コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 鏡に映るは、毒りんご。
- 日時: 2015/10/21 09:51
- 名前: Alice. (ID: 0a987INq)
——あの「毒りんご」、とっても美味しかったのになあ。
小説開始日:2015.10.21
小説終了日:
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- Re: 鏡に映るは、毒りんご。 ( No.1 )
- 日時: 2015/10/21 10:09
- 名前: Alice. (ID: 0a987INq)
♯、ご挨拶
皆様、初めまして、Alice.と申すものです!
何とも変なタイトルですが、是非お付き合い下さいませ。
作者は純愛が書けない物であり、胸キュン補充は難しいです(汗)
それでもいい、という優しい方はどうぞ宜しくお願いします!
♯、注意事項
度々でありますが、「嫉妬心」「貪欲」などの言葉が使われます。
最後はハッピーエンドにする予定ですが、暗い場面も十分にあります。
ですが精一杯頑張らせて頂きますので、宜しくお願いしますね!
荒らしなどは来たとしても、無視させて頂きます。
♯、あらすじ
愛するひとがいると、この世界は違って見える。
愛するひとがいれば、どんな事でも楽しく変わる。
同じ高校に通う四人の生徒は、それぞれ「愛するひと」がいた。
お互いに愛し合い、幸せな筈だった。
四人が出会ったその瞬間から、運命は廻りだした。
- Re: 鏡に映るは、毒りんご。 ( No.2 )
- 日時: 2015/10/21 23:03
- 名前: Alice. (ID: 0a987INq)
♯001 【 紡がれた掌 】
甲高い悲鳴のような高いアラーム音が、夢から私を引きずり出した。
目を開けずに目覚まし時計を押さえ、ゆっくりと起き上がった。
私は——水瀬 琴乃(みなせ ことの)。
今日から海鳴(kaimei)高校に通い始める、16歳だ。
やっと高校生かあ、なんて考えながらリビングへと降りていく。
焦げ茶色の扉を押すと、見慣れた姿がそこにあった。
「おはよ、真琴(まこと)」
「あ、お姉ちゃん、ご飯できてるよ」
青いチェック柄のエプロンを身にまとい、優しく微笑んだ彼。
私の弟で、水瀬 真琴(みなせ まこと)だ。
若干の癖がついていて、風が吹くと綺麗に靡くさらさらの甘栗色の髪。
まるで女の子のように垂れた瞳に、お人形のように高い鼻筋。
一目見ると本当に女の子にしか見えないし、羨ましい容姿だ。
名前だって私よりも良い名前だし、姉としては中々不憫だと思う。
「ご馳走様、行ってきます」
「はあーい、行ってらっしゃーい」
ご飯を食べ終えるとさっさと着替えて、逃げるように家を出た。
真琴は家事も何でもこなせるし、本当に私とは正反対。
私たちの両親は海外で仕事をしていて、一カ月に一度祖父母が来る。
だが祖父母も体が弱くなり、最近はあまり来てくれていない。
茶色の革の鞄を肩に掛け、鞄の中から水色の手鏡を取り出した。
鏡に映るのは、まるで残念な私の顔。
チョコレート色の背中まで伸びた長い髪に、日光を避け続けた白い肌。
真琴に少しだけ似ている、二重瞼の瞳の下には高くも低くもない鼻筋。
唇は桜色に軽く色づき、身長はこの歳の平均的な身長だ。
でももっと伸ばしたくて、毎朝コップ一杯牛乳を飲んでいる。
「おはよー、琴乃」
「わ……っ! おは、よっ、秋(あき)」
「はは、ビビりすぎだろ」
「だって、急に来るんだもん!」
一瞬の間に、私の視界に入り込んできた彼。
きらきらと世界を巡る、朝陽がその影を大きく包み込む。
このひとは、私の彼氏。
去年から付き合い始めていて、名前は——紺月 秋(こんづき あき)。
絹のように艶やかな黒髪が特徴的で、クールな流し目が知的な印象だ。
でも話してみると気さくで、思いやりがあって。
私にはまるで釣り合わない位の、遠い世界にいる「筈」のひと。
なのに彼は私を好きになってくれて、いつでも隣にいてくれるんだ。
「そういえば、今日数学のテストじゃん……」
「俺、完璧だから余裕っ」
「えっ、何なの抜け駆けーっ!?」
