コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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オカルト対策研究部
日時: 2013/04/09 00:49
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

私立雨月(あまつき)高校オカルト対策研究部。

研究部とのたまうくせに正式には同好会だったり
活動目的は妖怪退治だったり
部員がほとんど人外だったりするけれど。
当の本人はいたって真剣。
なにしろ生活かかってますから。

そんな雨月高校オカルト対策研究部、尋ねてみる気はありませんか?

***

まずははじめまして、水岡月緒と申します。読み方はそのまんま。
小説は読むのも書くのも好き、しかしながら読むのはともかく書こうと思ってはそのたびに筆を折り続ける作者が、なけなしの本気を振り絞って連載していきます。
生暖かい目で見守ってくださるとありがたいです。

とりあえず、この小説を読むにあたっての注意を。
・亀もどん引きの更新速度
・妖怪、都市伝説、とにかく怪異ならなんでもごっちゃ
・誤字脱字、文法の間違いは最早デフォ
・ネタは伏せるとますます意味不明になるのでストレート
・文才ってなんだっけ美味しいんだっけ
・一人称と三人称の織り成すカオス
・ちょくちょく修正入ると思われ
・ギャグかシリアスかは作者も分かってない
・ご都合主義万歳

上の注意にひとつでも引っ掛かる事がある方&荒らしは、全力でブラウザバック推奨。
全部OK、しゃーねーな読んでやるかという懐の広さに自信のある方は、
オカルト対策研究部、作者と共によろしくお願いします。

***

目次
・キャラ紹介:部員>>4
       サブ>>29
・零話:雨月高校オカルト対策研究部>>13
・壱話:雨月高校七不思議>>15
    其之壱・天井下り>>22
    其之弐・紫ババア>>30
    其之参・髪切り>>31
    其之四・さとるくん>>34
    其之伍・和尚魚>>35

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Re: オカルト対策研究部 ( No.27 )
日時: 2013/03/20 08:04
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

二重奏へ

細かいなw
まあ検討するわw

Re: オカルト対策研究部 ( No.28 )
日時: 2013/03/20 09:15
名前: 二重奏 (ID: 5obRN13V)

勝手にオリキャラ投稿してすまんw

でも俺が出るのか不安ゆえに…

じゃーな

キャラ紹介(サブ) ( No.29 )
日時: 2013/04/09 22:16
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

・深山清水(みやま しみず)/人間
夕鶴の中学からの親友。
基本ノリが軽く、リアクションがでかいので騒がしい。
お世辞にも平凡とは言えない名前の中でも群を抜いたキラキラネームなのを、多少気にしている。
彼女のつける独特の呼称は兄の影響らしい。
例:夕鶴→つる 幸村→ゆっきー 秋雨→あっきー先輩 りん→りーりん 冷泉→れいれい

***

・東雲暁(しののめ あかつき)/人間
夕鶴、幸村、清水の担任である国語教師。
明るく正義感の強い性格で大雑把。こまけぇこたぁいいんだよ!
生徒からの人気は高く、女子生徒に至っては他校にもファンがいるらしい。何で教師になったんだよあんた。

***

・深山冷泉(みやま れいせん)/人間
清水の弟。背伸びしたがりで素直になれないお年頃。
特別霊感があるわけではないが、不思議と憑かれやすい不幸体質。
清水を通して、自分の周りが変人だらけになってきてうざい。でも、別段嫌とは思ってない。

***

・太刀花鬼灯(たちばな ほおずき)/鬼
どこぞの田舎でひっそり暮らしている、鬼の末裔。
妖怪都市伝説問わず、阿保みたいに顔が広い。また、かなりの情報通で困ったらまず鬼灯に聞け、は合言葉。
天然記念物もとい常識人その二。というより長生きしすぎて色々と達観してる。口調が独特。

***

・息吹水明(いぶき すいめい)/八咫烏
太陽っぽさを微塵も感じさせない、ある意味凄い八咫烏。
とことん根に持つ性格で、一度でもからかったりすると未来永劫十倍返しが待っているので注意。こいつの敬語は最早武器。
基本的に鬼灯の元にいるが、時々全国を練り歩いて妖怪退治してるとかしてないとか。
最近の悩みは下の名前で呼ばれる事が少ない事と、りんに変態二号と呼ばれる事。

