コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 短編集
- 日時: 2016/04/24 21:06
- 名前: 納豆 (ID: D2NnH/3T)
初めまして、納豆といいます(^-^)
長編小説は飽き性の私にとって不向きなので
まずは短編集から書いていきたいと思います^^
主に恋愛小説ですが、切ない感じが好きなので失恋などが多いと思います。
よろしくお願いします!
○ATTENTION
・今年から受験生で、更新が遅いです…申し訳ございません。
・コメント、アドバイスなどお願いします!
・誹謗、中傷はご遠慮くださいm(_ _)m
・総タイトルは未定で募集中でございます…よろしければ提供してくださると本当に嬉しいです(^-^)
・リクエストや実話体験など募集中です(^-^)
2016 / 1 / 11 start.
○目次
>>1 1. " 想っている人 "
>>4 2. " 教師に "
>>5 3. " 先輩と後輩 "
>>7 4. " ヤキモチ "
>>10 5. " 好きなのに "
>>11 6. "風邪"
○Special thanks ( 読んでくださったお客様 )
りお 様
あんず 様
ありがとうございます(^-^)
- Re: 短編集 ( No.7 )
- 日時: 2016/01/18 19:14
- 名前: 納豆 (ID: i7z/PvOJ)
「ねぇ、玲司君。今日ね、みんなと遊ぶんだけどね、男子も来るんだって!」
「そうなんだ?楽しそうだね」
優しい笑顔でニコリと笑いかけるその男性に、
私は今日も項垂れる。
私の2歳年上の彼氏、玲司君は、私に妬いてくれない。
私がどれだけ男子と話しても、男子と遊ぶという嘘をついても、微動だにしない。
全く動じなく、そのことを話題にすらしてこない。
そう。それが私にとって今一番の悩みなのである。
なぜ妬いて欲しいかというと、
私が玲司君に対して嫉妬深いから…であり、何というか、もう少し束縛というものをして欲しいのである。
少女漫画でよくあるような、私が他の男子と話していると割って入ってきて欲しい(入ってくるわけがない)。
男子と話し終わった後、校舎の壁に押し付けられて何を話していたのか問われたい(問われるわけがない)。
私が男友達を含めたメンバーで遊ぶと言えば、何かと言い訳をつけて止めて欲しい(止められるわけがない)。
と、私の束縛願望はかなり出来上がっているのに、
玲司君は全くと言って私を束縛しないのである。
だからと言って、束縛という行為が嫌いなわけではなさそう。
私が玲司君に、できるだけ女の人と会わないでと言うと、快く守ってくれているし。まぁ、裏では姑息に会っているかもしれないが…
私から告白したから、玲司君は本当に私のことを好きでいてくれているのだろうか?と毎日不安になる。
今も玲司君と一緒に帰っているが、玲司君はとても可愛らしい笑顔で延々と愛犬の話をしている…。
モテているなんて、自覚していないんだろうなぁ…と思い、ため息をつくと、その様子を見た玲司君は
「彩乃、勉強わからないんだ?今日俺が教えてやろうか?」
と、笑いながら、わざとらしく頭をクシャクシャと撫でてくる。
確かに成績も危ういが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
どうにかしてでも、玲司君からの愛を確かめたいのである!
「あっ…えっと今日はクラスの子達とカラオケ行くの!」
「あ、そうなんだ。楽しんで」
そう言って動じずに微笑む玲司君。
ほら。断わっても、全然気にしてくれない。
ちょうどこの後の予定も埋まっていたし、今日も玲司君を妬かせる計画、実行するとしよう。
「みんな集まったー?」
友達の愛子が問いかける。
今日のメンバーは男女3人ずつ集まった。
みんないつも仲良くしている人たちでとても居心地が良い。
みんな揃ったので、駄弁をしながら愛子や男友達の先輩がバイトしているカラオケへ向かった。
「てか、大橋もきたんだ」
軽い足取りで歩く私に話しかけてくる男友達の翔。
高校に入学して、一番初めに仲が良くなった友達である。
私が来ることを知らなかったのだろうか。
翔とは何かしらと話が合い、いつも会話が弾む。
すると、前にいた愛子が振り向いて、
「ちょ、あれ、玲司君じゃない?」
と、前から歩いてくる男の人の集団を指さす。
私が目を細めてよく見てみると、それは愛子の言う通り玲司君だった。
愛子には玲司君が妬いてくれないことについて相談していて、把握してくれている。
「ちょっと翔に密着してみたら?」
と、愛子はニヤニヤしながらボソボソと小声で話す。
私は青ざめた表情でそんなことできない、と返事する。
もうすぐ玲司君と鉢合わせしてしまう。でも玲司君はまだ私たちに気付いていない。
この男子がいる状況でも何も言わない玲司君が、男子と密着という破廉恥な行為をして動じるのか?
