コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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神様による合縁奇縁な恋結び!?【更新6/02】
日時: 2014/06/02 23:05
名前: 妖狐 (ID: aOQVtgWR)

※2014.6.01 執筆再開致します。

■あらすじ
人の役に立ちたいと思うあまり少しズレている神様、菜那城(ななしろ)。
菜那城はある日、一人の恋する少女、杏璃に出会う。
恋結びをすると張り切るが、それは前途多難で——!?
「私にその恋、お手伝いさせて!」
心温まる、ひと夏の不思議なストーリー。

■最新話(6/02) 
第六話「狼さんは心配性? それともただの皮肉屋さん?」 >>53

序章・第0話追加。
第一話訂正、補修いたしました。
第二話訂正、補修いたしました。
第三話訂正、補修いたしました。
第四話訂正、補修いたしました。

■こんにちは
もしくは初めまして。 妖狐と申します。
今回は「ひと夏の物語」を皆さんに楽しんでいただけるよう、書かせてもらいます。
一年前ほどから執筆が止まっていたので、再開スタートさせたいと思います。
少しでもわくわくするような気分に浸ってくだされば、幸いです(*^_^*)
ちなみにプチ豆知識ですが、題名に出てくる「合縁奇縁」とは「不思議なめぐり合わせの縁」という意味です。

■登場人物
狐の神様/菜那城 nanashiro
狼の青年/琥珀 kohaku
恋する少女/小林杏璃 kobayashi anri
杏璃が恋する少年/柴田結斗 shibata yuito
杏璃の幼馴染/夏樹 natuki & 拓也 takuya

その他/妖怪の皆様

■目次
第0話「最後の約束」                  >>3 
第一話「一期一会の出会い」               >>3
第二話「神様は正直者」                 >>13-14
第三話「初恋の君」                   >>19-20
第四話「秘密の時間」                  >>30-31
第五話「迷った先でたどり着いたのは『菜那城神社』でした」>>35-36
第六話「狼さんは心配性? それともただの皮肉屋さん?」 >>53
参照100突破  >>24
参照200突破  >>40

■注意
・妖怪たちがわんさか出てきます。
・糖分さんは甘めです。
・設定が真夏の中なので、読んでて熱くなるかもです。
・誤字脱字ありましたら、すぐコメを!
・読んだ感想などもらえましたら、涙を流すほど嬉しがります。

■お客様
・モンブラン博士様
・ぴんくのうさぎ様
・ひよこ様
・月花様
・朔良様
・未奈様
・璃湖様
・八田きいち様
・藍歌様
・あんず様
・ユノ様


■執筆作品            【執筆状況】
銀の星細工師            連載中
今夜は甘いデザート日和【短編集】  連載中
私の救世主はマフィア様!?      完結
吸血鬼だって恋に落ちるらしい    完結
笑ってよ サンタさん        完結
ラスト・ファンタジア        過去ログ
僕らの宝物の日々          過去ログ

ではでは、本編へレッツゴー!

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Re: 神様による合縁奇縁な恋結び!?【夏の短編】 ( No.1 )
日時: 2013/07/22 08:18
名前: モンブラン博士 (ID: wSekEVk/)

更新を楽しみにしています!
もしオリキャラ応募があれば応募します!

Re: 神様による合縁奇縁な恋結び!?【夏の短編】 ( No.2 )
日時: 2013/07/24 15:16
名前: 妖狐 (ID: idHahGWU)

モンブラン博士さん>
まだお話も投稿していないのに、ありがとうございます<(_ _)>
オリキャラを応募してくださるというのはとても魅力的なのですが
今回は本柱が立っているお話ですのであまり募集はしていません。
またの機会に頼みたいです!

少しでも、「神様による合縁奇縁な恋結び!?」を楽しんでいただけたら幸いです!