***

・夜宵帳(やよい とばり)/死神
現在絶賛失踪中の幸村父。
日本の死神とは別物らしく、本人曰く海を渡って来たらしい。
飄々としているがどこか頭のネジの飛んだ残念な人。

随時更新

壱話 雨月高校七不思議其之弐・紫ババア ( No.30 )
日時: 2013/03/29 01:37
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

「…………ぅ——……」

……ん?
何かものっそい幽かに声が。しかし、今振り向いても人影は見えない。
幻聴かと思ったが、りんが「やべぇっ」と黒猫になって走っていったので、一応他人にも聞こえてたようだ。

「つーか、りんって猫だったんだ」

確かに秋雨が馬鹿猫呼ばわりしてたけど、本当に猫だったとは。

「りんは猫又だから」
「……猫又って、人に化けたりするもんだっけ?」
「中国のは化けるらしいよ。馬鹿猫と違って猫又じゃなくて仙狸っていうけど」
「……るぅ——……」

話を聞くと、りんは幸村が生まれた頃にはすでに生きてて、この学校が建って以来住み着いてるとの事。なんでも猫耳少女にしか化けられないらしく、理由は本人に言わせると「狐や狸じゃあるまいし変化は苦手」だそうで。

「いや人間じゃないのは分かってたけど、猫又だとは——」
「……つるーー、スルーかー、つるー」
「ひゃああああああああああっ!?……って、清水いつの間に!」

今!と思わずブン殴りたくなる笑顔を浮かべた私の親友、もとい深山清水。というかどっから湧いて出たんだ。そう聞くと、昇降口で見かけたから走って来た!との返答が。なんつー声量と足してるんだこの陸上部のホープは。

「……深山?」
「……あ、そこにいるのはあまりの不器用っぷりに中学時代調理室と被服室への出入り禁止令を出されたゆっきーと、一見流行とか敏感そうなイケメンなのに、部屋着は髑髏Tシャツと柔道着の地獄のローテーションなあっきー先輩」
「……うん、その長ったらしい説明、いる?後あっきーって呼ぶの止めて欲しいんだけどいい加減」
「いいじゃないすか別に。……ところでこれ何の集まり?つる」
「……キクナ」
「夕鶴、片言になってる」
「金稼ぎの一環に七不思議撲滅だけど」
「秋雨は言葉を選ぶっていうスキルを覚えようよ……!」

言ってる事はある意味間違ってないんだろうけどさ。
しかし相手は清水、常人なら失笑か硬直かの二択だろうセリフにも、

「何すかそれ、妖怪始末人トラウマ!的な何か?」
「何人が理解してくれるのそのネタ」

ぶっちゃけ私タイトルしか知らないよそれ。
メジャーだかマイナーだかもわからない漫画を思い浮かべ感慨にふけると、唐突に呼ばれた。幸村だった。

「秋雨が、そろそろ次行くって」
「次?次ってそういえば何?」

一応存在は忘れてなかった七不思議特集の新聞部誌を捲ってみると。

『紫ババア
 全身紫色ずくめの老婆で、長い爪を携えているとの話も。
 出会うと金縛りに遭ったり心臓を抜かれてしまう。
 雨校では一階女子トイレで目撃情報有り。』

とりあえず、目撃者の安否が心配です。

「秋雨、これ一気に危険度増してない?」
「そうだね、というわけで次の調査宜しく」
「日本語がおかしい!!」

よろしくって、私に死んで来いって事か。

「え、だって次女子トイレだしね」

……さいですか。

「ゆっきーはともかく、あっきー先輩は何の躊躇いもなく行きそうだなって思いました!」
「戻ってきたら覚えてろよ。……心配しなくても、あれもつけるよ」
「あれ呼ばわりすんな」

