みたいな残念おつむしてたら誰でも分かるよ」
「残念おつむで悪かったですねぇっ!? ……あのな、それより、何でお前がここにいるかっていうのはおいといて、どうして——」
「生徒会やら何やら言ってんのって言いたいんでしょ? さすがスーパー残念おつむ、話が単純で助かる」
「やかましいわ!」

夕姫は散々人の神経を逆撫でした後、ゆっくりと俺の周りを回ってから口を開いた。

「それじゃあまあ、ここから先は色々面倒な話も多いってわけで……椿君にこっからバトンタッチー」
「へ? 椿?」

夕姫が言った傍から、どこから現れたのか椿が俺の目の前に出てきた。勿論、ニッコリとした表情はいつでも崩していない。

「それじゃあ、説明しますね♪」
「いや、その前に俺のこの状態をどうにしかしてくれ。逃げ出したりしないから」
「ふむ。残念ですね〜……その姿、お似合いですよ?」
「パンツ一丁の姿が!? 全く嬉しくない褒め言葉とはこのことだよ!」
「褒めてもないですしね」
「見事な辛口ッ!」

こんな会話を繰り広げ、数分後。俺はとりあえず縄を解かれ、制服を着る。生徒会に入らないと解かない、とか言っていたけど……ドアとか千錠されているみたいで、帰ろうにも帰れなくなってやがる、畜生。

「それでは、説明しますね。——この学校の仕組み、生徒会占拠制度のことについて」
「生徒会占拠制度……?」

嫌な予感しかしなかったのは歴戦の勘というものなのか。

Re: 暴風警報!のちのち生徒会!!【完結版】 ( No.8 )
日時: 2012/05/07 06:23
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)

こんばんはー^^
や〜っと重い課題が終わって読みに来れました。
なんかもう懐かしい面々が続々と出てきてよくわかんないけどほっとしちゃいましたv

やっぱり奏くんと椿くん・夕姫ちゃんのからみがおもしろかったですー! なんか後半に行くにつれて思わず吹き出しちゃうような掛け合いが増えてって、「そうっ、暴風警報はこうでなくっちゃ!」(←)みたいな謎なテンションで読んでました。とにかくおもしろかったです。特に椿くんが登場したあたりから^^

続きも楽しみにしてますー^^
更新頑張ってください♪


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