コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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妖精さんと、まてりある
日時: 2012/09/14 21:46
名前: 久遠 (ID: IsQerC0t)

  0人「つかれた」

 「つかれた」
 疲れたんです。
 ええ、疲れましたとも。

 こうして私は全てのことに疲れ果て、


 ———深く考えることを放棄しました。



  〆 9月13日


【もくじ】 >>1

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Re: 妖精さんと、まてりある ( No.1 )
日時: 2012/10/06 12:22
名前: 久遠 (ID: IsQerC0t)

【もくじ】

 0人「つかれました」 >>0
 1人「ふー あー ゆー?」 >>02
 2人「・・・何が起きたんでしょう?」 >>03


【とうじょうじんぶつたち】

 東雲あさがお >>04
 夕星良 >>05
 楠久雅文 >>06 
 
 作者 >>07

Re: 妖精さんと、まてりある ( No.2 )
日時: 2012/09/15 15:09
名前: 久遠 (ID: IsQerC0t)

  1人「ふー あー ゆー?」

 「ほあぁー」
 まだ残暑の残るこの時期に、天の恵みとも言える涼しい風が、大勢の人が密集しているこの教室に吹いてきました。
 今は8月。
 ここは学校。まだ8月下旬なのに授業日数が足りないならなんやらの理由で、まだ夏休みボケの私たち生徒は学校へ強制登校させられているのでした。
 「涼しいですねー」
 「のだー」
 教室には天井に扇風機が2台しか取り付けられていないので、たまったもんじゃありません。涼しさが足りず、下敷きを仰いでしのぎます。
 「ああー、それぼくもほしいのだー」
 「はいはい」
 そうして彼にも涼しさをわけてあげます。
 「あぁー、いきかえるのだー」
 しかし、強く仰ぎすぎたのか、
 「だうーん」
 床へ落下。しかも垂直にです。
 「ああ、すいませーん。だいじょうぶですかぁ」
 真下の彼に呼びかけます。
 「ぐっどらっく」
 いやそれ意味違うし。
 彼は親指を突き立て、無事なことを表現しているようです。
 「あつさによわいのはひとのしゅくめいなのだ」
 「そうですねー」
 いや、あなたはヒトじゃないでしょうに。
 でもさすがに、この暑さには限界です。学校が始まってまだ一週間も経っていませんが、くじけそうです。
 「あぁー、今日くらい休ませてくれませんかねー」
 そう呟いたあとには、時既に遅し。はっ、と気づいたときには彼はいつの間にか消えており、そして入れ替わりのように
 「おぉーい、席着けー」
 担任の藤巻先生が教室に入って来られました。先生は教卓に、出席簿を持った両手を置くと、やる気のない声で言いました。
 「えっと、なんか北校舎で爆発、今日は休みになったんだと」
 その瞬間、教室中に歓声が起こりました。えぇ、爆発のことは一切気にしていません。早々と帰ろうとしている生徒もいました。
 ここで私も素直に喜びたかったのですが、その原因が分かっていたので喜べません。
 ふいに真下を見ると、いつのまにか彼が。そう、いたんです。叶えてやったぜ、的なカンジの目をしていて、胸をこれでもかと言うほどに張った、

 ———身長わずか10cmほどしかない、自称『妖精さん』が。


   **********


 ことの始まりは春のことでした。

 暖かな日差しの差し込む教室。
 上級生達によって、存在した証が掘られている少しだけ古びた机と椅子。
 そして毎度のことながら、かわらぬ級友たち。
 今は入学式を終えたあとでした。
 ここ、私立あけぼの学園中等部1—Bの教室で、わたしはひとり決められた机とイスに座り窓の外で舞い散る桜の花びらたちをぼうっと見つめているのでした。

 ああ、自己紹介がまだでしたね。
 私は東雲です。”シノノメ“と読みます。
 え、名前も言わなきゃダメなパターンですか? すいません、ノーコメントでお願いします。・・・どうも自分の名前が嫌いなもので。

