コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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3年A組にようこそ!
日時: 2015/12/17 23:02
名前: ★クロネコ★(元、黒猫) (ID: 0DBGOBwu)
参照: http://https://twitter.com/ugokitineko

「ここかぁ・・・」

昇降口の前で立ち止まり、一度校舎を眺める。
広くて、まだ新しいような、そんな印象を受けた。

高鳴る胸を押え、校舎内に足を踏み入れる。
靴箱で真新しい上履きを出して、靴を入れようとした。だが、
自分の靴箱は一番上で、背伸びをしても届かない。

必死に何度も挑戦するが、やっぱり無理だ。
と、その時、視界にフッと影が落ちる。

「ちょうだい、その靴」

「!」

慌てて後ろを振り返る。

「あ、あなたは…?」

立っていたのは男子。私より頭一つ分くらい身長が高い。
しかも、ちょっとかっこいい…

「は・や・く!」

おっと、いけない。色々考えている間に時間が経ってしまった。
慌てながらも、差し出していた手に靴を預ける。

私ではあれだけ葛藤するほどだった高さも、この男子にとってはなんでもないようだ。非常に悔しい。

「あんたさぁ、見かけない顔だけど…?」

しかもうちのクラスの靴箱なのに、と男子は呟く。
なかなか鋭いな、コイツ…と思いながらも本心は出さずに、笑顔で言う。

「転校してきました、佐々原 奈都です」

よし、テンパらずに言えた!…と心の中でガッツポーズをかます。
初対面の人とはどうしても上手く喋れないのだが、今日は喋れた。いいことだ。

「なつ、ねぇ……」

と、何度も私の名前を繰り返す。非常に気まずい。
やがてピタッと動きを止めると、笑ってこう言った。

「よろしく、奈都」

「…うん!」

今日はいい日になりそうだ。


 * * *

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Re: 3年A組にようこそ! ( No.1 )
日時: 2015/12/17 23:21
名前: ★クロネコ★(元、黒猫) (ID: 0DBGOBwu)

廊下を歩き、階段を上がる。その動作を繰り返すこと3回。
私が今日から入るクラス、3−Aは3階にあった。

「…で、普通の人なら今の時間に登校は、完全に遅刻だと思うんだけど…?」

疑問を素直に聞いてみた。
不思議とすんなり話しかけれる。

「あー…いや、ね。俺、遅刻常習犯なんだよ」

苦笑まじりに話す彼は、反省を通り越して慣れちゃった、と話す。
…ダメだコイツ。

ため息まじりに息を大きく吐く。もう教室は目の前だった。

「…緊張する?」

彼は、私の顔を覗き込み、笑って問いかけてきた。

「大丈夫」

嘘だ。手はまだ震えているし、汗も自然と流れ出る。
(それでも行かなきゃ。)

「じゃあ先に待ってるよ」

そういって彼は普通にドアを開け、中に入っていった。
中からは、またかよー、おせーぞー、などと、男子からの声が多く聞こえる。女子の声も…多かった。

「人気者、か…」

さっきまで湧いていた親近感はどこへやら。
一気に現実を見せつけられたようで、悲しくなる。

それでも、沸き上がる不安を掻き消してドアを開けた。

「お、おはようございます!」

Re: 3年A組にようこそ! ( No.2 )
日時: 2015/12/28 01:28
名前: ★クロネコ★(元、黒猫) (ID: i3DscJW2)

思いっきり声を出す。…ちょっと張り切りすぎたかな?
瞑っていた眼をそっと開け、教室の中を見渡す。

皆、びっくりしたように私の方を見ながら、固まっていた。
視線が集まっているのがわかる。こんな感じはいつぶりだろうか。
自然と体は固まって、動かない。

「…ぷっ」

一番最初に口を開いたのは、前の方の席の男子。
少し笑ったかと思うと、そのまま声を出しながら笑い出す。

(…び、びっくりしたぁ…)

その人は、ひとしきり笑い終えるとこう言った。

「緊張しすぎ!w…はー、久しぶりに面白いもの見たわ」

…ぐぬぬ。馬鹿にされてしまった。
仕方ないではないか、転校なんて初めてなんだぞ。

なんて思いつつも、少しその人に感謝する。
おかげで、少し、まだ少しではあるが緊張がほどけたからだ。
それは、私だけでなく、皆もだったようだ。

「せんせー、転校生ってこの子ですよねー?」

「先生、早く紹介してくださいよー!」

などと、次々に声が上がる。

「わかったわかった!…じゃあ佐々原、お願いできるか?」

苦笑交じりに、先生はこう言いながら私の方を向く。いつも苦労してんだろうな、と大体想像はつく。

「ハイ、大丈夫です」

またもや内心を隠し、笑顔を張り付ける。
そして教壇の方へ進み、立ち止まって前を向く。そして、差し障りないような普通のあいさつをする。

「初めまして、佐々原 奈都です。よろしくお願いします。」

一礼して、先生、どこに座れば…と、聞く。

「そうだな…」

と悩む先生。だが、こちらとしては一刻も早く座りたいのでイライラしてくる。

「先生、ここ空いてますよ」

突然の声に、皆の注目がそっちへ移る。

(あ…さっきの…)

声の主は、さっき靴箱で会った彼だった。
そこは、窓側で一番後ろの席で、私の大好きな場所だった。

「じゃあ…良いか?」

「ハイ、大丈夫です」

早く席に座りたくて、即で返事を返す。立っているのは辛いものだ。
席に向かう足も自然と速くなる。

「やっと席につけた…」

そっと呟いて息を吐く。
ふと隣を見ると、彼と目があった。

「お疲れ。これからよろしく」

彼は笑って私に言う。

「…よろしく」

私も笑って返した。

Re: 3年A組にようこそ! ( No.3 )
日時: 2016/01/01 04:23
名前: ★クロネコ★(元、黒猫) (ID: /3jPz9HL)

「・・・っと、そうだそうだ。忘れてた。」

そう。一つだけ、聞いておかねばと思っていたことがあったのだ。

「何?」

彼がこちらに関心を持ったことを確かめ、少し間をおいて口に出す。

「あなたの名前!」

そう、彼の名前を教えてもらっていなかったことに気づくまで、結構かかったのだ。我ながら情けない。

「・・・あー・・・言ってなかったね・・・えっと、俺は、榊 雄斗。」

彼にとっても盲点だったようで、申し訳なさそうに頭を掻きながら苦笑している。

「榊ね、うん、わかった」

やっと聞けて満足した。いつも聞こうと思っては忘れてしまうので、ずっとモヤモヤしていたのだ。

「奈都、そんなに嬉しいの?」

にやにや笑いながら問いかけてくる。
…私、そんなに嬉しそうにしてたのかな…。そう思うと急に恥ずかしくなって、ついこんな言葉を発してしまった。

「…知らない」

「なにそれw」

榊は、あまりに想定外だったのか、一瞬驚いてからすぐに笑い出した。

むう…珍しく調子が狂ってしまった。こんなこと、今までなかったのに。全てはコイツのせいだ。

「榊のバーカ!」

思うままに口に出してみると、かなりスッキリした。
まだ肌寒い朝。私は、満足げに笑いながら、榊の罵倒を聞き流した。



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