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- サムライの恋
- 日時: 2015/10/25 01:14
- 名前: キャッツアイ (ID: Z5cmkimI)
万年負けっぱなしの、気の弱い青年 坂本達也が、
有る事件にかかわっていくことで成長するお話。
達也には、好きな女の子 乙葉がいましたが、彼女は振り向いてくれません。
真剣に告白しても、受け取ってもらえず、悩んだ達也はある決断をしました。
--美女怪盗団のシリーズですが、ゲストキャラ達也目線ですすめます。
目次
1達也の回想>>01
2乙葉の思い>>02
3剣道試合>>03
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--1--
僕は昔から、弱虫だった。
小学校のころに、よくやんちゃな子たちにいじめられて、泣いて帰ってきたのを今でも覚えている。
小さい子どもというのは残酷で、うじうじしていた僕はすぐに、そういう子たちの餌食になっていた。
ノートに落書きされたり、持ち物がなくなったり。向うは集団でやってくるもんだから、遣り返そうにも返せない。ぼくはただ、よわよわしい声でやめてよ〜〜と抵抗するだけしかしなかった。
隣の家には同い年で、気の強い女の子が住んでいた。名前は乙葉ちゃん。かわいくてはきはきして、正義感の強い子だった。乙葉ちゃんは、いじめっ子たちのやり方が嫌いらしく、なんやかんやと僕をかばってくれるいい子だった。彼女は僕にいつも、しっかりしなさいよ、と怒っていた。僕が遣り返そうとしないのがきにいらないらしく、僕の事を守りつつも、がみがみ言ってくるので、僕にとっては、ありがたい、でもちょっとうっとおしいみたいな存在だった。
そんな僕でも、悔しいという感情はあった。なんとかして、いじめられない様になりたい、強くなりたい、と思っていた。それで、近所にあった寂れた剣道教室「千葉道場」の看板をみつけたとき、それが僕の目には救世主のように映った。
剣道を教えていたのは白いひげを生やした、よぼよぼのおじいさん。教わる生徒は4にんぽっち。人気のない教室だったのが帰って僕にはよかったのかもしれない。僕はそこで、いじめられることもなく、黙々と竹刀を振り回す毎日を送った。
そんなこんなできがつくと中学生になっていた。
中学になってもやっぱり僕はいじめられ、剣道の腕前を披露する機会なんてものはなかったが、道場という居場所があったことで、暗くならずに毎日過ごしていた。剣道の部活にも入って、僕の実力はそこそこなレベルにまで達していたはずだった。
ところが僕は、勝負事が弱かった。どうも、人と争ったり競うという事が出来ない性格らしく、剣道の試合では哀しい結果しか出なかった。
僕は実力が格下の相手に、どうしても負けてしまうのだ。
千葉道場の師匠のじいちゃんはいつも言っていた。
「達也は、気迫がないんだよ。勝ちたいって言うのが一切伝わって来ない。それに、内面からにじみ出る弱弱しさがある。相手に付け込まれていつも負けるんだよ。」
剣道部の顧問の先生も言った。
「坂本の剣道は、筋が良い。形も良いし力もある。ただ一つ、心が悪い。」
それで、僕は中学時代もぱっとしない生徒として過ごした。
高校、大学と進むたび、剣道はやめずに続けていた。ある程度の試合には勝てるようになっていたが、やはり、実力が格下で、気迫のある相手には負けていた。こう負け続けると、もうあまり試合の勝ち負けにもこだわらなくなっていた。剣道は趣味だった。
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- Re: サムライの恋 ( No.1 )
- 日時: 2015/10/25 01:19
- 名前: キャッツアイ (ID: Z5cmkimI)
相変わらず隣の家に住んでいた乙葉ちゃんは、ぼくにがみがみと文句を言っていた。彼女はそのしっかりした性格を最大限生かして、いきいきした理想的な大学生活を送っていた。
「また負けた?達也は強いのに。それでも男?悔しくないの?」
僕が剣道の試合に負けて帰ってくると、乙葉ちゃんは僕の代わりに僕以上に悔しがった。そしてお説教が始まる。この説教がまた長くて嫌だった。期待してくれているのはうれしいが、そんなこといわれても勝てないものは勝てないんだ。乙葉ちゃんとの関係は小さいころからずっとずっとこんな調子だったが、そうやって僕を見守ってくれている乙葉ちゃんを僕はいつの間にか好きになっていた。
就職活動の時期になり、僕は進路に悩む事となった。僕の大学は特にこれといって特徴のない下流の大学。周りのやつらは地方の会社に次々就職を決めていった。僕は正直自信がなかった。剣道しかとりえはないが、今の時代はコミュニケーション力がもてはやされていて必須条件だろう。万年いじめられっこの僕が戦力になれる会社なんてあるのだろうか。今が明治時代ならよかったなあ。そんな現実逃避をしていても、時間はどんどん過ぎていく。僕は灰色の毎日を過ごしていた。
僕の県には良い図書館があった。大型書店とコラボした県立図書館で中でコーヒーまで飲める。図書館にしては異例のファンがいて県外からわざわざ車でやってくる人たちまでいるのだ。
最近の僕の居場所は、その図書館だった。
履歴書を書いたり自己PRを考えたりして図書館に居座る。
その図書館に、あるかわいらしい小さい女の人がよく来るようになった。可愛いと言っても、年齢は30くらい。身長が小さくて、黒くて長い髪の毛。大人の女性だけど、童顔なので幼く見えるのだ。彼女は図書館に来ると、朝から晩までずっと調べ物をしている。頭のよさそうな人だった。本の内容をちらっと盗み見した事があった。「全国会社概要」「銃器取扱について」「自衛隊の仕事」何をしらべているのだろう。ちょっと危ない人かな。僕はそう思った。
ときどき、彼女に連れがいる事があった。背の高い美女で、見るからに体育会系。すらっとしたショートヘアの彼女と並ぶと、本の彼女はますます小さく見えてしまう。
ぼくは謎の美女たちを目の保養にしながら自分のエントリーシートを書き続ける毎日を送っていた。
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