コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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アオゾラペダル
日時: 2015/11/29 13:09
名前: 逢逶 (ID: KG6j5ysh)

どうも、


逢逶(あい)です。

未完成小説多数有。
私が書き進めてきたGimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~の終わりが見えてきましたので新しい作品に着手します。
ちなみに今作はGimmick Game ~僕たちの歯車を狂わせたのは君~を読んでいただければ内容がわかりやすいかと…。

読んでくだされば嬉しいです。


*First Season EPISODE*
~ENTER the MAZE~
episode0 >>3
episode1 >>4
episode2 >>5
episode3 >>6
episode4 >>7
episode5 >>8
episode6 >>9
episode7 >>10
episode8 >>11
episode9 >>12

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Re: アオゾラペダル ( No.3 )
日時: 2015/11/16 21:24
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode0


「ちょっと可愛いからって生意気なんだけど」



そう言われていじめられてきた私。



そんな私に父は言う。

「学校変えようか?」

「…」

母は言う。

「逆境でも咲きなさい」

「…」







「あなたは夏に咲くかすみ草なんだから」

Re: アオゾラペダル ( No.4 )
日時: 2015/11/16 21:25
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode1
title 日常

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」


お父さんはお母さんの額にキスをして家を出た。

私のお父さんは芸能人。


アイドルグループのリーダーで一世を風靡した。
今はタレント活動が主な仕事。
もう40のおじさん。


お母さんはそんなお父さんと壮大な恋をしたそうで…、詳しくは話してくれないんだけれど。


正直言うと、家での二人のスキンシップは激しすぎると思う。
キスは何度もするし、ずっとくっついている。

そんな家庭だけど恋に全く興味がない。



「夏純!そろそろ行かなきゃ!準備して!」



「はーい。ほら、こうとはるも」

「「はぁい」」

〝こう〟と〝はる〟は只今三歳で双子。
向葵(こうき)、日葵(はるき)って名前。
向日葵から取ったらしい。
私もそうだけど両親は子どもに日本の花の名前を付けたいみたい。
お母さんが花の名前でお父さんの名前が日本って意味だからだと思う。




お母さんが弟たちを車に乗せたら、私は自転車に乗る。

「行ってきまぁす」

「行ってらっしゃい!今日は何時になるの?」

「六時半には帰るから」


私は自転車を漕ぎ出す。
中学校に向けて。




風が心地よく通り抜ける。

ペダルを漕ぐスピードも上がって。




調子が出てきた頃に学校に着く。
もう少し学校と家が遠かったら良いのに。






描きたい風景が溢れている。

Re: アオゾラペダル ( No.5 )
日時: 2015/11/16 21:25
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode2
title 美術部


前は学校が大嫌いだった。
友達と言える存在はいないし、何よりじめっとした空気が大嫌いだった。
顔色を伺うつもりは全くなかった。
だから自分らしく突っ走ってきた。


そしたら、私をわかってくれる人ができた。



海崎中学校美術部には私の仲間がいる。


学校に楽しさを見出した時、全て世界が変わった。





そして私は落ちてゆく。





しゃっ、と鉛筆を滑らせる音が響く。
暑くて辛い授業を乗り切り、部活の時間がやってきた。


三学年合わせて二十人部員がいる。
海崎中学校は言わゆる美術の名門校。
絵画展に応募すれば何人も賞をとってくる。
全国規模のポスター展だって毎年必ず誰かが大臣賞やら金賞やら持ち帰る。

勿論、美術部に入りたくてこの学校に入る人は沢山いる。
入学は許されるても、この学校には一つの部活に二十人しか入れないと言う決まりがあるため例年入部希望者が規定をゆうに超えてくるこの部活では入部テストが行われる。
その内容は三つある。
総テスト。記入問題で芸術に関する問題が出題される。
実力テスト。一枚水彩画を仕上げ出来を判断される。
想像力テスト。お題を受け取り時間内に自由に絵を描く。


私は、トップで美術部に入った。



とても嬉しかった。


実際、実力が証明されるように数々の賞をとって来た。
絵を描くことが好きで好きで好きで…。


今、とても幸せだ。




「夏純ちゃん」


「はい、何ですか?」


橘川先輩はふわふわしてるけど美術部では現在No.1の実力を誇る絶対的存在。
絵を描く時の表情がかっこ良くて。

本当に尊敬できる先輩。



「あのねぇ、今回の夏純ちゃんの絵、ここの色浮いてない?」


指さされたそこは、私から見ると別におかしくはなかった。


「…そうですかね?」

「うん、今はわからないだろうけど色を重ねたらおかしくなると思う」




私は腑に落ちなかったけどとりあえず色を変えてみた。



出来上がった作品はとても綺麗だった。
特に先輩に指導されたところが。



帰りは六時をとっくにまわって外は暗くなっていた。





今日はとても良い気分…



…とはなれなかった。

Re: アオゾラペダル ( No.6 )
日時: 2015/11/16 21:26
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode3
title 出会い

