コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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人を妬み、恨んだ話。【▼番外編 が 作動 した!】
日時: 2014/12/11 20:31
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38314

──赤毛の少年は思った。
  「自分は人よりもずっと劣っている」と。


──優等生な少年は「自分は全く個性がない」と項垂れた。


──ヤンチャな彼は「自分は全然成長していない」とため息を吐き、
  大人しい彼は「自分はとても自分勝手だ」と自分を責めた。


──いつも不器用な少年といつも笑顔な少女は「自分はなにも分かっていなかった」と涙を流した。


──明るい少女達は「自分なんて大嫌いだ」と肩を竦めた。


──涙を封じ込めた少女は「自分は泣いてはいけない」と明るく振る舞い、
  涙脆い彼女は「なんて自分はヒドイ人間だ」といつものように目を泣き腫らした。


   それぞれがそれぞれを妬み、恨んだ。



こんにちは。
ミカズキといいます。
いつもは違う名前で活動しています。

たまに素の名前で投稿すると思うのですが、スルーでお願いします。

加筆修正?日常茶飯事ですよ。
些か題名がおっかないですが、らぶ・こめでぃになる……予定です!

右往左往しながらですが、宜しくお願いします〜


ー簡単にあらすじ紹介ー

高校一年生の泉宅。
容姿にコンプレックスを持ち、少しだけ捻くれ者だが普通の高校生(だと思う)。
まぁ、周りの人々に翻弄され、もみくちゃになる運命なのですが。

恋も実りそうにないし、家族関係もいいとは言えないし。
不幸なこの人が主人公の物語。


ーお知らせー

9.7 スレ立て
9.19 題名変更
11.3 参照200になりました!
11.9 少し設定を変更しました
11.29 参照300になりました!
11.30 再び題名変更


ー目次ー

プロローグ >>1

登場人物・用語紹介 >>2

本編・第一章 【めちゃくちゃな日々の始まり】

《僕はただ同じような日常を過ごしていたかったんです》

>>3 >>4 >>5 >>6 >>8 
>>9> >>10 >>11 >>12

《日常は儚くも簡単に壊されました》

>>13 >>14 >>15 >>16 >>17
>>18

《僕は貧弱なのでしょうか》

>>19 >>20 >>21 >>24 >>25
>>26 >>27 >>28 >>29

第二章 【家族ってなんですか】

《白髪美人》

>>30 >>31 >>32 >>33 >>34

*番外編*

《不良少年と優男》

>>35 >>36 >>37 >>38

Page:1 2 3 4 5 6 7 8



Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.30 )
日時: 2014/11/03 13:46
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「皆、来ないね」

ペチャクチャと喋り続ける松尾さんに、僕は笑顔で話しかけた。

「えぇ。一体どこで道草くってるんだか……アンタと二人でいても楽しくないわ」

すると、松尾さんは急に悪態をつき、だんまりしてしまった。
喋りまくったと思えば、機嫌が悪くなったり……随分忙しい人だ。

しかし、シンと静まった部屋の中二人きりでいるというのは非常に気まずい。
いつもなら愛想笑いを相棒に話題を探していくのだが、頭が朦朧としていてそんな器用なことは出来そうになかった。

沈黙に耐えるしかないのか……
僕がため息をつきそうになった時、ドアの向こうから賑やかな足音と声が近付いてきた。

「しかし、美郷も大きくなったなぁ〜」
「なにジジ臭いこと言ってんの? まだアンタ30代でしょうが」
「そうですよ、進。 私なんてもうすぐ50です」
「えぇっ、水谷さんってもう少し若いと思ってましたよ、俺」
「ほほほ。 孝明さんは若作りに励んでいますものね〜」
「そ……そうなんですか……!」

その声は、一つ一つ聞き覚えのあるものだったのだが……どうしてあの人達が一緒に……?

