コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- もう一度、青空を。
- 日時: 2016/07/12 18:16
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=129.jpg
貴方に青空を届けよう。
それが僕に出来る唯一の幸せ。
またの名を愛、だから。
『君にこの青空を贈るよ___ソラ』
_________________________________
あき朱音です、こんにちは。
元はめろんそーだ、として活動していました。
今回書くのは、しんみりとした恋のお話、です。
青い空って、見るのも、描くのも、何をしても綺麗ですよね。
これは、そんな青空を巡る、少年と少女のお話です。
それでは、是非、楽しんで頂けると嬉しいです!
※挿絵を描きました! URLからです※
*もくじ*
登場人物>>1
おたんじょうび。>>2
手作りクッキー。>>3
蒼空のこころ。>>4
おめでとう。>>5
綺麗な瞳。>>6
恋しちゃった。>>7
伝えても。>>8
満点の星が。>>9
届くことなく。>>10
恋の想い出。>>11
貴方が大好き。>>12
恋する乙女。>>13
恋の話でも。>>14
何で貴方は。>>15
喫茶店事変。>>16
二人の話に。>>17
尖った笑顔。>>20
あの人の過去。>>21
信じることが。>>22
- Re: もう一度、青空を。 ( No.3 )
- 日時: 2016/01/22 22:50
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 手作りクッキー。
「ありがとう! ユウちゃんよく覚えてたね」
にこ、と笑ってその言葉に返したけれど、不思議だなと思う。
なんで僕の誕生日を知っているのだろう。
多分、ホシなんかが勝手にばらしたんだろうな……。後でしつこく問い詰めてやろう。
呑気に考えていると、ユウちゃんがふるふると首を振る。
「…いえ、優しくなんてないのです。
あと、渡したいものなのですが」
いつもの真面目な敬語で、また僕に向き直る。
綺麗な外見も相まって、見つめられるとなんだか目を逸らしたくなる。
眩しくて輝いている、正にそんな感じ。
「うん?」
「……手作りのクッキーを作ってきました」
手作りクッキー……
てづくり……くっき……
「手作りクッキー!?」
「はい」
ユウちゃんは、淡い笑顔で喋るのだった。
僕の。上がり切ったテンションを。置いてけぼりにして。
「確か先輩は抹茶が嫌いでしたし、濃いめの甘さも苦手でしたよね。
だから紅茶味にしました……美味しくなければ言って欲しいのです。
本当は誕生日ですし、ケーキを作りたかったのですが……
重いですし、溶けてしまいますから、クッキーにしたのです」
迷惑だったら言ってください、と一言添えて。
勿論迷惑なわけがない。僕はお菓子は好きなものだし、祝われたら誰でも嬉しいだろう。
でも……抹茶嫌いとか、ユウちゃんに言ったこと、あったかな?
まぁそんなことはいいのだ、全てホシのせいにしてしまえば。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.4 )
- 日時: 2016/01/02 15:18
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 蒼空のこころ。
「じゃあ、またあとでね、蒼空! 今日は頑張れっ」
「うん。じゃあね……がんばる!」
そんな風に手を振って、友人とお昼ご飯を食べて教室に戻ってくるとき。
微かにだけど、あったかい声がする。
いつもの、あの安心できる声。
その声につられて、お弁当箱を持っているのを忘れて歩くと、
「ありがとう!」
そんなことを言っている、ソラくんが見えた。
誰かと話してるのかな……?
もしかして、あれは_____ユウちゃん?
姿を認識した瞬間、私の背筋が硬くなるのを感じた。
だって、ユウちゃんは……
彼の、ストーカー………。
いや、違う。きっとただ話してるだけで、私には何の関係も……。
ちくり。
小さく、胸が痛んだ。
締め付けられるような、淡い痛み。
な、なんだろう……。
それに私、お誕生日まだ、祝えてないなぁ……。
悲しくなって、先を越されたような気がして、私は教室に逃げ込んだ。
何が先を越されただ、私のバカ。
自分から渡さなかった、自己責任だ。
帰り道、頑張ろう。
私は小さく呟くと、自席についた。
五時限目開始まで、あと10分。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.5 )
- 日時: 2016/01/21 23:28
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: おめでとう。
帰り道。
私の心臓は何だか高鳴っていて、気を抜くとその音がどきんどきんと聞こえてくる。
大丈夫、プレゼントを渡すだけなんだから……。
「そ、ソラくん! 待たせちゃってごめんね」
「いいよ、大丈夫」
いつも通り。
一日のノルマである授業が終わった後は、彼は無口になってしまう。
その静けさがいつもは心地よかったけど、今日はそれが、私を緊張させる一因となっていた。
深呼吸をすると、微かに冬の香りの残る春の空気を感じた。
それによって多少落ち着いた私は、彼をちらりと見た。
彼は道沿いの白線を踏んで遊んでいて、何だか可愛かった。
「ねぇ、ソラくん」
「んー……?」
振り向いた髪から、桜みたいな匂いがして、思わず目を細めた。
深呼吸をして、顔を見る。
目を慌てて逸らすソラくんは、子供みたいに澄んだ瞳。
「お誕生日おめでとう」
私はそれだけ言うと、その両手に袋を持たせた。
待って、という彼に「帰ったら見てね! もう帰らなきゃ!」とだけ告げる。
恥ずかしくてぶっきらぼうになっちゃったけど、ちゃんと伝わったかな。
