コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- クリーチャー・ゲーム
- 日時: 2015/09/09 02:12
- 名前: 竜野翔太 (ID: SDJp1hu/)
はじめまして、もしくはこんにちは!
この小説掲示板で既に一作書かせていただいている、竜野翔太です。
書いてる作品が「三章始まったぜ、イエーイ!」とテンション上げてそのまま新作を書くことになりました。いえ、書くことにしました。
といっても、ラストの展開は思いついているものの、そこまでの過程はまだまだなので、いつも通り行き当たりばったりな展開も多いかもしれませんが、何卒お付き合いお願いします!
Page:1
- Re: クリーチャー・ゲーム ( No.1 )
- 日時: 2015/09/09 03:04
- 名前: 竜野翔太 (ID: SDJp1hu/)
プロローグ
「運命」などという言葉は信じない。
そんな極めて偶然で自分勝手な妄想に、相手を付き合わせるなんて理不尽にもほどがある。
出会いにはすべて、意味がある。
その出会いが必然や偶然だとしても、なんらかの意味があるに違いない。
奇縁なれど、出会うからには何かの意味がないといけない。
偶然出会って、優しくされたり、悪漢から助けられたり、曲がり角でぶつかったり、席が隣になったり。
そんな日常で起こりうるイベントで出会う人を、「運命」などという妄想で縛り付けるのはいかがなものか。
出会いは良い方向に転ぼうとも、悪い方向に転ぼうとも必ずなんらかの影響を与えるものである。
そんなことを考えながらぼんやりとしていた、学校が休みの土曜日。
いつからこうしていたんだっけ、と時間感覚があやふやなままベッドの上で意識をしっかりさせる。
高校生の天羽悠真(あまばねゆうま)は、「出会い」というものに対し、そういう考えを持っていた。
といっても、これは経験談などどはない。
実際に、今まで出会った誰かの中で自分の生き方に左右する人物は現れていない。もしそんな相手と出会っていたら、今頃ぼーっとせずに、夢を叶えるためにスポーツに励むなり、勉学に勤しむなりしているだろう。
彼には夢がない。将来の展望もない。
出会いについて、だらだらと思いついたことを並べる時間のある、ただの暇人だ。
悠真は上体を起こし、側にあるスマートフォンで時間を確認する。
午前十時七分。
昼飯を買いに行くには早いし、他になにかやることがあるわけでもない。
家には今自分しかいないので、話し相手すらいない。
遊びに誘える友達もいなければ、遊びに行く場所もないし、そんな気力さえもない。
喉が渇いたので一階のリビングに降りる。
リビングはいたって普通なものだ。
中央に大きなテーブルがあり、その前には液晶テレビ。テーブルの両サイドには椅子が四脚あり、家族全員分用意されているのが分かるが、今では最大で三席しか埋まらない。
その背後はキッチンだが、悠真の記憶では小学校の二年以降、キッチンで母の姿を見たことがない。
家のことは大抵七つ年の離れた姉がやってくれているのだ。
父母ともに仕事が忙しく、必ず年に四回は顔を見せてくれる父などはまだ良い方で、もう五年近く母の顔は見ていない。
父曰く海外を飛び回っているらしいが、仕事の詳細は聞いたことがないし、姉に聞いても適当にはぐらかされているので、あまり言及しないことにしたのだ。
そんな家族と呼べるかどうか怪しい四人が全員いれるテーブルの上に、一枚の手紙が置いてあった。
「……何だ、これ?」
白い封筒の隅に「天羽悠真様」と書かれているので、姉は悠真宛の手紙だと判断したらしい。
手紙を開くと、一番上に大きな文字で「招待状」と書かれてあり、全て読むのが億劫になりそうな長文が綴られていた。
うわぁ、と思いながら視線を下に落としていくと、一番下に判子の欄のような場所に丸い印鑑が押されている。
しかし、その印鑑に記されているのは名前じゃない。
模様だ。
中央に剣のような模様があり、その周りを円で囲まれ、かなり緻密な模様が描かれている。
「……何なんだ? 一体なんの悪戯だよ?」
今まで悪さなどしたことがないし、人に恨まれるようなことをした覚えもない。
こんな手の込んだ印鑑まで押して、誰が何のためにしたことなのだろう、と悠真の頭は混乱する。
「しかし、よく出来た模様だなあ……」
緻密な印鑑の模様を見つめながら思わず呟く。
それを手でそっとなぞった瞬間。
印鑑が銀色の光りを放つ。
「うおっ!? 眩しーー」
手紙から手が離れ、手紙は床に落ちる。それでも光りは放たれ続けており、悠真は顔を両手で覆っている。
「ーー契約の完了を、確認いたしました」
突如響いた少女の声。
それは聞いたこともない声だった。
やがて光りが収まり、悠真が手をどけると、信じられない光景が広がっていた。
目の前には片膝をついたままの、腰まで銀髪を伸ばした少女が、目を閉じたまま俯いている。
白を基調とした制服のような衣装に身を包み、赤いラインの入ったスカートの裾から伸びる足はブーツを履いている。
いきなり現れた彼女にも驚いたが、一番驚いたのは彼女が右手に持っているものだ。
剣だ。
銀色の鞘に納められた、西洋風の剣。鞘には印鑑と同じように緻密な模様が描かれている。
そして自分の足元にも、黒い鞘に納まった日本刀が転がっていた。
「……」
目の前の光景に絶句する悠真。
銀髪の少女は晴れ渡った青空のような色をした瞳で悠真を真っ直ぐ見つめる。
「出会い」に「運命」などはない。
必ずしも、良いにしろ悪いにしろなんらかの影響を与えるものだ。
ならば、
「……あなたは、天羽悠真で間違いありませんね?」
少女が、名乗っていないはずの悠真の名前を確認する。
頷く間もなく、いや頷く前に少女が優しく微笑み次の言葉を紡ぐ。
「あなたはクリーチャー・ゲームの参加者に選ばれました。私と一緒に戦ってくれますか?」
ならば。
この「出会い」は、一体どういう影響を与えるというのだろう。
良いものなのか、悪いものなのか。
それさえも想像がつかない。
Page:1
この掲示板は過去ログ化されています。