「宅さん、入らせてもらいますよ」

僕が頭を捻ると、そんな声と共にゆっくりとドアが開いた。
そして、白髪のおばあさんが入ってくる。
山吹色の着物を優雅に着こなすアパートの管理人、雅子さんだ。

「まぁ、素敵なお嬢さんね。 こんにちは。
 皆さんも入りなさいな」

雅子さんは、松尾さんにそっと笑いかけたあと、ドアの外に向かって語りかけた。

「素敵な人……」

と、松尾さんが呟いた。

Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.31 )
日時: 2014/12/11 20:29
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

雅子さんが声をかけると「ふぁ〜い」と、いう気の抜けた返事と共に堀越さんが一番に入ってくる。
その影で水谷さんが、

「きちんと返事はしましょうね」

と堀越さんにやんわり注意した。
堀越さんは、チッと一つ舌打ちをして僕の部屋の畳の上に座り込んだ。

「うるせぇーよ、カッパ野郎」

そして水谷さんに向かってあっかんべーっと舌を出す。
しかし、皆を僕の狭い部屋に招き入れる(最近僕の部屋、集会室みたいになってないか?)のに一生懸命で見向きもしない。

「……困りました、皆さん全員は入りませんね〜」

困惑した表情で水谷さんは首をかしげた。
まぁ、確かに八人なんていう大人数は僕の部屋には入りきらないだろう。
すると、ドアの外で

「あ、じゃあ俺帰りますよ。 泉、またな」

と素っ気ない声が聞こえた。
多分、鈴音君の声だ。
そうか、鈴音君帰っちゃうのか……

「あ、玲が帰るなら私も! 泉君、お大事にね!」

と、僕が少し残念に思った途端に、ほんわかした声が僕の耳に飛び込んできた。
そして、

「ねっ、玲一緒に帰ろ〜」

「……おう」

というような会話を仲睦まじく交わしながら、そんな二人の足音は遠ざかっていった。

「ホント仲いいよね、かのんと鈴音はさぁ……」

松尾さんがしみじみと呟く。

「まぁ、幼馴染みだしねぇ〜」

それに同調するように、飯沼さんがフッと僕のことを嘲笑うかのように見た。
……やっぱり、フラレたことを根に持っているのだろうか。

「美郷、そんなこと言ってはいけませんよ?」

すると、雅子さんが少し厳しい調子で飯沼さんに注意した。
雅子さんがそんな風に人に注意するのを見たのは初めてだったため、少し違和感を感じた。
でも、飯沼さんは全く気にしない様子で

「はぁい……おばあちゃん」

と、肩をすくめた。
飯沼さんが発した言葉の意味が分からず、思わず松尾さんの方を見やる。
すると、松尾さんと目が合った。

「「え……おばあちゃん!?」」

その後に、思いきり二人でそう叫んだ。

Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.32 )
日時: 2014/12/11 20:30
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「松尾っち……と泉、知らなかったの?
 というか、泉とはアパートで会ったことあるんだけど?」

飯沼さんはやれやれというように肩を竦めた後、僕の方をチラッと見た。
まぁ、すぐにそっぽを向いてしまったけれども。

しかし会ったことがあると言われても、いつのことなのかさっぱり検討もつかない。
確か引っ越して来たのが春休みのこと。
四月にはもう飯沼さんとクラスで会ったことがあるから、見たらすぐに分かるはず。
だからきっと、春休みの途中に会ったのだろう。

「ん〜、覚えてないな〜……いつ会ったんだっけ?」

僕がにこやかに言い首をかしげると、飯沼さんは一つ大きなため息をついた。

「……アンタが引っ越して来た時。 えっと、アンタが誰かと二人で荷物運んでるの手伝った」

「へぇ〜。 美郷優しいじゃん!! ……てか、泉引っ越し手伝ってくれるような友達いたんだ〜」

飯沼さんは、毅然とした態度で言い放った。
どうやら、会ったのは僕が引っ越して来た日らしい。
しかし僕と一緒にいた人というのは、松尾さんは勘違いしたようだが友達ではない。

「……兄さんだな」

「宅ニイチャン、おにーさんがいるの?」

そう僕が呟くと誰かが僕の首に手を回した後、耳元で声を出した。

「うわぁっ!? ……あ、君か……」

振り向くと、あのいつもの女の子の満面の笑みがそこにあった。
僕は驚いて大声を出してしまう。
すると、今まで水谷さんと話していた堀越さんが、プーッと吹き出す。

「泉、その幼女は誰なの?」

赤くなる僕を尻目に、松尾さんが呑気な声を出した。

Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.33 )
日時: 2014/12/11 20:30
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「ようじょって……私のことー?
 私は、美香っていうの」

