コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- ろくでもない春の夢を見た
- 日時: 2015/12/22 14:07
- 名前: 赤井いと (ID: I36i1trF)
- 参照: 2年半ぶりのカキコ。
▼どうしてこんなにも君は綺麗なんだ
知ってる方いないのではないでしょうか。
カキコに戻ってきました。
といっても受験生なので更新はとってもとっても遅いのですけれど。
少しずつやっていくので、よろしくお願いします。
赤井いと
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- Re: ろくでもない春の夢を見た ( No.1 )
- 日時: 2015/12/22 14:45
- 名前: 赤井いと (ID: I36i1trF)
駅の名前が月の名前だなんてこの地域はおかしいんじゃないか、と思う。僕が住んでいるところの駅は「卯月駅」で、通う高校の駅は「師走駅」。電車で季節を行き来できるみたいに、綺麗にそう並んでいる。
電車が動くくらい早く、時間が経つのも早いもので、明日から冬休みらしい。今年ももう終わるのだな、と僕は感じた。
「壱ー電車来たぞ」
携帯を見ていた僕に、吉田は声をかけてくれた。吉田は高校でできた友達で、優しいし馬が合う。彼が降りる駅は神無月駅だが、それまでは一緒に帰ることにしている。
電車に揺られ十数分。吉田も降りて、次々に人も降りていく。卯月まで行くのは僕くらいのようだ。一人で電車に揺られていると、なんだか様子が変な気がした。
「桜が見える」
もう十二月であるというのに、窓の外に桜の花びらが散って見える。目をこすってみても変わらない。かつて見た春の光景のようだ。けれどもありえない。日付を確認しようと思って携帯を出すと、何故か電源が切れていた。何かがおかしい。そう思っていると、卯月駅に着いてしまった。
電車を降りると、外の空気はとても暖かかった。マフラーをしている僕が馬鹿みたいだった。そして桜も散っている。どういうことなのだろう。なんだか僕は怖くなって、すぐに家に帰ろうと思った。
春の頃そのものの道を、ただ帰ろうという一心で歩いていると、小学生がサッカーをしているのが見えた。12月だったら寒くて誰もしていないのに。
と、考え事をしているとボールが飛んできた。取ろうとするものの、僕の足の間を通り抜けていくそれ。すると一人の少女がそのボールを蹴った。
「子供には優しくしないと、おにーさん」
彼女は僕を見てにっこりと笑った。その笑顔はとても綺麗で儚くて、桜みたいに散ってしまいそうだった。
- Re: ろくでもない春の夢を見た ( No.2 )
- 日時: 2015/12/29 22:33
- 名前: 赤井いと (ID: I36i1trF)
「君……、その制服、北高なんだ。私とおんなじ」
くるりと回って僕の方に体の向きを変えた彼女は、僕の制服を見るなりそう言った。僕の通う高校の制服は、この街でひとつだけのセーラー服と学生服だ。この近辺で一番偏差値の高い高校であるから、この制服はこの街に住んでいたら大概北高だとわかる。
「うん。2年だよ」
「へえ。同じだね。ていうか君、何でマフラー着けてるの?暑くない?」
「ええっと……それはまあ、うん」
マフラーの事を指摘されて、僕は口をつぐんだ。そういえば、一体今日は何日なのだろう。携帯の電源も切れているし、と思って、僕はマフラーを外しながら言った。
「あのさ、今日は何日だっけ?」
「えっと、14日だよ、4月14日。ほら」
彼女は僕に携帯の画面を差し出した。それは無機質な文字で時刻と4月14日木曜日を示している。本当だ。僕は電車に乗って四月に戻ってきたみたいだ。ありえないようは話だけど。
「なんか君、変だね。君さ、名前なんて言うの?」
「山本。山本……壱」
「イチ?数字のイチ?」
「まあそうかな。旧字体だけどね」
僕は地面の砂に、『壱』という漢字を書いた。すると、彼女はそれを指差して、
「綺麗な名前」
と笑った。綺麗だ、と思って見惚れてしまいそうだったから、僕は彼女の顔を見ないまま、
「君の名前は?」
と聞いた。すると彼女は指で漢字を書きながら、
「白石真子」
と言った。真実の真に子供の子。初めて会ったばかりなのに、彼女にぴったりだと、思った。
- Re: ろくでもない春の夢を見た ( No.3 )
- 日時: 2015/12/30 11:56
- 名前: 赤井いと (ID: I36i1trF)
それからの毎日は、4月に戻ったと言えども代わり映えのない毎日で、もう一度同じ季節をやり直していると思えばそうなのだけど、僕の毎日にはひとつ、一回目の春とは違っている。
白石真子が、僕の毎日に存在している。
彼女は僕と同じ高校だと言っていたが、学校では一切彼女の姿を見ない。けれど、放課後帰っていると必ず公園にいる。北高のセーラーにキャメル色のカーディガンを着て、時には滑り台で眠っていたり、時にはサッカー少年たちと遊んでいたり。不思議な人だなあ、と思う。
今日も電車を降りて一人歩いていると、いつもの公園で彼女を見つけた。声をかけようと公園に入ると、彼女も僕の姿を見て、ベンチから立ち上がって僕の名前を呼んだ。
「学校帰り?お疲れ様」
「お疲れ様、って君も学校だったんじゃないの?」
「いや、私2年になってから学校行ってないし」
へへ、と明るくピースサインを出しているけれど、僕の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだ。学校行ってないのに毎日制服着てるし、毎日外出ているし。
と、頭の中で考えているのが顔に出たのか、彼女ははははっと笑った。
「いやいじめられて不登校とかじゃないし、毎日制服着てるのも外
出てるのも行くところがあるからだからさ。あんまり考えないでよ」
あー面白い、と僕を見て腹を抱えて笑っている。なんて人だ……。でも彼女を見ていると明るくなれる。僕も思わず笑った。
「ねえイチくん」
「何?」
「これから毎日ここに来てよ。私の暇つぶし手伝って」
「わかったよ」
彼女は僕の目をしっかりと見て、また笑った。
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