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猫ふんじゃった。
日時: 2015/11/29 03:48
名前: マナザ (ID: zQJPnDCy)

梅雨の蒸し暑い時期。
人間にとっても苦痛だろうが、体毛のある猫にとっては更に苦痛だ。
なぜ猫である私に、人間の気持ちが分かるのかって?
それは、丁度三ヶ月前の事だった。


◇◆◇◆◇◆◇


「うぉっ……! うわぁ……」

私が住処にしている、路地裏の端っこ。
目覚めてみると、私の尻尾の上にに、人間の足があるではないか。
痛みにフギャー!と鳴くと、私たちと同じ、猫科であろう動物のシルエットが刻まれた靴が退けられる。

「……マジで猫踏んじまった……あ、そうだ」

そう安堵する人間は、徐に自身の持っていたビニール袋からキャットフードを取り出し、それを手に一杯載せ、私に差し出した。

「ごめんな、お詫びだよ」

敵意のない笑顔で差し出されるそれは、普段生ゴミくらいしか食べない私にとって、まるで宝のように見えた。

ニャーと一言鳴き、すぐさまそれに貪りつく。
カリカリという程よい歯応え。
高級品だろうか、とんでもなく美味しい。

「美味いか?」

ニャーともう一度鳴き、また食べることに戻る。
何度も何度も咀嚼しているうち、手の中のキャットフードは無くなってしまった。
満腹になったが、まだ食べたいという欲求は簡単に抑えられず、人間の靴を爪で引っ掻いてしまう。
人間はそんな私に困ったような顔をし、頬を掻いた。

「あー……、ごめん、そろそろ戻んなきゃ。お袋の見舞いに行かなきゃだからさ」

声色を変えて、悲しそうに鳴いてみるが、効果はなく。
チラッとこちらを見て、路地から出て行ってしまった。

これが、私と彼の出会いだった。

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