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*恋愛短編集* 私は今日前へ進む
日時: 2015/10/16 22:28
名前: ほしまち (ID: as61U3WB)

恋愛短編集です

誤字脱字等はお知らせください
よろしくお願いします


>>1 第1話* 3 文 字 * >>2 第2話 *WAIT*

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Re: *恋愛短編集* 私は今日前へ進む ( No.1 )
日時: 2015/10/15 19:45
名前: ほしまち (ID: as61U3WB)


第1話 * 3 文 字*

「こんちゃん一緒帰ろー」
「うん、ちょっと待って」
鞄を背負った友人が私の机の前にきた。
はやくはやく、と急かす友人の声に焦りながら私はなるべくゆっくり準備をする。

だって
「まつむらぁー」
少し低めの声に私の顔は自然とほころぶ。
私は平然を装い、振り返る。

「教科書、ありがと」
「うん」
「もう帰り?」
「うん、帰るよ」
「そっか、じゃあなー」
片手を上げて去っていく岸宮くんの後ろ姿に少し見とれる。
「ごめん、まいまい、おまたせ」
「ん、行こ」
通学鞄を肩にかけ、廊下へ出る。

その時もう一度、岸宮くんと目があった。

『 ば い ば い』

口パクでそう言われた。
私は思わずにやけてしまわないように下唇を噛んだ。

「ばいばい」
またね、っていえばよかった。

翌日、岸宮くんは交通事故で死んだ。

にわかに色ずいていた日常が愕然とモノトーンになる。
毎日同じことの繰り返し
ループ ループ ループ


岸宮くん、貴方は今何を想っていますか?

***
「それでは教科書59ページを開いてー」
先生の声にハッとする。
最近気づけばボーッとしている。

指定されたページで手を止めると、私の目がそれを捉えた。
荒っぽくて、アンバランスな、笑っちゃうようなそんな字。
この字を私は知っている。

そこに刻まれた3文字が涙で滲む。


『 す き だ』
ありがとう、岸宮くん。
私も好きでした。
さよなら、私の思い出


---------

松村 このみ MATSUMURA KONOMI

岸宮 蒼舞 KISHIMIYA SOHMA

Re: *恋愛短編集* 私は今日前へ進む ( No.2 )
日時: 2015/10/16 22:27
名前: ほしまち (ID: as61U3WB)


第2話 *WAIT*

「あおにいちゃんっ」
「んーどうした真由」
「まゆねぇ、大きくなったらあおにいちゃんのお嫁さんになるのっ」
「おー嬉しいな。ありがとな、真由」
「うんっ!」

小さい頃から家が隣同士で家族ぐるみで仲良くしていた3つ年上のあおにいちゃん。
彼のお嫁さんになることがわたしの小さい頃の夢だった。


------------

「真由ーおばあちゃんから届いた果物、葵くんちにおすそわけしてきてー」
「えー」
ベッドの上でくつろいでいたわたしは不満そうな声を出す。
「えーじゃないの、ほらいく!」
「そんなの、お母さんが行けばいいじゃん」
「いま手が離せないの」
「もー」

しぶしぶとわたしは立ち上がる。
(会いたくないのに…)

林檎や梨が数個入った紙袋を持って家を出る。
隣の家のインターフォンを押そうとすると、
「真由?」と聞き覚えのある声が聞こえた。

「あ、やっぱまゆじゃん。どうした?てか久しぶり」
いまわたしの目の前にはあいたくなかった人がいる。
「…あおにいちゃん。」
「わっりんご?うまそー」
「…はい。お母さんから。じゃ。」
紙袋を押し付けて踵を返して歩き出すと
「真由!」とまた呼び止められた。

「またな!」
「〜〜っ」
屈託のない笑顔でそう言われ、わたしはとっさに駆け出した。

家に入り、荒々しく部屋のドアを閉め、そのままドアにもたれてズルズルと座り込んだ。

(……ずるい。)
あおにいちゃんは、ずるい。
そうやってまたわたしを好きにさせる。

私があおにいちゃんを避けるようになったのは去年の今頃だった。
たまたま彼女と一緒にいるところを見てしまった。
その彼女は大人っぽくてガキな私とは違った。
悔しい、というより恥ずかしかった。
子供な自分自身を恥じ、あおにいちゃんをさけるようになった。

なのに、こうしてあおにいちゃんのことを少しでも欲しいと思ってしまう自分に腹がたつ。

「あぁもうだめだぁっ」
漫画が散らかったベッドにダイブする。

あなたに好きって伝えたい。
魔法使いに魔法をかけてもらうから、もう少し待って私にガラスの靴を履かせてね。


******

浦上 真由 URAGAMI MAYU

藤下 葵 FUJISHITA AOI


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