気が付けば、後ろには帽子を被ったりんが。なぜ皆して音も立てずに背後に回るんだろう。流行ってるのか。

「りん、何その帽子」
「耳隠す用。服はめんどくせえから変えないけどな」

今の会話が聞こえてるのか聞こえてないのか、清水が呑気に言う。

「あ、りーりんだ」
「……りーりんって、りん?それ以前に知ってるの?」
「有名らしいよ?コスプレ風和服美少女な不法侵入者って!情報源は雨校ホームページ」

……何故どこも騒ぎにしないんだろう。具体的に警察とか警察とか警察とか。
そもそもネットに存在流してるって事は学校が存在容認してるって受け取っていいのか。

「正直馬鹿猫に任せるのは死ぬより癪だけどね。まあ馬鹿猫は頑張って殺られてこい」
「変態表に出やがれ!!!」
「上等だよ。全身の皮剥がれて三味線にされるか、挽肉になって今夜の食卓に並べられるか選べ馬鹿猫」
「……つるー、どうするのあの二人」
「……りんを回収してとっとと済ませよう」

てめえこそ挽肉になれ!と怒鳴るりんを一旦捕獲し、結局私と清水とりんのパーティーで強制的に現場へ向かう事に。

「夕鶴、大丈夫?」
「……気遣ってくれるのは幸村ぐらいだよ……」
「まあまあ。そうだ、そこまで不安ならこうしとこう」

秋雨がケータイを出した次の瞬間、ポケットから最近変えた着信音。

「……電話?」
「繋げとけば少なくとも連絡は取れるよ」
「いや、いざとなったら助けにきてよ……」

繋げっぱなしにするメリットないし。……いや、いざとなったら電話もかけられないかな?論点そこじゃないけど。
不安は拭われないまま、悲しきかなあっさり到着。

「……意外と暗いね。まだ昼過ぎなのに」
「あんま使われてねーからなー、ここ」

照明は薄暗いけど建て替えられたばかりで綺麗な、ピンクのタイルが基調の少し狭い女子トイレを、ざっと眺める。右側に個室が三つ、目の前に小さい窓があり、左側に水道と鏡があった。
すると、私に代わって七不思議特集を読み込んでた清水が突然声を張り上げる。

「何?清水」
「つる!ここに書いてあるけど、紫ババアって『ムラサキムラサキムラサキ』で追い払えるみたいだよ!」
「とっとと言ってよ!」

一応撃退する術もあったのかと、少しばかり安心して胸を撫で下ろした。
……左にいたりんが、うっかり目に映ったのが悪かったと思う。
りんのさらに左、水道の脇に取り付けられた鏡に、見えたのは。

紫の着物。袖から見える針みたいな爪は幻覚だと信じたい。
腰まである髪と、さっきの天井下りよりは分かりやすい、老婆の顔。紫の口紅なんてこの世にあるのか初めて知ったよ。
名は体を表すというけれど、いつの間にか開いていた個室から出てきたのは、まさしく紫ババアだろう。本当にそのまんまだ。

「いぎゃああああああああああ出たああああああああああああ!?」

絶叫が思い切り響いた。叫びながらウサイン・ボルトだって真っ青のスピードで、おそらく陸上では永劫使われないだろう足さばきで後ずさる清水。私もりんも悲鳴は上げないものの目を丸くして固まってしまった。
紫ババアって確か、出遭った人間を金縛りに遭わせたり、下手すれば心臓持っていくんだっけ冗談じゃないんですけど。
いくら怪奇現象には慣れてても、流石に命の危機には慣れてないですっつーか慣れたくもないですヘルペスミー。

「……し、清水、何だっけあれ!紫ババア退散させるあれ!」

隣であわあわともつれた舌を動かす清水のブレザーを引っ張る。

「えええええええええっと、そうだポマードポマードポマードっ!!!!」
「ごめん、それ多分口裂け女!」
「えっ、マジ!?えっとえっと何だっけ確かこれにっ!」
「ページめくってる余裕なんぞあるか!……りん!りん覚えてない!?」
「……わ、悪りぃ分かんねえ!」

微かな希望が絶たれた。というより全員混乱のあまり色々とおかしい。

「ちょ、りーりんしっかりぃぃぃぃ!!!!!」
「無茶言うんじゃねえ俺都市伝説は詳しくねーんだよ!」
「ちょっとどうすんの、このままじゃパーティー全滅コースしか待ってないよ!?」
「つるかりーりんがザオリクかパラディンガード使えればっ……!」
「私賢者でもパラディンでもないから!ああもうどうすんの!?」
『……ムラサキムラサキムラサキ』
「「「……えっ?」」」