そう思っていると、誰かに左肩を掴まれ、グイッと右側に寄せられる。
翔の手だ。
「なっななななな何の真似を」
私が動揺して離れようとしても、翔は私に向けてニコニコと微笑んできて、肩を組む手は一向に離れようとしない。
翔はなにか話題提示をして来ているが、男の人に触られるという経験が少ない私は動揺して話が耳に入ってこない。
「あ、玲司君ー!」
と、愛子や他の友達が明るい声でそう言うことだけが耳に入ってきて、玲司君が私の存在に気付いたことを確認する。
愛子や他の友達は玲司君以外の人とも話していて、その皆の間から、玲司君の視線を感じた。
バチッと、目が合ってしまう。
私は今彼氏でもない男の人に肩を組まれている状態。
その状況を思い出し、何故か罪悪感を覚え目をそらす。
愛子たちの話が終わり、玲司君たちは私の横を通り過ぎようとしている。
何か言われるかな。怖い。
そう思っていたが、玲司君は何事もなかったかのように他の友達と私の横を通り過ぎてしまった。
その瞬間、翔の手がすっと離れる。そして、
「こうでもしないと、玲司さん妬いてくれないでしょ」
と、何でもない顔で笑いかける翔。
まさか、愛子と小声で会話していた内容を察しられたというのか?
いや、こんなことされても妬いてくれないだろう…
と思いながらも、会話がまた弾んでしまい、カラオケに着いてしまった。
**
カラオケ着いて一時間が経つ。
愛子たちはかなり楽しそうに歌っている。
が、私はあまり乗り気ではなかった。
彼女が他の男の人と密着しているのにも関わらず、何も言わずに通り過ぎて行った時に感じた壁の暑さ。
きっと私の一方的な恋なんだろう…
と思い、ふと携帯をみると、メッセージアプリに1件の通知が。
何だろうと思い見てみると、
『俺も彩乃たちがいる駅前のカラオケボックスに友達と来たんだけど。今から出てこれたら出てきて』
と、玲司君からだった。
私は携帯をポケットに入れ、楽しそうにタンバリンを叩いている愛子に耳打ちで
「ちょっと行ってくる」
と伝えると、愛子はグッドサインを出した。
カラオケボックスの長い廊下を歩き、角で曲がると、
高身長の男の人に衝突する。
慌てて謝ろうとするが、ふと鼻をくすぐったのは、覚えのあるライチの香り。
「すみませ…………………………玲司君?」
顔を見上げると、見覚えのある整った顔。
見下げていたのは玲司君だった。
玲司君は、私の顔を確認した途端、いきなり強く私の手を引っ張り、
近くにあった車椅子用トイレに拉致された。
鍵を閉められ、玲司君は私をドアに押し付けた。
これが所謂、「壁ドン」というものか!!
心の中で感激していると、
「ねえ」
今までで一度も聞いたことがない、玲司君の野太く低い声。
それは今不機嫌であるということが、誰が見てもわかる雰囲気を漂わせていた。
いつもの微笑む玲司君の顔はなく、なぜかとても恐い顔をしている。
その顔を見て突然恐怖を覚え、無意識に手が震え出す。
「男もいるなら、そう言ってくれればいいのに」
ニコリと笑う玲司君。しかしその表情にいつもの優しさはなく、目が笑っていない。
「…ご、ごめんなさい」
声が震える。目の前にいる人は私の大好きな人なのに、声と表情が違うだけでこんなにも違うなんて。
鋭い目つきで見つめられ、恐怖で直視できず、目を逸らしてしまう。
すると玲司君は視線を逸らしたほうの壁に片方の手を押し付ける。
本来はときめくシチュエーションのはずが、今は恐怖でしかない。
手の震えは止まらない。その時、
「……肩組んでたの、だれ?」
と、さっきより少しだけ優しくなった声で言う玲司君。
そして、その玲司君の不安げな表情が入り混じった優しい顔を見て、私は心臓がとても熱くなる。
「え…と、ただの友達だよ…?」
「あのとき、肩組む必要あったの?」
「…あ…あっちがいきなり組んできたの」
この不安げな声で尋ねられる質問。
私自身に見覚えがある。
私が玲司君に対して、ヤキモチを妬いたときにした質問と、全く同じ形だ。
そう確認した瞬間、もっと心の奥が熱くなり、顔がどんどん火照るのがわかる。
その様子をじっと見つめてくる玲司君。
私は玲司君の目を見て、
「…玲司君もしかして……妬いてるの?」
と尋ねると、玲司君は少し頬を赤く染めて目を逸らす。
図星を指された時の、玲司君の癖。私はついに優位に立った。
「……妬いてないから」
頬を赤く染めて、不満げに呟くように言う玲司君。
その少しだけ子供っぽい表情と、私が翔に触られていた肩を片手で掴んでいる玲司君を見て、とても愛しく思い顔が緩む。
その私の顔を見た玲司君は、
「2歳も年下のくせに生意気」
とまた私を見下し、私の顔を引き寄せて唇を重ねられる。
そのキスは徐々に深くなっていった。
その初めての体験に、どうしたらいいのかわからずされるがまま、しかし呼吸がしにくくなってくる。
「……っ」
吐息が玲司君の口内にかかり、それに気付いた玲司君は唇を離す。
玲司君は、私に気を遣わせないように、私が男の人と話しても何も言わないようにしていたのだろうか。
あるいは、私より2歳年上だから、と強がっていたのだろうか。
「ヤキモチを妬かれる」という体験は、私が想像していたものより遥かに、愛してもらっていると実感が湧くものだった。
このあと、愛子と翔が裏で計画を立てていた事を知った。
**
4. " ヤキモチ "
大橋 彩乃 Ayano Ohashi (16)
日比野 玲司 Reiji Hibino (18)
- Re: 短編集 《 4. 更新 》 ( No.8 )
- 日時: 2016/01/18 21:08
- 名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: KJrPtGNF)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=36385
はじめまして、あんずと申します。
短編集が好きなので、覗かせていただきました。
読み進めて、納豆さんの表現の細かさに惹かれました。
心理描写がとても丁寧で素敵です。
私は心理描写が苦手なので、憧れます!