女の子……いや、美香ちゃんは僕からピョンと離れると、床にペタッと座りこんだ。
飯沼さんが目を細め、美香ちゃんの頭を優しく撫でた。

「美香ちゃんか〜……私のこと、覚えてる?」

撫でられた美香ちゃんは、嬉しそうに首を縦に振った。

「美郷ネェチャンのことは忘れないよ!」

どうやら、笑い合うこの二人は昔馴染みらしい。
飯沼さんがアパートに来たときにでも、知り合いになったのだろうか。

美香ちゃんと目線を合わせ、嬉しそうに会話をする飯沼さんの表情は、最近こちらに向けてくる(まぁ、原因は僕が約束すっぽかしたことだけれども)気まずそうな表情とはかけ離れていて、とても新鮮で素敵だと……素直に思った。
あまりこういう風に人の顔を見たことはなかったので、尚のことだ。

「飯沼さんは子供が好きなの?」

気付くとそう、自然と問いかけていた。
飯沼さんは、驚いたようにこっちをジッと見つめてきた。
そして、小さくボソリと言った。

「……まぁ、ね」

それから「好きだけど」と、ハッキリ言い直した。
飯沼さんはその後すぐに目を逸らせたが、僕はそのまま飯沼さんのことをボーッと見つめていた。
まぁ、すぐに

「気持ち悪いからあっち向いてくれる?」

と、一喝されたが。

「……あ、そういえば」

その時松尾さんが、ポンと手を打った。

「美香ちゃんはさ、名字はなんていうの?」

そして頭をかしげる。
美香ちゃんは「えーっとね……」と、口を開く。

「ーー泉。 泉 美香っていうの」

「あ〜、泉と同じ名字じゃん!! 偶然だね〜」

松尾さんは大げさに手を広げ、美香ちゃんは「おお〜」と、小さく声を漏らした。

ホント……スゴイ偶然だ。
まぁ、名字が一緒なんてそんな驚くようなことでもないが。

外でカラスが、アホーアホーと鳴くのが聞こえた。

Re: 少年少女の甘酸っぱい青春物語(の、つもり) 【イラスト・有】 ( No.34 )
日時: 2014/11/16 19:46
名前: ミカズキ (ID: Z.6cz.ec)

「……じゃあ、私達はそろそろ帰るわね」

空がオレンジ色になって来た頃、松尾さんは伸びをしてそう言った。
すると、美香ちゃんの頭を撫でていた飯沼さんや他の人達も頷き、立ち上がった。

「じゃ、またな宅」
「宅ニイチャン、早く良くなってね!」
「お大事にしてください、宅君」
「じゃあ学校でね!」

皆それぞれ僕にめいめいの言葉をかけて行ってしまう。
僕はそっと息を吐く。

「ねぇ、泉」

が。
僕の後ろからそんな声がした。
誰もいないと思っていたので、口から心臓が飛び出しそうになる。
その声の主は、壁にもたれかかりツンとすました飯沼さんだった。

「……!? い、飯沼さんっ!? いたの!?」

僕がそう言うと飯沼さんはいちゃ悪い?とでも言う風に鼻を鳴らした。
そして唐突に切り出す。

「……あの子のことなんだけど」

「え? あの子って?」

「美香ちゃん」

飯沼さんは、僕の質問に間髪入れず答える。
そしてイライラしたように舌打ちをした。

「あの子のこと、どれぐらい知ってる?」

そして僕の方をジッと見た。

「……えっと……お母さんが厳しい人だってことと……それくらいかな」

僕がしどろもどろに答えると、飯沼さんは目を伏せた。

「ふぅん……あれは、厳しいっていうレベルじゃない。 児童相談所も来たことあるんだけどね〜」

「………そうなんだ」

「ま、それだけだから。 じゃ」

それだけ言うと、飯沼さんはドアを開けて行ってしまった。




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