Re: 神様による合縁奇縁な恋結び!?【夏の短編】 ( No.3 )
日時: 2014/06/02 09:49
名前: 妖狐 (ID: aOQVtgWR)

■序章

——「乙女は恋する生き物よ」
 神様だったあの子はそう言って楽しそうに笑った——



■第0話「最後の約束」


 これは大好きだった母と交わした最初で最後の約束。

「ねえ、わたしの愛しい子。あなたにお願いしたいことがあるの。母様と『約束』してくれる?」
 どこまでも透き通った優しい声に、少女は首をかしげる。まるで明日という未来はない、最後の会話のようだったから。
「人の役に立つ神様になって欲しいの。見えにくい心に寄り添って、傍で大丈夫だよ、って手を差し出す神様に。そうなることを約束してくれる?」
「うん!」
 手足もまだ短い少女は、それを元気いっぱいに振り回しながらうなづいた。不安げだった女性の表情が一気に嬉しさで満ちる。それを見れただけで少女も嬉しかった。
 女性は掌に乗せても有り余るほどの愛を少女に伝えるように、ぎゅっと強く抱きしめた。震える腕は今にも消えてしまいそうな気さえする。
「……あなたが人を、他人を助けることで、必ず誰かもあなたを支えてくれるようになる」
 わたしはもう、傍にいてあげられないから、と女性は小さく呟く。
 今、少女にできるのはなぜか寂しげな母を元気づけることだけだった。その方法は一つ、約束を守ること。
「お母様、私、早く大きくなって人を助ける神様になるわ。たくさんたくさん助けて、笑顔にしてあげたい」
 未来を想像して瞳を輝かせる少女を女性はもう一度、抱きしめた。こみあげてくる想いをぐっと抑え込んで、うるんだ眼で少女の笑顔を焼きつけようと顔を上げる。
「ありがとう。大好きよ、菜那城」
 堪えきれず頬をつたう涙は、母親の少女を想う、本当に最後の言葉だった。


■第一話「一期一会の出会い」
 
 ミーン、ミンミン……ミーンミーン。
 セミの大きな大合唱が日本中を包み込む、8月上旬の焼けるような今日この頃。
 希望としてかすかに吹く風さえモワッとしていて温かく、危うく理性が吹っ飛びそうになる。今にも雄たけびを上げてしまいそうな猛暑。
 じりじりと肌を照りつけて黒く染めようとする暑い日差しの中、古風が漂う大きな神社の社の前に杏璃はつ立っていた。気温のせいでか、神社には人の姿がまったくない。
 杏璃の額からは珠のような汗が流れ出るが、必死にその汗をぬぐいながら手をあわせた。
「——……君へ想いが届きますように」
 懇願するような切ない声。熱中症が歌われる日にわざわざ外に出て、炎天下の下ずっと神社の前にいるにはそれなりの訳があるらしい。
 ふと、杏璃は閉じていた眼を開け、次の瞬間顔を真っ赤にした。
「あれ、今の声に出てた……? うわあああ! はっず、超恥ずかしいー!」
 誰一人周りにいない場所なのだから聞いている者もいないとわかっているが、泡を食ったように杏璃は頭を抱えてしゃがみ込んだ。一人で騒ぐ姿は、傍から見たら珍妙な光景だ。
 しかし自分がおかしな行動をとっていることに張本人が気づくこともなく、一人劇でもするかのように数分の間、羞恥に悶えた。
 やっと顔の熱も引いてきたころ、ぱたぱたと手で顔を仰ぐ仕草をしながら立ち上がる。手を動かしても風なんてこれっぽちも起きないのだが。そしてまた、思い出したかのように手を合わせ、今度は願い事を心の中でするように心がけながら、再び瞼を下した。
 
 その光景を遠くの木の上から見ていた者がいた。
 木は並大抵の者が登れるような木ではなく、とてもとても高い大イチョウの木だ。しかしその者は、何食わぬ顔で中央付近に腰を下ろしている。
「さっきから何分ああしてるつもりなの? こんな暑いのに苦労なことだわ」
 言葉はあきれたような雰囲気が出ているが、言葉とは裏腹にその者の瞳には心配そうな色が出ている。
 灼熱な太陽の下、その者はおかしなことに汗の1滴も流れてなく、奇妙なほど白い肌だ。
 一言でその者のことをまとめてしまえば、それはまるで『人間ではない者』のようだった。

