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心魂盟奴 〜ソウルメイド〜
日時: 2016/02/24 16:27
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: /ReVjAdg)

 

 それは、唯一人を主君と定めた忠誠を誓う純然たる美しき乙女の追従者。

 己の血と肉、己の智と技、命を持ってして傅く忠実なる臣下。

 病める時も健やかなる時も、試練に苦渋する時も束の間の平穏なる時も、絶望に膝を堕とす時も希望を託し祈る時も、共に在り、傍らに有り続ける終生の随伴者。

 如何な理由があろうとも決して主の御身を裏切らず、またその研鑚たる恩赦に報いるべく研磨を惜しまない。

 その魂魄を分かち合い、育み、慈しみ、愛し、切磋琢磨し、響き合い、昇華して共に頂に至ることこそ真の響命者パートナーと成り得る。

 
 それが盟奴メイド


 魂の片割れ。


 其の現身うつしみ


 故に『心魂盟奴ソウルメイド』と言う。
 







 目次



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2 >>3
3 >>4
4 >>5
5 >>6
6 >>7







皆様如何お過ごしでしょうか、Frillです。今回のお話は『TS(性転換)』を含みます。耐性の無い方はプラウザバックをお勧めします。露骨な性的表現などは極力控えますが、なにぶん私も執筆しないジャンルなので生暖かく見守って頂けるとありがたいです。


  

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Re: 心魂盟奴 〜ソウルメイド〜 ( No.1 )
日時: 2014/11/23 21:14
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: /v7BfUQP)

 0








 眼下に広がる深い緑森の波、小高い山望が幾つも見渡せる丘陵。

 東の空が粛々と淡く白み始める。

 鋭峰の合間から少しずつ顔を覗かせ照らし出す曙光。

 暁。

 明か時、夜明け、日の産声。

 琉貌の暁天が生けとし生けるものの目覚めを徐々に告げ、柔らかな温もりと共に活命の祝福をもたらす。

 その賛美たる光りの兆しを丘の上の逞しい白馬に跨る銀装の鎧に身を包む青年は静かに山間から伸びる陽の影に僅かながら眼を細める。

 その眩しさに、その儚さに。

 それは戦友ともを失った哀しみによるものなのか。

 それとも愛するものを故郷に残した悔恨なのか。

 あるいは他の何かか。

 憂いにもの想う若者の後ろに数歩下がり、慎ましくも慇懃に控える十人程の従者と思われる者たち。

 うら若き美しい少女。

 皆一様に華奢な躰に白磁のエプロンスカートを飾り、頭部に白亜のカチューシャを頂く。

 ゆっくりと昇り立つ曙陽が朱く、鮮やかに色付かせる 

 始まる。

 今日これより一日の豊穣なる時を刻む。

 しかし青年は日が昇るにつれ、端正な顔立ちに暗い翳りを落とし、暗鬱と暮れる瞳を揺らす。
 



 終わる。


 終わるのだ。


 今日この日を以って、終わりが訪れる。


 終焉の時を迎える。


 世界が。





 

Re: 心魂盟奴 〜ソウルメイド〜 ( No.2 )
日時: 2014/11/23 23:02
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: eCoP6tTf)

 1








 穏やかな日差しが注ぐ。

 青年は手綱を繰り、白馬の半身を数歩引かせ、後方に傅く見目麗しい乙女たちを見やる。

 侍女服に身を包む自身に仕える十人の少女たち。

 皆絶世の美女とも呼べるほどに美麗かつ可憐な容貌を携える。

 長袖の肩が膨らんだ、くるぶし丈の漆黒のワンピースに膝下まで覆う白いエプロンドレス。フリルとレースをふんだんにあしらったスカート。

 頭の上にはホワイトプリム。足元から覗く黒い編上げのブーツヒールが高めだが、可愛らしくも機敏さを重視した構造は、まるで給支するためにあつらえられたような服。

 それは典型的な『メイド』のルックスであった。

 そう、彼女たちはメイド。

 唯一のマスターに従う絶対の従僕。

 しかし、唯のメイドではない。

 ましてや彼女たちは人ですらない。

 彼女たちの種族は『機甲戦乙女パンツァーワルキュリア』。

 機械なのだ。

 戦う機械兵器なのだ。

 敵と対しても恐れること無く、怯むことも無く、主命のままにその身を奉げ眼前の道を切り開く猛美なる戦乙女たち。

 血も涙も類さない感情の無い殺戮マシーン。

 そういう存在であった彼女たち。


 ————あった、のだ。


 学ぶのだ。

 人間と共に在る事で。

 人と触れ合い、生活することで学習し理解する。

 感情というものを。

 その在り方を。

 自身が何者かであり、どうあるべきか。

 自我を以って、自責を担って。

 己が為すべき事を探し、模索する。

 それを導くのが彼女たちの選ばれたマスター

 最終的にどうするのか決めるのは主人である者の役目。

 廃棄処分するのか、武器兵器として扱うのか、あるいは性玩具として奉仕に専属させるのか。

 彼女たちが千差万別あるように、マスターも多々存在し彼女たちの生殺与奪を自由に行使し命令を下す。


 自由なのだ。

 善くも悪くも。

 すべてはマスター次第。

 どんな命令を与えようとも誰も文句は言わない。

 そういう仕様であり、存在なのだ、彼女たちは。













 静かに傍らに控える乙女たち。

 青年、プレーヤー名イクス・シュタッドフェルトは深く溜息を吐いた。

 手塩に懸け育て、愛で、共に苦楽を享受した最高の乙女たち。

 数々のイベントとフラグをクリアし、数多のクエストをこなし此処まで育て上げた自慢の響命者パートーナー

 時を忘れ没頭した過去が走馬灯のように過ぎ去る。

 戦闘、探索、戦争イベント、その他諸々。

 制限仕様パッチが必須な際どいディープなメイド調教の日々等々。

 アップデートの度に一喜一憂した。

 それだけでは飽き足らず、チートや改造なども積極的に行った。

 遊べることは殆どやり尽くした。

 だが今になって想う。

 まだ遊び足りない。

 もっと遊びたいと。

 まだやり残した事があるのではないか、と。

 改めて想う。

 こんなにも愛着があったのか、と。 















 太陽が頭上、蒼空の中天に差し掛かる。

 イクス・シュタッドフェルトが手差しを作り、光を遮りながら見上げる。

 「・・・ああ、そろそろ時間なのか」

 太陽の輝きが白く、強くなる。

 もうすぐ、もうすぐだ。

 終わりが来る。

 イクスの眼に映る景色が白い発光色に覆われていく。

 同時に音という音も何処か遠くに聞こえ始めた。

 朝焼けに囀る小鳥の声も、風にそよぐ木立の枝葉のざわめきも。

 輝きはその強さを増していき、やがて世界は白簿の渦中へと飲み込まれていった。


 


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