ソラくん、喜んでくれるといいな。
私はそんな思いを馳せて、家への帰路を歩いた。
途中でくらりと立ちくらみがしたのは、きっと恥ずかしさのせいだろう。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.6 )
- 日時: 2016/01/23 20:16
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 綺麗な瞳。
「……これ……なんだろ……?」
お誕生日おめでとう、と言っていたから、誕生日のプレゼント……であることは間違いない。
そう気づくとなんだかむず痒い気分になってきて、そそくさと帰路を歩く。
外で開けるのも何なので、家についてからのお楽しみ、ということにする。
「ふへへ……初めて、かな」
意外と照れ屋な彼女は、僕にプレゼントをくれたことはなかった。
俺はちゃんと揚げ玉ちゃんクッションをあげたりしているし、一応印象には残ってるだろう、と思う。
彼女が至る所で揚げ玉ちゃんグッズを見つける度、ついつい買ってあげてしまうのだ。
認めたくはないけど好きって特権、なんて思うけれど、多分原因は『彼女の瞳』。
あの憧れるような瞳を、僕が満たしてあげたいなんて思ってしまう。
「本当に、好きなんだな」
ふと、後ろから声が聞こえた。
この登場の仕方は何回目だか忘れるくらいだったので、大して驚かずに後ろを振り返る。
そこには見慣れた、淡い月のような少女が立っていた。
触れたら溶けてしまいそうな、揺れる笑顔。
「コロ……ちゃん」
虹色に輝く、ホンモノの虹みたいな飴を咥えて。
ふふ、と意味ありげに笑った彼女は、くるりと一回転をした。
その風でスカートがふわりと膨らんだので、慌てて横を向く。
黒いタイツを履いているし、女子のあれが見えることはないだろうけれど、男としてのマナーだろう。
彼女は月代コロナ。
英語は勿論ペラペラのハーフ、他教科も95点以下は取ったことがないとか、なんとか。
そんな感じの天才だった彼女は、進学クラスへと進んでいた。
運動も出来て、顔もいい。そんな眉目秀麗、容姿端麗、文武両道な彼女が、こんな僕に何故絡んでいるのか、というと_____
僕も、分からないのであった。
勿論仲良くしてくれているし、いつも僕のことを気にかけてくれる。
そんなコロちゃんは、今日も絡んできたらしい。
「あはは、顔がニヤけてるぞ? まぁ彼女、可愛いもんな」
そんな下心たっぷりな男はいけ好かないよ、と冗談のように笑う。
だからこそソラちゃんは、とまた冗談めいた笑みで、顔を近づけてくる。
「キミみたいな男、中々いないもんな。
……ソラソラ同士で、相性もいい」
「相性か……そんなによくはない、と思うけど」
誕生日プレゼントなんてもらっちゃって、と。
依然にやにやとした笑みを浮かべている彼女は、暇そうに飴を噛み砕いた。
「勿論私からプレゼントなんて渡さないよ?
期待したかい?」
彼女は砕いた飴をぱらぱらと遊んでから、恨めしそうに言った。
その声が、何だかとても意地悪く聞こえたのは、気のせいだろう。
「期待したよ、くれないのかー」
僕はそれだけ言って、また笑った。
「あは、いいねぇ青春ってのは。まるで少女漫画だな」
私とは全然違う。
そう微かに聞こえて、コロちゃんを見る。
コロちゃんはやっぱり、いつもと変わらない笑みを浮かべていた。
- Re: もう一度、青空を。 ( No.7 )
- 日時: 2016/01/23 19:49
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 恋しちゃった。
そのあと、コロちゃんはそそくさと帰っていった。
今から塾なんだ、とだけ告げて。
それは明らかに塾ではないようなよそよそしい感じだったけれど、それをしつこく聞くのも何だと思い、それを信じた体で話した。
きっと彼女には、彼女なりの理由もあるだろう。
コロちゃんは変な嘘は吐かないひとだと、僕は知っている。
彼女の足は軽やかなスキップをしていたし、不穏な理由でもない筈。
……かなり長く話していたようで、段々と日が暮れ始めた。
辺りの家がぽつぽつと灯りをつけ始め、慌てて足を運ぶ。
何だか不安になる淡い青色が、空を焦がす。
それが段々色濃くなっていき、ホシからのLIMEに、軽く目を通した。
『ねぇよぞら!! 聞いと!!』
余程焦っていたのか、なんなのか。
聞いと、は多分聞いての間違い……だと思いたい。まぁ、彼ならやりかねないから。
『なんだよー』
適当に返すと、すぐに既読がついた。
……ずっと僕の個人チャットを開いて、待っていたのだろうか?
それなら、一時間も間を空けてしまったのは、彼にとっては非常に困った事態だっただろう。
心の中で謝り、目線を移す。
『聞いて! やばい!』
『落ち着いて、なにがあったの?』
それだけ打つと、彼からの返信が来るのを待った。
『恋しちゃった』
はぁ? と思わず声が漏れる。
誰もいない道だと独り言のようになってしまうわけで、慌てて口を抑えた。
だがその恥ずかしそうなやたらと乙女チックな内容からは、悪意は感じない。
彼に悪気があるのならそこまで、羽交い絞めにでもしてやるけれど。純粋な恋の相談を、無碍にする必要はないな。
そう思った僕は、こじんまりとした公園へ入った。
春の草木が、出迎えてくれるように揺れた。
あぁ、このにおいは、ソラのに似てる。
優しい香りに導かれて、ベンチへと腰を降ろす。
空もいよいよ闇に染まり、月も出てきた。
その月はさっき会ったコロちゃんみたいに、きらきらと輝いている。
『誰に?』
『……それは言えない……』
これで言ってしまう人間というのは、確実に騙されやすい体質だろう。
その点で言えば、ホシの選択は一理ある。
ここから、長い長い、ホシの恋話が始まったのだった。
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