            *

 遠く薄れる意識の中、杏璃の頭の中には思いをよせるあの人の顔が回っていた。
「あっ お願いっ待って!」
 杏璃は思いを寄せる少年を追いかけ手を伸ばす。しかし努力惜しくも少年は暗闇へと消えてしまう。必死に追いかける杏璃をあざ笑うかのごとく。
「お願い……待って…………!」
 そこで意識は音を立ててぷつりと途切れ、暗闇の中に杏璃は飲まれていった。


 ふかふかと軽いした触感、この何とも言えないお日様をたくさん浴びたようなのにおい。
「ぐふふっふふっ……えへへー」
 杏璃は夢と現実のはざまにいるのか珍妙な声を漏らした。
「いい匂い、幸せだなあ……」
 眼を開けた途端、天使の羽のようなふっくら枕に思いっきり抱きついた。
「なんなの、このフカフカ感っ! 清潔に洗濯された洗剤と太陽の匂い、崩れていない完璧な枕の90度、45度のライン。枕愛好家の、この私が普段使ってる枕より素敵かもっ!」
 あまりのフカフカ加減に胸が熱くなり感動に浸った。今頃になって本当に自分が枕が大好きなのに気づく。そんじょそこらを探したくらいじゃ、自分ほどの枕大好きっ子は見つからないだろう。
「あなた、わたしの家に来ませんか?」
 枕に向かって勧誘を始めた。会った瞬間の胸のときめきを感じ、もう離したくないと切実に思う。
「ひどい仕打ちは致しません。ちゃんと定期的にに手洗いして、大事に致します」
 誠心誠意、杏璃は枕と向きあった。親が見たらなんというだろうか。呆れた顔をするかもしれないし、頭の方を心配されるかもしれない。けれども枕を愛している杏璃は今、この一生に一度あるかないかの運命の出会いを逃したくはなかった。
 イエスともノーとも答えるはずのない枕に杏璃は話しかけ続ける。目の前の枕に気を取られすぎていたせいか、まったく周りは見えておらず、頭上から聞こえた鈴のような声にびくりと肩を揺らした。
「おはよー。そんなに琥珀が洗濯した枕が気に入ったの?」
 のんびりとした口調を聞いて、杏璃は慌てて辺りを見渡した。今まで気づかなかったが六畳間の和室の障子付近に巫女服姿の女性が一人、座っていることに気づく。杏璃と目が合うとにこっと笑みを返した。
「……はい、とても」
 驚きで、誰ですか、と聞く前に率直な答えが口から出てしまう。
「なんだったらあげようか、それ」
「いいんですか!?」
 つい身を乗り出して女性の方へと近づいた。体にかかっていた布団がパサリと落ちる音がする。
「あ、いや……くれるなら是非とも頂きたい代物ですけど」
 感情が表に出すぎてしまった羞恥で言葉を濁しながら少し後ずさりした。貰えるなら喉から手が出るくらい欲しい。だが知らない人に物をもらっちゃいけない、というのは良い子のお約束だ。
「うん。いいよ、あげる」
 ころころと変わる杏璃の表情を面白そうに見ながら女性は即答した。その言葉に後押しされるように杏璃は枕を頂くことにした。いや、正直、欲しくてたまらなかったのだ。きっとあげると言われなくても、くださいとお願いしていただろう。
「ありがとうございます。この枕……お嬢さんの事、一生大事にしますから」
 まるで結婚を申し込みに来た彼氏のように杏璃は枕を握りしめて頭を下げる。その様子にこらえきれなくなったように女性は吹き出して、ころころと鈴が転がるように笑った。女性は先ほどからずっと笑みを絶やさずにいる。
「あの、そういえばここってどこですか……?」
「ああ、やっとその話題ね」
 枕に熱中しすぎて自分の置かれている状況は二の次だった。杏璃は見慣れない布団の上に寝ていた自分を思い出す。ゆっくりと曖昧な記憶を探りながら、ピースが頭の中に一つずつ埋まっていく。
「……——っ!」
 最後の一つのピースがはまった瞬間、ぱっと目を見開いた。
(そうだ……! あたしは神社の前で倒れたんだ)
 自分の記憶が神社の前で途切れ、そこからこの和室で目を覚ましたことを合わせれば合点がいく。
 つまり目の前の女性は……——命の恩人なのではないか。
 急いで身なりを正して正座をすると、目の前の者に座っている張本人を見た。