ああ、そういえばムラサキムラサキムラサキだったような。
すると紫ババアは、すーっと消えていく。声の主は……右手のケータイだった。

「幸……村?」
『皆、無事?』
『馬鹿猫が予想通り全く役に立ってないみたいだったから、幸村君の助け舟が入ったよ』
「変態、てめえの売ってる喧嘩はいくらで買えるんだ?」
『君に渡せる物なんてこの世からの引導位だよ』
『……誰か一旦戻ってきて』
「あ、じゃあうちが行くよー」

すっかり恐怖から抜け出し、いつもの調子で去っていく清水。数分後、大量の藁半紙に似た紙を抱えて戻って来た。

「何、それ?」
「なんかね、あっきー先輩がこれに『ムラサキムラサキムラサキ』って書いて貼っとけばとりあえず平気だろうって」

そんなもんあるなら最初から渡してくれ。そうしたらこんな心臓がフルマラソン後に倍速かけたような勢いにならずにに済んだかもしれないのに。
しかし今更文句を言っても始まらない、ちゃっかり秋雨から借りてきたらしいペンで手分けして紙を捌いていく。

「夕鶴、何だろーなこの紙?変態経由だと何かあんまいい予感しねーんだけど」
「……うーん、妖気微妙に感じるけど大丈夫でしょ。……多分」

だんだん不安になって来たけど、考えても分からない事は考えない。
……それより、紙多すぎて最早貼るとこ無いんだけど。どんだけ一枚一枚の効力薄いんだ。
結局鏡にまで紙貼ってノルマを達成した後に聞いたところ、紙くれた相手に連絡いれて、後日ここに来てくれる事になったらしい。幸村と秋雨曰く、人柄は信用出来ないけど腕はいいとの事。
とりあえず、その人が来るまでここのトイレは使用不可能になった事だけは確かだ。

壱話 雨月高校七不思議其之参・髪切り ( No.31 )
日時: 2013/03/30 04:14
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

三階、理科室前の廊下。
紫ババア騒動後清水が離脱し、また元の四人組で校内を練り歩いていると、肩に寒気が走った。
窓でも開いてるのかと思ったけど、そんな事も一切なく。はて。

「……!夕鶴、髪」
「……え、髪の毛?……あ」

肩を指差す幸村につられ、基本横ポニにしている髪を摘み上げた時、毛先がばっさり無くなってる事に気づく。

「おーい、これじゃね?夕鶴の髪」

そう言ったりんの足元には、五センチはある、おそらく私の髪の毛。
しかしいつの間に。そして犯人は誰だ。

「多分、髪切りの仕業だね。今出るとは思わなかったけど」
「髪切り……?」

そのまんまな名前だけど、詳しい事は不明な為結局七不思議特集を読む。

『髪切り
 どこからともなく現れ、人が気付かないうちにその人の髪を切る妖怪。
 雨校では校舎改装後に被害が出るようになり、現在まで男女合わせて六人被害に遭っている。
 出現場所がランダムであり、対策等も不明。』

「学校建ってから大人しくしてたんだけどなー、あいつ」

りんが呟く。

「何、また昔から住み着いてたパターン?」
「あー、そう言えばかれこれ元禄からの付き合いか」
「最低でも三百年以上経ってる……!?」

予想以上に縁深かった。
別段命の危険はなさそうなのでそこは一安心だけど、よく考えればはた迷惑この上ない妖怪だな。

「確か髪切り虫っていう虫みたいな姿してるのと、狐の仕業だって説があるよ、ね幸村君」
「俺を見るな」
「ごめんごめんつい。……そう言えば、人と妖が結ばれる時によく現れるらしいね。朝霧さんと父さんの式の前にも出たって、朝霧さん言ってたな」
「……朝霧さんって」