帰りが遅くなってしまい、お母さんにこっぴどく怒られた。

こうとはるが私にぎゅっと抱きついて必死に慰めようとしてくれた。
可愛い。


私はそっと二人の頭を撫でて大丈夫、と呟く。

遅くなったのは私が悪い。



夕飯はオムライス。
なんでも、お母さんの大事な人に教わった味なんだそう。
それが誰かは教えてはくれないけれど。


食卓の椅子に座って手を合わせる。
気まずくて小さな声でいただきます、と言った。

美味しい。


「ねぇ、美味しいねぇ?」

こうが言う。

「うん」

「おねちゃ、おむらいしゅ好き?」

「うん、好きだよ」


こうは私を〝ねぇ〟と呼ぶ。
はるは私を〝おねちゃ〟と呼ぶ。
これはなんでかわからない。



その日はちょっと憂鬱なまま終わった。




ぴぴぴぴっ、


目覚ましを止めて、リビングに向かう。
私の部屋は二階にあって、階段でふらつく。
小さい頃に転げ落ちたこともある。



階段をおりて、食卓につく。
用意してあるトーストを食べた。
お母さんはこうとはるを起こしに行った。
今日、お父さんは久しぶりの休み。
家でずっと寝ているんだろう。


洗面所で歯を磨き、顔を洗う。
冷たい。
やっと目が冴えてきた。


今日は学校に早く行って絵を描こう。


納得いく絵を描こう。



部屋でばばっと制服を着て、勢い良く階段を降りると
お母さんが行ってらっしゃい、とにこやかに言ったから照れながらも行ってきます、と言った。


自転車にまたがり、学校までとばす。



心地よい空気。
都会の汚い空気のはずなのに。

都会で生まれて都会で育って…、やっぱり感覚が鈍っているのだろうか。



自転車小屋に自転車をとめて、学校まで急いだ。
一番乗り。

この時間は先生もまだ二三人しかいない。




「おはようございます」

「あ、おはよう!早いなぁ。今日も描くのか?」

「はい」



先生から美術室の鍵を受け取り、三階の美術室まで走った。




鍵を開けてがらっと扉を開けた。








「誰?」



つい尋ねた。




見たことのない男の子がそこにはいた。

Re: アオゾラペダル ( No.7 )
日時: 2015/11/16 21:28
名前: 逢逶 (ID: 9AGFDH0G)

episode4
title 麻痺

「誰…?」

背は低め。
茶色く明るい髪に真っ白な肌。
女の子のような顔立ち。

私はその子に警戒しながらも尋ねた。

「…レイ」

「…何してるの?」


「学校見学。おれ、転入してきたんだ」

「何年生?」

「一年だけど」


「ふーん」


同学年かぁ。
もしかしたら同じクラスかも…?



ん?


一つ引っかかる。
鍵は無かったのにどうやってこの教室に入った…?
私が顔を凝視していると、レイはあぁ、と笑って鍵を指差した。
頷くと、

「窓から入ってきた」

と言った。
窓からって…、美術室は三階なんですけど。

「…どうやって?」

「さぁ?」




この人…、変人…?


はっ、と用事を思い出し棚からスケッチブックを取り出し、鉛筆を持った。
レイのことなんてどうでもいい。
無視しよう。

出来るだけいつも通りで。



描きたいものは沢山あるはずなのに…。
出てこない。


今まで一度も無かった感覚。
全身が麻痺したような…。



「…なに、これ」

私の声はレイには届いていなかったようで、



「へぇ、絵描くんだ?」


私の近くまで来て、スケッチブックを覗き込むレイ。



手も固まったように動かない。
今まではスラスラと描けていた。

それなりに自信はあるし、賞だってもらって来た。
顧問の先生にだって評価してもらっていたし、部員からも信頼されていた。


…絵が描けるから。


私が絵を描けなくなったら、みんな離れて行くだろう。





〝ちょっと可愛いからって調子乗るな!この無能が!〟




いつかの声が響く。





描かなければならない。
そう思うと今まで自由だった身体が一気に鎖で巻かれ、不自由になってしまった。
〝無能〟



私はスケッチブックと鉛筆を投げ捨てて美術室を飛び出した。


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