コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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いろは
日時: 2015/09/28 14:47
名前: すずめ (ID: 3NNM32wR)


はじめまして。

初めて此処で小説を書くすずめです。
「いろは」の後も続くかもしれないし、続かないかもしれません。
それに、あまり面白くない小説になってしまうかもしれませんが……。





主人公:雪 いろは / yuki iroha


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Re: いろは ( No.1 )
日時: 2015/10/11 22:34
名前: すずめ (ID: 3NNM32wR)



 今朝のトップニュースは異国に旅行に行った日本人女性二名が誘拐されたというものだった。
 「可哀想ー、旅行なんか行きたくないや。なんだっけ、身代金なんか言ってんでしょ?五億円だって……重そうだなー」妹のあさひが呟く。
 誘拐犯側は女性たちの命と引き換えに五億円を要求している。どうするんだろう、払うのかな……そんな事を考えつつ、いろはは服を着替える。
 「お母さんならどうする?」
 「勿論、五億円なんて出さないわ。二人の命より一億三千万人の生活のほうが大事よ」
 「もしうちとか、お姉ちゃんとかお父さんとかが人質でもそう言える?」
 言えないはずだ、自信満々な顔であさひは尋ねた。いろははため息をつく、あさひの予想以上に自分たちの母親は冷たく平等な人間だ。
 「ええ、勿論」
 あさひが凍り付くのに気づきつつ、いろはは何も言えない。何を言えばいいかなんてわからない、あさひが落ち着くのを待つだけ。
 「行ってきます」
 逃げるようにいろはは家を飛び出した。勿論誰も何も言わない、いつも。

 いろはの家は、雪家は昔からそうだった。母のしずかはいつもこう言っていた。———『私は誰にでも平等、家族も他人も同じに接する』。
 細かい事とか、屁理屈を除けば確かにその言葉通りだった。
 もし目の前に死にそうな人がいて、遠くでは家族が死にそうだったとして、どちらかを救えたとしても。母は前者を優先する。
 だから、それは当然のはずだ。当たり前だ、自分なんて優先していられない。いろははそう感じていた。
 だからこそ、いろはは家での自分の扱いに僅かながら不満を感じ始めていた。いろはは愛されていない、あさひ以上に、父以上に、他人以上に。
 
 「いろはー、おはよっ」
 友人の声でいろはは我に返る。友人、といっても二年間クラスが同じだった少女で、『友人』と言うべきなのかは分からない。ただ、下の名前で呼び捨てで、よく話しているというだけで、皆からはそう見えている。
 「おはよう、紗奈」
 ショートカットが似合うその友人は、どちらかと言えば目立たないほうだ。静かで、特別目立つ所は見つからないとよく言われている。
 「クラス、一緒になれるかな……一緒だといいね」
 「そうだね。他に誰がいるかな」
 そう言いながら、いろはは青く澄んだ空を見た。

Re: いろは ( No.2 )
日時: 2015/10/14 15:59
名前: すずめ (ID: 3NNM32wR)



 「あ、鷹野……」
 「ほんとだ。ねえ鷹、」
 声をかけようとした矢先、紗奈に口を手でふさがれる。(恐らく)初めての経験にとてつもない恐怖を感じて思わず強く振り払ってしまう。
 「ごめん、いろは。あたし……鷹野が好きだから。いろはと鷹野って仲良いし、……もしいろはが鷹野呼んじゃったらさ、二人だけで話すでしょ?」
 『好き』、最近よく聞くようになったその言葉にあまり親近感が持てず、いろははただただ、ぼうっとして頷いていた。
 紗奈がこうなっちゃうなんて、そんな気持ちもあった。自分だけ、『好き』をしれない、悔しい気持ちがあった。
 「いろは、着いたね」
 「六年だね」
 「うん」
 「鷹野一緒だといいな」
 六年生、小学校生活最後の年。心なしか、皆、感慨深げな顔で靴箱へ向かう。きっと紗奈も鷹野君も、そんな顔で向かうのだろう。
 「修学旅行とか、楽しみだね」
 「うちはとりあえず生八橋かなー、食べ物第一?」
 「あー、いろは食べるの好きだしね」
 笑いながら、でも少しだけいつもと違う表情で靴箱に向かう紗奈は、きらきらと輝いた目でクラス表を見つめていた。

 「鷹野もいろはも一緒だ!しかもあたし『田辺』だから近い!前後!」
 「良かったじゃん、おめでとー!」
 鷹野が一緒で喜んでいる紗奈は、今にもスキップしだしそうな勢いで教室に向かう。『好き』って楽しい事なのだろうか——いろははそう思った。
 「着いた着いた、六年一組!」
 紗奈はウキウキしながら教室に入り、席順表を見る。いろはもそれに続いて表を見た。隣には知らない人の名前、でもいい、一番後だし。
 さっそく座って用意をする——といっても何もないが。隣の席の『吉岡 禅樹』ってどんな人だろう。楽しみだ。


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