コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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そこのあなたに恋愛系短編集!
日時: 2015/12/22 19:07
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)

 こんにちは、紅色ゆりはです。
 「私の後ろの不良執事」(コメディライト)と同時進行して短編もの
をいくつか書けたらなと思ってます。
 要は不良執事の方がアイディアが詰まっているので、どうにかして
アイディアが出せないかなーというつなぎです。
 でもこちらもちゃんと書いていきたいと思ってます。目指せコメント
100突破、です。大きく出てみました。

 コメントもオリキャラも随時募集中! 反映は遅いですが必ず
どこかしらには登場させます! 主人公の友達とか!

 よろしくお願いします!

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Re: そこのあなたに恋愛系短編集! 【フラミンゴ系女子】 ( No.1 )
日時: 2015/12/19 12:41
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)


 1 フラミンゴ系女子


 「見ろよ。フラミンゴ映ってんぞ」
 何かの動物番組に出ているフラミンゴを指差して、トキ兄が言った。
 「へえ」
 私はそっけない返事をすると、ミルクをマグカップに注いだ。
 だからなんだっていうんだ。自分が鳥好きだからって妹まで同じだと
思わないでほしい。
 「何だよ。機嫌悪そうな顔して。お前も好きだろ、フラミンゴ」
 「ふつう」
 「ふつう、って」
 ソファに背をもたれて、トキ兄がミルクティーを一口すすった。
勘の鋭いトキ兄のことだから、もしかしたら私が何を考えているのか、
少しくらい察しがついたのかもしれない。
 だとしたら同情されるのがおちだ。早々に自分の部屋に切り上げた
方がよさそうだ。
 「千鶴」
 「……なに」
 マグカップを持った手がビクッと揺れた。幸い床にこぼれては
いなかった。
 「正直お前に悪いとは思ってない。でもお前が間違ってたわけじゃ
ないとは思ってる。気にすんなよ」
 「……別に、あんまり仲良かったわけじゃないし。気にする理由が
ないよ。トキ兄こそ気にしてるんじゃないの?」
 そういうと、私は半場強引にドアを閉めた。
 同情。違う。ただの慰め合いだ。わかってるんだ、自分たちがする
べきことを先送りにしているなんてことは。
 ふと、頭につい一週間ほど前の出来事がよぎった。

 『犬が……いたんだ』
 「はい?」
 突然隣から渡されたのは、ノートの切れ端に書かれた意味の理解
できない一文だった。
 「なんだ。平野、何か質問か?」
 「あっ? いえ、何でもないです……」
 なんなんだ。よりにもよって青柳先生の授業中に何を書いてるんだ。
この12月の寒い日に運動場の水道掃除なんてやらされたらどうして
くれるんだよ。
 『何よ』
 青柳先生の目を盗んで、急いでノートの切れ端を渡す。すると幾秒
も立たないうちに、
 『そしたら猫がその上に乗って、その上に鳥がのっかったんだ。
だから僕、猫が鳥を襲うんじゃないかと思ってひやひやして……』
 ……かなりどうでもいいよ。
 ていうかどこでいつの話だよ。そんな面白い光景少し見たかったよ。
 『あのさ。授業中に止めてくんない?』
 そう書いた切れ端を渡すのと同時に、相手からも紙切れが渡された。
 『犬の下には何がいたと思う?』
 なぜクイズ形式……。
 少し考えたのち、馬だと判明した。馬、犬、猫、鶏。ブレーメンの
音楽隊のことだろう。
 だがこの答えを伝えるべきか否かが問題だ。さっき「やめろ」という
内容の紙切れを渡してしまった以上、私の方から再び始めて
しまったら、奴の愚行を許してしまうことになる。それはなんだか
悔しい。
 そもそもこんなことをもんもんと考えること自体時間の無駄だ。
高校一年生だからといって勉強に油断や妥協はしたくない。したくない
けど、奴に負けるのも嫌だ。
 するとまた唐突に、
 『わかった?』
 ……懲りないやつだな。
 『馬。あと授業中だからやめて』
 殴り書きで書いて渡すと、切れ端を受け取った手でオーケーサインを
出して、嬉しそうに笑った。
 その時、思った。こいつは——樫村は、ヘンだけど、面白い奴だ、
って。

                          つづく

Re: そこのあなたに恋愛系短編集! ( No.2 )
日時: 2015/12/19 19:40
名前: 紅色ゆりは (ID: gKAFDMkE)

 樫村は最初から変な奴だった。
 いつもにこにこして、妙に愛想がよくて、クラスでは孤立している
わけではなかったが、少なからず浮いていた。さらさらの黒髪と意外
にも女子から好評な顔立ちが印象的で、一か月前の席替えで隣にでも
ならなければ、きっと一言も言葉を交わさずに一年を終えていた
だろう。
 私は、隣の席になるまで、樫村のことをただただ変な奴だと思って
いた。いや、変な奴だという印象は隣の席になってからも変わらな
かった。ただほんの少し、その「変な奴」という印象の質が変わった
のだ。
 樫村はよく笑う。愛想笑いや苦笑い、大口を開けておかしくて
たまらないと言わんばかりに笑うこともあった。でも、その笑いは
完全に二種類に分かれているように見えた。演技と本心だ。
 心の底から笑っている時と、建前で笑っている時。最初はその区別
を付けることはできなかったが、だんだんと自分にはその区別が
ついているのではないかという気がしてきたのだ。
 気のせいかもしれない、と思うときもあった。でもそう思うたびに、
なぜだか首を横に振りたくなるのだ。
 樫村に「面白い変な奴」くらいの感情しか抱いていない私がどうして
そう思うのか、正直分からなかった。
 そんなことを思っているとき——そう、一週間前のこと、あの一大事
が起こったのだ。

 ——クラスの女子の、分裂だ。

                          つづく


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