コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- うすらいの
- 日時: 2015/11/08 20:31
- 名前: ハル (ID: zh8UTKy1)
本当に気まぐれで立ててみました。恋愛物です。
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- Re: うすらいの ( No.1 )
- 日時: 2015/11/08 20:25
- 名前: ハル (ID: zh8UTKy1)
「_____ぁ・・・・・・ぁ・・・・・・・・」
「___てことで、もういい?俺さ、委員会の集まりあるし。今までまあ、ありがと。迷惑かけてごめんね」
__それじゃ。 とだけ言って、パーマのかかった焦げ茶色の髪を10月のうすら寒い風になびかせながら、彼は去っていった。
西野直人。ついさっきまでの5日間、私と恋人同士だった男だ。
告白してきたのはアッチ。別れようと言ったのもアッチ。
しかし、その原因を作ったのは全て私。
彼がハッキリと伝えてきたわけではないが、そう思っていることは充分わかっていたし、なにしろ私自身もそんなことだろうと思っているのだ。
ハア。 周囲に誰もいないことを確認してから、わかりやすく大きなため息をついてみると、案外すっきりすることに気付いた。
___私の時間は、普通の人と流れ方がちがう。
もちろん「 実は人間じゃないの 」だとか「 時間軸を操って・・・ 」だとかSF系の意味ではなくて、なんだか人よりもやたらとゆっくりおっとりしているのだ。
歩く速度や文字を書く速度は普通の人と同じレベルでできるのだけれど、喋りがダメ。全くダメ。
考えて何か紡ぎだそうとする間に、もう相手が飽きている。
なんだよ、何も返事する気ないのか?つまんないやつ。そう思われて、もう終わる。西野もそうだった。付き合っている間、一緒に弁当を食べたりしたが、西野の言った冗談の意味を考えてクスッと笑うまでの間には既に西野は気まずそうに次の話題を振り出しており、今の面白くなかったか、と申し訳なさそうにする西野につられて私も申し訳なく思っていた。
・・・悪い人ではなかった。別れ際こそ委員会を理由にぱきぱき切り上げようとする最悪な展開だったが、普段は帰り道も送ってくれたし、一生懸命話題を考えてくれたりと、なかなかジェントルマンな男だった。
5日間。もったほうだ。
ふぅう。 気分を落ち着かせるようにもう一つだけ息を吐き出したところで、私は体育館の裏にあるうさぎ小屋へと向かった。
「ち〜びたっ」
レタスの葉をひらひらさせ、去年の飼育委員長がつけたよくありがちなその名前でうさぎを呼ぶ。
ぴょんぴょん駆け寄ってくるちびたの毛並みの良いおでこを撫でていると、午後の授業始まりのベルが鳴った。
・・・あ〜あ、やっちゃった・・・。
いろいろなことが重なって、その最悪さについに首をうなだれる。
今頃教室へ戻ったら、何をしていたか教科担任に聞かれる、が、「うさぎ小屋で遊んでました」なんて言ったらボッチ丸出しのただの痛い子だ。ただでさえクラスメイトとコミュニケーションが取れていないのに、これ以上悪い印象は与えられない。
私に与えられた選択肢は最早一つだった。
「ちびた。私のズル休みに付き合ってね」
- Re: うすらいの ( No.2 )
- 日時: 2015/11/08 23:13
- 名前: ハル (ID: zh8UTKy1)
気づいたら隣にいた。
それだけで驚くべきことなのに、なぜ私がこんなにもショックを受けているのかというと、よりにもよってその人の髪の毛が銀色一色だったから、なのだ。
どうしよう。果てしなく恐い。なぜ隣にすわっているの?いつからいたの?なぜそんな派手な色なの?一瞬止まっていた思考がやっと動き出し、混乱する頭でどうしようどうしようと考えていると、彼がこう言いだすものだから、思わず心臓が飛び跳ねた。
「食べないよ」
「・・・・・・・ぇっ・・・・・・・?」
た、食べない・・・?って?
「______・・・取って食ったりしない」
あ、私が怖がってると思ったからか・・・。
コクリとうなずくと、銀色の髪がふわりと揺れ、彼はちびたを撫でてほほ笑んだ。
うさぎ、好きなのかな。
ちびたはしばらくウットリと撫でられていたが、ほどなくして小屋の中へ走って行ってしまった。
・・・あ、寂しそう。よく見るとこの人、表情がすごくわかりやすい。
ちびたの丸い尻尾を寂しそうに見つめる彼に、私はレタスを差し出してみた。
「 ・・・・あの・・・・・、ちびたって名前です。・・・・・・これ、あげてみて」
細くてごつごつな手が、レタスを受け取る。
ひらひらさせるとちびたが寄ってきて、しゃりしゃりいい音を立てて食べ始めた。
・・・あ、嬉しそう。
口元が緩んでいる。きりっとした目も優しげに垂れていて、思わずじっと見てしまっていた。
___そういえば、この人、さっきからあまり話しかけてこない。
___そういえば、私のはなし、最後まで聞いてくれた。
なんだか、いつもと違う感じ。まるで時間がゆっくりと流れていくような。
「・・・・・・・あの」
「_____なに?」
「・・・・ぁ・・・・授業は?・・・・・・いいの?」
彼はしばらく考えるようにちびたのおでこを撫で、ゆっくりと口を開いた。
「 あんたは?」
え?私?私はただの・・・・うう、いいづらい。
「・・・・・・・ずる休み。」
彼はまたしばらく考えるようにして、「じゃあ俺も」とだけ言ってほほ笑んだ。
じゃあ俺もって?!
よく見るとスクールバッグを持っていて、さっき登校したばかりなのだと伺えた。ネクタイは私と同じ紺色。同じ高校の、同じ1年生。銀色の髪の人がいたなんて、なんで今まで気づかなかったんだろう。
疑問はたくさんある。意外と話しかけやすい人だと分かった。
しかしそのあとの展開はいつも通り。何を言おうか考えているうちに、5時間目終わりのベルが鳴った。
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