「助けてくださったんですか」
「うん、私の神社の前で倒れていたから運こんだの。ちょっとした貧血と熱中症よ。寝てれば治るわ」
 あの炎天下の中でずっと立ってるんだものね、と女性は苦笑する。確かに倒れて当然の状況だったかもしれない。とっても危うかったようだ。
「そうなんですか。ありがとうございます」
 杏璃は頭を下げた。もし助けてもらわなければ、あそこに一人で倒れ込んだままだったかもしれない。人影もなかったので見つかる可能性だって低かったのだから。
「いえいえ、人として当たり前のことをしたまでだから。いや……私の場合は人に入るのかな?」
 うーんと首をかしげてぶつぶつと呟く女性に、杏璃は心から感謝した。明るい笑顔に人助けの精神がある、とても好印象を覚える人だ。
「本当にありがとございました。恥ずかしながら、ちょっと強く願い事をしてたため、辺りが見えてなくて……」
 えへへと照れ笑いを浮かべる。それに女性もそうだったのと優しく笑った。
 それをきっかけに杏璃は初対面という心の壁が崩れたような気がした。歳が近いように見えるためか、同性のためか、もう緊張はあまりない。親しみすら感じる。それもこれもきっと彼女の親しみやすそうな性格のためだろう。
 人見知りな杏璃でさえもすぐに打ち解けてしまいそうな、不思議な人。
「私は杏璃って言います。小林 杏璃です」
 自然と名前が口からでた。名乗ってもっと仲を深めてみたいと感じたからだ。
「私は菜那城(ななしろ)っていうの。親からこの神社を任されて神主をやっているわ」
 その言葉に杏璃は驚いた。彼女が……神主?
 神主ということは既に神社の責任者の立場になっているということなのか。自分と同い年に見える女性は仕事を持っていて、しかも神主という立派な立場にある。そういえば彼女は巫女服を先ほどから着ていたではないか。
「すごいですね。私と同い年くらいなのに勤務してるなんて!」
 尊敬の念を込めて杏璃は菜那城を見つめた。その視線に菜那城は初めて照れたように笑う。不安や悲しさを吹き飛ばす様な明るい笑みもいいが、恥じらった微笑みも可愛らしい人だった。
「そんなことないよ。この神社も親から引き継いだものだしね。それにまだ私も十八だよ」
 十八で神主をやってるとなれば尚更だ。もっとすごいですよ、と杏璃が褒めまくると、菜那城はさらに頬を赤くさせて照れた。
 なんてかわいんだろうか。うん、なんだか守ってあげたい感じ。
 これぞ女の子だ、と杏璃が思った瞬間、ふいに違和感を感じた。空間がぐにゃりと曲がるような変な気分になる。
(……なにか動いた?)
 眉をひそめ首をかしげる。ピクリ、と何かが動いたのを視界の隅で感じる。
 どこで動いているんだろうか。まだ照れた様子で頬を押さえる菜那城の周りを観察した。
 ——ピクッ。
 また何かが動く。動いているのは……菜那城? いや菜那城の頭上付近。杏璃はそこをまじまじと見つめた瞬間、言葉を失った。頭上付近、いや、菜那城の頭にある『物』を見て硬直した。
「もう、そんなに褒めたってなんにも出てこないんだからね。というか、言い忘れてたけど私が十八っていうのは見た目の人間年齢で言えばってことで、実際の生きてきた年月を数えれば百二十歳なのよ……」
 菜那城が話しかけるが、むなしくもその声は少女の耳を通り抜けて行く。
 そして少女は再度、今まで寝ていた、ふかふか枕に向かって後ろ向きに倒れていった。
(まだ夢の中にいたなんて思わなかったな。さっ、元の世界に戻らなきゃ)
 現実逃避の方向に目を向けながら目を閉じた。その姿は眠ったというよりは、気絶したようだった。
 しかし、それも無理はない。なにせ、
「えっ、杏璃ちゃん!?」
 驚き声をあげて心配する菜那城の頭には、キツネのような耳が生えたていたのだから。

 この瞬間から、少女の現実的論理はきっと奪われてしまったに違いない。


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