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金‐GON‐
日時: 2015/11/14 17:37
名前: 李夕 (ID: .HplywZJ)

こんにちわ、李夕(りゅう)です。
更新はまばらになるかも知れませんが、宜しくお願いします。
素直な感想等、コメント頂ければ幸いです。

ジャンル:ファンタジー
あらすじ
 この世には『獣の使い』と呼ばれる人間がいた。彼らには妖が視える。生まれつきというわけでもない、遺伝でもない。それは、突発的なものだった。
 高校二年生になった海野。家族とは別居、友達はまちまち。何もないつまらない人生を生きる中、ある日突然金とであった。仲間と協力することを知り、人を信じることを知り、心を許すことを知っていく。時に恋をし、時に笑い、そうして生きることを知る。しかし、最悪の日は唐突だった。海野が出す決断。それが導く結果。
 偏見を持つ人間と、芯を持つ強い人間の対立を描く。

「呪われた子。ああ・・・怖いこわい。」

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金‐GON‐【序章〜昔話は永久に〜】 ( No.1 )
日時: 2015/11/15 14:03
名前: 李夕 (ID: AqWSY.Le)

序章〜昔話は永久に〜

昔々、一匹の狐がおりました。
その姿は至って平凡で愛嬌があり、
その声は人々へ安心を与え、
その目は何年もの人間世界の移り変わりを見てきた、

化け物でした。

ある日、村で火事が起きました。
日々食べ物を貰っていた狐は、人里へ様子を見に降りていきました。
しかし。

狐が目を覚ますと、そこには多くの人の死体が転がっておりました。
そして、ひとりの子供がこういったのです。

呪いの獣——。

化け物は森へ逃げました。
奥の奥の森の奥へと・・・・。

また狐が目を覚ますと、そこは暗闇でした。
そして、どこかからこんな声が聞こえてきたのです。

「もはやお前はヒトには見えぬ。
 お前はあの火事でヒトを助けるどころか大半を殺した。
 お前がするべきことはただひとつ。その罪を償え。
 そのために、まずはひとりの子供に仕えよ。
 そうして、そやつの人生を支え、死ぬまで付き添えよ。
 そうしてお前は、また
元ノ姿二戻ルコトガデキルデアロウ・・・。」

狐はまた人里へ降りた。見えない視線に怯えながら、
彼はひとりの子供を見つけた。

その名は———。

金‐GON‐【第一話 獣の使い】 ( No.2 )
日時: 2015/11/15 17:32
名前: 李夕 (ID: ZztdwSOl)

第一話 獣の使い

「アマノ。」

まだ肌寒い風が吹きぬけ、太陽の光が暖かい春の朝。絶好の新学期日和の今日、彼はベッドの上で寝ている男をゆすった。橘 海野(あまの)。のんびりとしている海野に呆れ、彼はリビングへと戻った。食卓にはゆげの昇るあたたかい朝食。この匂いは確かに海野の部屋にも届いているはずなのだが。おもむろに海野の居る二階を見上げる。それに答えるかのように、部屋のドアが勢いよく開く音がした。

「起こせよ、金。」
「起こしたさ、ついさっき。」

機嫌の悪い海野の目の前に、味噌汁とコーヒーを置いた。手を合わせて食べ始める海野を尻目に、彼は空を見上げた。雲が足早に駆けていくのがよくわかった。それに比べて、海野はゆっくり汁をすすった。
時計の長針が十二を指す頃、ようやく海野は家を出て行った。しかし、海野が学校に通えたことは十回とあっただろうか。晴れの日、雨の日、曇の日、雪の日。いつの日だって海野が学校に無事に着いたことはない。その故もまた、面倒ごとであった。

「・・・またか。凝りねえな、政府も。」

海野の通う桜ヶ丘学園には、「異人」と呼ばれる人が集まっている。それは、昔話が元となっていた。今や、その「異人」たちは「獣使」と呼ばれるようになり、世の中はその人らを忌み嫌った。そして、政府は「獣使」を理解し認める『誠獣使側』と、批判し追放しようとする『反獣使側』に別れるようになった。さらに、『反獣使側』には「獣使」追放を実現化するために、獣使殲滅部隊が置かれ、今では1グループを10人程度とする0〜二百番隊が作られた。
桜ヶ丘学園では、その殲滅部隊から身を守るため、週に3回の頻度で護身術の授業が行われる。海野は学年トップの成績を修め、教師からの信頼も厚い。