「勉強しねー方が悪いんだろっ、ははっ」
頭に置かれた大きな掌を見ていると、その手は下へ降りてきた。
地面へと向かってぶら下がっていた私の掌とを握り合わせ、微笑む。
お互いの掌とを伝い合わせて繋がる体温が、顔を赤く染めさせる。
こんな風に差し出される掌を握ることが、私の一番の幸せなのだろう。
灰色のコンクリート造りの歩道を、並んで歩き出す。
道のわきに植えられている桜の木々を見つめていると、口角が緩んだ。
隣を不意に見てみると、ばっちりと秋と目線がぶつかり合った。
どちらからともなく目線を外し、地面へと視線をずらして俯いた。
(——好き、だなあ)
何も言わなくたって、伝わってくる気持ち。
どきどき心臓が煩く鳴り響いて、相手に伝わってないか心配になる。
もしかしたら飽きられてるかも、とか。
こんなに大好きなのは私だけなの、とか少し嫉妬してしまったり。
きっと「初恋」はこういうことを言うんだ。
さっきよりも強く、私よりも大きな秋の掌を握り返した。
- Re: 鏡に映るは、毒りんご。 ( No.3 )
- 日時: 2015/10/22 13:10
- 名前: Alice. (ID: 0a987INq)
♯002 【 しあわせの形 】
秋と並びながら歩いていると、通り過ぎるひとからの視線が痛い。
もう中学の頃の事だから慣れたけど、やっぱり胸が痛くなる。
どうやっても私たちは釣り合わないし、皆分かっている筈。
なのに秋はずっと隣にいてくれるし、それは本当にしあわせな事だ。
「……あっ、私たちクラス同じだ!」
「っしゃー、また宜しくなっ」
軽く秋はガッツポーズをして、自分の鞄を肩に掛け直した。
そしてまた二人で同じ教室へと歩き出して、校舎へと入っていった。
古い木目の廊下を歩いていくと、余計に視線が集まっていく。
でも、そんなことには気づきもせずに私を見ては微笑む秋。
一年の教室がある所まで行くと、「1−B」と書かれた札がある。
重苦しい焦げ茶の扉を両手で押すと、がらりと音を立てて扉が開いた。
緑の黒板に書かれた席順通りに座って、手に持っていた鞄を下ろす。
秋は私より少し離れた席に座っていて、もう近くのひとと喋っていた。
こういうところも、まるで私とは違うところだ。
人見知りで面倒事が嫌いな自分と、人付合いが得意でリーダー格の秋。
「はい、皆さん席に着いて」
こんな夢のないことを考えている私の頭を、先生の言葉が遮った。
教室の向こうの方から、秋と知らない人たちの話し声が聞こえてきた。
別に仕方の無いことな筈なのに、胸の奥では嫌だと思ってしまう私。
秋と離れているときの、自分が一番大嫌いだ。
入学式が終わって、新入生の下校時刻になった。
先程配られた教科書やノートを鞄に入れて、私は席を立った。
私よりも先に教室を出た秋は、私を見つけて自分の右手を振った。
早足で彼の元へと行き、また並んで歩き出す。
朝歩いてきた道を、また繰り戻るかのように二つの影が揺れ動いた。
その影は離れたり傍に寄ったり、そんなのをくり返す。
「——……琴乃」
「なに、——!?」
髪を撫でるようにして頭を引き寄せて、顔がぐっと近づいた。
道路に移った影が重なり合って、そして離れた。
初めて捧げたものは、想像したよりも何だか不思議で。
秋は少し顔を赤らめながら微笑んで、また私の手を握った。
彼の鈍感さは、良く理解しているつもりでいたけれど。
こんなときぐらい、「好き」って言ってくれたらなあ、なんて。
これが我儘なことだとしても、望んでしまう。
本当に好きって思ってくれているのなら、たった一言なのに、って。
告白したのも私からだし、そのときでさえ秋は言わなかった。
こういうことが苦手なひとだとは知ってるけど、やっぱり変な気持ち。
「好き、だよ」
「……ん、」
その次の言葉は、秋から出なかった。
本当に好き同士な筈だけど、やっぱり、「筈」なんだ。
秋は多分、私がなんて言って欲しいか分かっていない。
きっと、分かろうともしていないんだろう。
自分よりも大きな秋の影を見つめていたけど、視線を空へ動かした。
胸の奥がぎりぎりと音を立てて、犇めいた。
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