コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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不思議君の菓子折りライフ
日時: 2015/11/21 17:38
名前: 五色月ゆーま (ID: qSKICFXZ)

初めまして、五色月ゆーまと申します。
初投稿で至らぬところもあるとは思いますが、読んでくださった、少しでもたくさんの方に楽しんでもらえるような作品を書いていきたいです。



世界観(?)↓
日本。日本だと思って書いてます。
不思議君主人公が高校生活enjoyしようとして空回りしまくる話。



キーワード↓
・高校生
・ギャグ:シリアス 7:3くらい
・腐女子います→若干ネタBL
・恋愛成分0%
・カオス
・タナトス
・ワイバーン



登場人物(話が進むにつれ増えていく予定です。)↓
田中 俊(たなか とし)
通称タナトス。不思議君。
普段はおとなしく気弱そうだが、実はたまにたばこ吸ってる。知る人ぞ知る危険人物。

河野 桜良(こうの さくら)
※ひろいんではありません。男です。
俊の小学校からの親友。運動神経抜群頭良い。クラスに一人はいるコミュニケーションの達人。

赤井 朝日(あかい あさひ)
一匹狼。とっつきにくい訳ではない。
何かと俊に絡まれてる。そのたびに困り顔。

渡辺 小鳩(わたなべ こばと)
俊のクラスの担任教師。通称ワイバーン(何故)。
いつも気だるげ。面倒事は見て見ぬふり。

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Re: 不思議君の菓子折りライフ ( No.1 )
日時: 2015/11/21 17:27
名前: 五色月ゆーま (ID: qSKICFXZ)

タナトスは目覚めた。
アラームを響かせ続けている、枕元の時計を犠牲にして。

今日は入学式だ。
朝ご飯は食べてこなかった。別にダイエットしているわけじゃないし、ましてや食べたくなかった、というわけでもない。
時は無慈悲にも待ってくれなかった。それだけだ。



Act1 Scene1



今日が記念すべき高校生ライフ第一日目だというにも関わらず、昨晩夜更かししてゲームをしていたバチが当たったのだろう。
田中俊の身に非常事態が起こりまくっている。
朝、起きた時刻は本来起きるべき時刻の約三十分後。しかもアラームを止めようとした手が、誤って時計を薙ぎ払い、時計はプラスチックの破片をあたりに散らかしてそのまま動かなくなった。
そのうえ、母さんがせっかく作ってくれた朝ご飯、すなわち今日一日のエネルギーを取り入れ損ねたのだ。
天気は快晴、最高なのだが。
気分は最悪最凶だ。
とは言え、あくまでも遅刻の危険は無かった。それでも寝坊は寝坊なので朝ご飯は逃したが、絶望的に寝過ごしたわけではない。証拠に、まだあたりにはちらほら同じ制服を着た——おそらく新入生が歩いている。その流れに紛れて俊が目的地、懸河高校校門前に二十分かけてたどり着き、深呼吸を兼ねてため息をつくと「辛気臭せぇぞ!」馴染みのある声がした。
「随分遅い登校だな、俊。ま、遅刻してこなくてよかったけど。」
そう言って、校門をくぐってくる他の新入生の流れに逆らいながら(ついでに女子の視線を集めながら)、手をヒラヒラ振って俊に歩み寄ってくるのは河野桜良だ。桜良は俊の小学生からの親友で、運動も勉強も得意でイケメンだ。妬ましい。
「…桜良、もしかして待っててくれてたの」
俊が首を傾げて訊くと桜良は、はにかみながら、まぁな、と笑った。すると俊は、
「…可愛い女の子だったらよかったのに」
愚痴るように元から小さい声を更に小さくして、そう呟いた。しかし、耳の良い桜良はしっかり聞き取っていたようで、
「ひっでーな、相変わらず。ロリコンは健在か?」
冗談であろう後半の言葉を俊は本気に受け取り、頬を赤くし膨らませ、焦って抗議する。
「ちっ、違うもん!ロリコンじゃないもん…!」
「ははっ、ムキになって、図星か?」
声をあげて笑い、歩き出した桜良に俊は、引き続き抗議と多少の罵声を浴びせながら後を追うように、これから始まる輝かしい、高校生ライフを過ごす校舎へ期待を胸に歩き出した。

Re: 不思議君の菓子折りライフ ( No.2 )
日時: 2015/11/21 18:10
名前: 五色月ゆーま (ID: qSKICFXZ)

入学式は終わった。
タナトスが眠りに就いている間に。

最後にこの瞳に映ったモノは何だっただろうか。
確か……此処の、狸みたいな校長先生…だったはずだ。



Act1 Scene2



幸い、俊は桜良と同じクラスになった。席も比較的近く、間に一人入っているだけの距離だ。しかしそいつは来ていない。休みか、入学式なのに。
そして二人のクラスの担任は二十代後半、くらいの若い男教師だった。
その教師は名前を渡辺といい早くもクラスのお調子者にワイバーンという渾名をつけられた。何故だろう。
それはともかく渡辺の第一印象は気だるげな、無気力そうな感じ。ちょろそうで良かった。少しくらいやらかしても渡辺の前では問題なさそうだ。
「じゃ、とりあえず入学おめでとう無事入学できてよかったな。まあ、まずは自己紹介でもしてもらおうか。出席番号一番」
渡辺がそう言い、出席番号一番の奴が席を立つと「あと」と渡辺が言葉を続けた。
「みんなの担任、渡辺先生は英語科の先生なので、自己紹介全部英語、最低五文以上でお願いしまーす。」
言い終わるや否や、クラスのほぼ全員が非難の声をあげた。ちなみに俊はその中に含まれていない。そもそも自己紹介自体嫌だったからだ。桜良も騒がしくなるクラスの様子に苦笑しただけだった。
そして段々騒ぐ声が小さくなると、立ち尽くしていた出席番号一番の赤井が咳払いして、自己紹介を始めた。
「…名前は赤井朝日。趣味はマラソンとか…運動。好きなものは…特に…ないです。嫌いなものは勉強。特に英語。よろしくお願いします。」
渡辺の指定をガン無視。しかも嫌いなものが英語とはっきり言いやがった。完璧に反感買ったな。
お疲れ、赤井君。
みんなが心の中で唱えると渡辺が笑って言う。
「赤井クンね。レッドリスト追加しとくわ。はい次二番」
赤井に続いて二番の奴も同じく日本語で自分のことを語り始めた。
次の奴も、その次の奴も。
そして桜良の番が回ってきた。
「河野桜良です。運動も勉強も好きですが、料理が不得意で嫌いです。あと、中学の時友達ににお前の絵って世紀末だな、って言われました。とりあえず、気軽に話しかけてくださーい!」
そう言って、ニコッと笑って席に着く。女子と数人の男子から黄色い悲鳴が上がった。
「勉強好きなら英語で言おうか、河野クン。レッドリスト。次——の菅原は休みか。じゃ、その次の田中クン。」
ついに来た。何言うか決まってない、何言えばいいんだよ、と、とりあえず名前を…。
脳内で議論を起こしながら俊は立ち上がる。
え、えーと…
「た、田中俊…です…」
次、次は…
「え、えと、中学は、た、タナトスって呼ばれてました。」
次、次、次は…
「………。!よ、よよろしくお願いします!」
俊が慌てて席に着くと、誰かが「よろしくタナトス!」と言った。
「はいはい、タナトスクンも英語が嫌いなんだ、残念。レッドリスト。」
渡辺が最早決まり文句のようにそう言った。
こうして中学時代同様、俊はタナトスと呼ばれるようになった。


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