「ったく、俺の親父お前らより上だぞ。・・・あんまり口にしたくないけど。」

何をしようにも行動は早い方がいい。それが海野の口癖だ。当然のように相手を素早く追い返し、ため息をついた。あたりを見回し、彼の名前を呼んでみるも反応はない。どうやらまだ家に居るらしい。海野は静かに足を前に進めようとした。しかし、油断大敵とはこういうことなのだろう。後ろからの気配に気付かなかった。何者かによるほんのちょっとの攻撃に対応することができなかった海野は、みねうちを受け、そのまま気を失った。
目を覚ましても、身動きは取れなかった。両手は鎖で吊られ、しかもあたりは薄暗い。鎖の重々しい音に反応するかのように、声が響いた。

「お目覚めデスか?橘海野クン。」
「・・・随分と手荒なお迎えをどうも。」
「ボクだってあんなことしたくはなかったデスよ。でも命令なら従うしかないじゃないデスか。ねえ?副隊長。」

そこに立っていたのは橘三郎。天の海野だった。獣使殲滅部隊の0番隊副隊長を務める殲滅部隊司令官でもある。そんな人間がなぜ海野の前に姿を現したのか。そんな疑問を抱く前に、海野の脳内は至って落ち着いていた。そして笑みをこぼした。

「何の用ですか。こんな手荒にお出迎えして。」
「・・・。新垣。外してやってくれ。」
「外しちゃっていいんデスか?」
「どうせ逃げない。」

アラガキと呼ばれた男は、海野の手から鎖を外し、そのままその場を後にした。「ごゆっくり」。そういい残して。
海野とその家族は別居状態。そんな中二人で会うことなどこれまでに一回となかった。
何が起こるのか。そんな誰も話さない時間が二人の間を通った。そして、その空気を壊したのは、父の一言だった。「すまない」そういって父は顔を下に落とした。海野はただ一言を突きつけた。

「何ですか、今さら。何がすまないんですか。」
「・・・母さんが、死んだ。」
「・・・・・・は?」

父の話によれば、母も同じく獣使だったのだ。せめて弟が小学校を卒業するまで。そう思って隠していた。夫である父にさえも。
海野の表情は一気に強張った。怒りと悲しみに満ち溢れたその顔は、一層父親を責めるものだった。海野の母親は唯一家族で優しい存在だった。家族が海野のことを追い出そうとしている中、母だけが反対していたわけが、海野にはようやく理解できた。何があっても、いつも腕を広げて自分を抱きかかえてくれた。いつも本を読んでくれた。いつもそばに居てくれた。海野の毎日は、母親によって守られていた。そのせいか、海野の怒りと悲しみは誰よりも大きい。

「・・・それで。姉さんたちはなんて言ってるんですか。まさかとは思いますが、母さんのことさえも、俺と同じように言ったりはしてないですよね。」
「ああ。だが、知ったときはさすがにショックだったようだ。お前たちにとってはたった一人の母親だからな。そこでだ。あいつは、お前にまた戻ってきて欲しいと、そういっていた。」

ああ、自分勝手とはこういうことを言うんだ。
絶望、呆れ、怒り、悲しみ。すべてが海野の頭の中で目まぐるしく回り始めた。涙も出ない。嬉しくもない。ただただ、悔しいばかり。そうして、昔姉に言われた言葉を思い出した。

「どうせ何もできない卑しい奴に過ぎない」

海野は姉が嫌いだ。何事もすぐ決断を急ぐ。
そうして海野は家を追い出された。海野にとって姉は悪魔であり、敵。会うどころか、見たくもない。
さまざまな思いが海野を支配する。

「帰らないですよ。勝手すぎます。」
「・・・そうだな。勝手だな。」

ずっと下を向いていた天の顔が、やっと父親のほうを見た。何も考えない、それだけを思った無表情。勝手な言葉を踏み台にするかのように、海野は父に向って話しかけた。

「・・・。父さんは、副隊長の位でしたっけ?それって、部隊全部に命令ってだせるんですか?」

父親は、それに答えるのを少し迷ったかのように返事をした。
できないことはない。
それが、何を意味するのか。海野には関係ない。この後に発する自分の言葉で、父が位を降ろされようと、何をされようと。自分には一切関係がない。そう思うと、気持ちは軽くなった気もした。

天はほんのりと微笑み、そして、こう口を動かした。

「じゃあ、彼らに伝言をお願いします。獣使殲滅部隊の隊員全員に、ね。」


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