確か、秋雨のお母さんの名前……の筈。
如何せん、顔を合わせた事もほとんど無い為にはっきりしないんだよなあ。

「狐の方だったらしくて、首締め上げて飲み込んだ髪全部吐かせてやったって言ってたよ。後只事じゃない色した泡も」

時々言葉の端から、遺伝子の恐ろしさと血の繋がりは汲み取れるけど。

「目撃情報ちょっとあるけど、それによると髪切り虫の仕業っぽいんだよね……それより、夕鶴は何も感じなかった?妖気とか」
「いや、残念ながら別段」
「俺も……」
「夕鶴も幸の字もダメかよ。じゃあ変態は絶対無理だろ……おいどーすんだ」
「髪と間違えて首切られろ馬鹿猫」

駄目だこいつら早くなんとかしないと。
罵詈雑言がインフレ起こしてほぼ挨拶と昇華してる二人はどうにもならなさそうなので、はてどうしたものかと一人思い悩む。
しかしながら、元々霊感があっても知識には乏しい私だ、何かいい案が思いつく筈もなく。溜息がつい零れた時、違和感のある銀髪が目についた。

「ちょ……幸村!髪の毛!」
「え……あ、本当」

まさかの被害者第二号が。三センチは持っていかれたであろう、すっぱり切れた幸村の毛先に視線が集まる。足元にばっちり髪が落ちてるし間違いないだろう。

「あーーーっ!?幸の字もかよ!」
「被害者が増えたね。……でも、連続で襲ってくるって事は、この辺りから動く気はないのかな?」

それなら、と呟いて、秋雨が窓の方へ。何をする気だ一体。

「ちょっとごめんね」
「「……えっ……!?」」

瞬間、襟首を引っ掴まれた私と幸村。本当に何がしたいんだ。
常々、一見細身の部類に入るくせにどこにそんな力がと思う腕力で窓まで引きずられた時、秋雨が全部閉じられてた窓をひとつ開けた。
私達がついていけず棒立ちになっている真後ろの窓、そこに向かって。
さっき感じた、多分髪切りが原因の寒気が吹き込んだ瞬間、

「う、げっ!?」
「わっ……!?」

はたまた思い切り引っ張られた。
しかも無言。地味に痛いんだけど。
私達が重力に逆らわず前のめりに倒れこんだのに合わせ、窓のさんの上を滑らせるような勢いで秋雨が窓を閉めた。
横目で、鋏みたいな刃が見えた後。

凄まじい絶叫が窓を震わせた。

「……ギロチンとか、相変わらずえげつねーな変態」
「それなりにいい策だと思うけど?」
「俺達は囮か」
「まあ、こうして捕獲出来たんだし結果オーライで」

窓と窓枠にサンドイッチされてる、剃刀みたいな嘴に鋏に似た手の虫、これが髪切りらしい。
全く妖気も感じさせずに接近してきた割にはあっさり捕まったものだ。走り出したら前しか見ない猪みたいなものなのか。
とりあえず窓を開けて胴体を引き摺り下ろし、意識が戻るのを待つこと数分。

「……いや、何か建て替えられてから自分みたいなのが増えて、妖気にあてられてつい」
「理由になってないよカマキリもどきが」
「……俺と、夕鶴の髪……」
「夕鶴ー、どうすんだこいつ?」

微妙に生えてた足を正座させ、全員で説教をかます。

「私に振らないでよ」
「じゃあ、剃刀と鋏剥いで大自然に返す?」
「大自然から生まれたとは限らないでしょ秋雨。しかも生き抜く術剥奪してるし」
「そこらの鳥とかの生きる糧に」
「幸村、何で殺す事前提?ちょっと遠回しに言っても誤魔化されないからね」
「床屋がわりにしようぜ!」
「散髪代浮くけど嫌だよ」

結局まとまらないので、しばらく虫かごにでも叩き込んで図書準備室送りになった。
最後まで扱いは虫ですか。

「……ところで、君何で夕鶴と幸村君だけ狙ってたわけ?」
「いやそちらさんが言ってたでしょ、人と妖が結ばれると出る、って」
「まだ時間はかかりそうだけど、それでも釣られる程度には進展してるって事でいいのかな」
「……分かっててやってますよね」

……秋雨が髪切りイン虫かごに話しかけている。まだ話す事なんてあったのか。
しかし、今日は帰りに床屋に寄る羽目になっちゃったな。


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