 「あっさちゃーん!」
 ああ、なんでこんな入学式という退屈な行事を終えたあとなのにこの人は元気なんでしょう。めんどくさいので無視することにします。
 「おーい、あさちゃんてばー?」
 肩に手を置いてきます。それでも無視です。
 「聞こえてますかあー」
 右耳に大声で叫んでいますが、無視です。
 「・・・東雲あさがおッ!」
 「ハイハイハーイッッッ、ストップーー!! その名前は呼ばないでって何度も言ってますよねー、りょーちゃん!?」
 私は彼女の口を全力で塞ぎます。そして怒り気味に叱ると。
 「はっへ、ままえよんべもむひひははーん(訳:だって、名前呼んでも無視したじゃーん)」
 「それはあなたが私のフルネームを大声で言うからでしょーが」
 そうです。私の名前は「東雲あさがお」。みんなには「あさちゃん」と呼ばれています(お願いしたんですけどね)。
 「ぷはっ。まあ確かにその名前だったらあたしもグレそうだもん」
 さらりと失礼なことを言いやがりますね、この人。
 彼女の名前は夕星良。ユウズツ、リョウと言います(読みにくいですよね)。初等部以前からの付き合いです。良く言えば「幼なじみ」「一蓮托生」。悪く言えば「くされ縁」の悪友です。
 私は「りょーちゃん」と呼ばせてもらっています。
 ちなみに、彼女の頭(成績)は『良』です。
 「失礼だな、オイ」
 「勝手に人の頭読まないでもらえますか」
 「はいはい、あなたと違ってあたしはどーせ『良』ですよ!」
 そう勝手に怒って行ってしまいました。いったい何しに来たのやら。まあ、どうでもいのでまた窓の外を眺めます。
 ああ。花びら、いや、風になりたい。
 わたしはほんの数秒間のうちに現実逃避を行いました。退屈で死にそうです。

 中等部に進学すれば何かが変わると思っていました。
 けれどやっぱり何も変わりません。
 この学園は小中高一貫校です。しかも寮生活なので、せめて進学すれば何かが変わると思っていましたが、無理でした。
 「はあー」
 思わず深いため息をついてしまいました。退屈です。憂鬱です。死にそうです。
 そんなカンジで一日は流れすぎていくのだと思っていました。ええ、思っておりましたとも。
 ———5時間目が来るまでは。

 五時間目。
 科目は国語。
 国語はわりと好きな方なのですが、今日は春の眠気に誘われ、うつらうつらとなりつつあります。
 ———なむい。(訳:眠い)
 ヤバイです。実にヤバイです。眠気がついにそこまで迫ってまいりました。
 朧気になっていく視界の中で、私は不思議なものを目にしました。
 まず目に入ったのは、赤色です。
 そしてそれがぼうしと服の色だということに気がつくのに、数秒かかりました。
 そして顔。
 可愛らしい絵に描いたようなファンシーな顔。ぽかんと開いた口。何かを求めるようなつぶらな瞳が私をのぞいていました。
 ・・・夢でも見ているんですかね?
 私の手の平サイズしかない、人形のような人の形をしたものが、そこに立っておりました。赤いぼうしに赤い服。それに白い袋のような物を背負っています。それはまさに———
 さんたさん。
 ええ、サンタさんの格好をしておりました。ちょっと、白いおひげをたくわえていなかったのが気にかかりましたが。
 いや、格好はひとまずおいておいて。人形のような手の平サイズしかない大きさの、人の形をしたもの。それはまさに、
 ・・・こびと、でしょうか?
 夢かと思い、頬をつねってみたり、叩いたりしてみますが、どうやら夢ではないようです。勇気を出して、声にしてみます。
 「あなたは、だれですか?」
 そんな言葉をかけようとして、止めます。
 だってそうでしょう? もし言葉が通じなかったらどうすればいいんでしょうか? こびと語でも話せと? 無理です。
 ここはあの言葉で話しかけてみることにします。
 「・・・ふー あー ゆー?」
 万国共通語、英語ばんざい。さあ、これで通じなかったら私はもう知りませえん。
 こびとさんが口を開きます。さあ、発せられる言葉は英語か。それともこびと語なのか!

 「ぼくはようせいさんなのだ」

 平和主義国、日本ばんざい。どうやら妖精さんが存在していたようです。         


  〆 9月14日


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