個人的に好きなお話は、一番初めのものです。
幼馴染モノに弱いのです…!
いつかこの二人が結ばれるといいな、と願っております\( 'ω')/
これからも応援しております。
頑張ってください(*^^*)
- Re: 短編集 《 4. 更新 》 ( No.9 )
- 日時: 2016/01/19 16:30
- 名前: 納豆 (ID: xV3zxjLd)
>>8
初めましてこんにちは(^-^)
そのような言葉をいただけるなんて
本当に感激です(;_;)ありがとうございますm(_ _)m
あんずさんも何か小説を書かれているのでしょうか?
私自身、幼馴染がいないので
こんな幼馴染がいたらいいなぁ〜と妄想しながら書いてました笑
続編も考えておりますので、良かったら読みに来てください!笑
ありがとうございました(^-^)
- Re: 短編集 《 4. 更新 》 ( No.10 )
- 日時: 2016/01/24 16:19
- 名前: 納豆 (ID: EugGu6iE)
「洸ちゃん数学教えて!!!!」
空はもう真っ暗で、時間は8時を示していた。
ベランダの窓を勢いよく開けて、痛いほどの数式を書いたノートを見せつけるかのように開ける。
その前には、勉強机に向かいながら呆然としてこちらを見ている洸一の姿があった。
少し間を置いて、洸一はゆっくりと持っていたシャーペンを机に置いて、『入ってきていいよ』という合図の手招きをしてくれた。
私は勢いよくお辞儀をして、洸一の部屋にドカンと座った。
すると洸一はジトッとした目で私のことを凝視。
「なに…『洸ちゃん』って。鳥肌立つわ」
「いいじゃん昔そう呼んでたじゃん!」
はあ、と洸一はため息をつきながらも、淡々と数学の解説をし始めた。
私はベッドの隣に有る折りたたみの椅子を机に近寄せ、頬杖をついた。
私はあまり頭が良くない。ある程度運動ができるくらいの運動神経で、ごく普通にいる女の子。
そんな私に対して、幼馴染の洸一は成績優秀、運動神経は抜群な完璧な男の子である。
しかも無口で硬派なところが、女子からの絶大な人気を誇る。
洸一とはマンションの部屋が隣同士で、ベランダをいつも飛びこえてこんな風に夜でも勉強を教えてもらっているのである。
幼馴染という特権があり、人見知りで無口な洸一が私には心を開いてくれている。
そのことに、いつしか特別感を覚えるようになった。
毎日会っているのに、何故か不意に会いたいと思う。
洸一が女子から人気があることは昔からなのに、そのことが何故か嫌だと感じてしまう。
今、女子の中で唯一私が勉強を教えてもらっているこの立場が、とても嬉しく感じてしまう。
この想いが恋というものなのだろうか。
そう思いながら、スラスラと話す洸一の顔をジッと見つめてしまう。
「〜〜で、〜〜になるから、こうなる。わかった?」
「んーー。あんまり」
「じゃあ塾行け」
「それはやだ。めんどくさい」
だからお前は馬鹿なんだ、と言うような嘲笑を浮かべる洸一。
ふと、洸一の手のこうを見ると、何やら油性で書かれた相合傘のようなもの。
とても汚い字である。学校の友達に書かれたのだろうか。
しかし、その片方の名前を見ると、見覚えのない名前があった。
「洸一ってば。好きな人いるの?」
違和感を感じさせないように、ニヤニヤと口角を上げて言う。
相合傘の名前が私の名前ではないことに、少し不安を浮かばせながら。
その揶揄を聞いた洸一は、咄嗟に手の甲を隠し始める。
その瞬間、心の奥にズキンと痛みが走る。
「え、もしかしてその手の甲の名前の人?」
「…塾の友達だから。他校だし志帆は知らないだろ」
と、頭に優しくチョップを入れられる。
洸一はきっと自覚していない。
手の甲を隠した時の洸一は、頬を赤く染めていたことを。
そのなんとも言えない洸一の赤面が頭に強く張り付いて、自分がどれだけ洸一に好意を寄せていたかを痛いくらいに思い知った。
**
次の日の休日、洸一は風邪で寝込んだ。
冷蔵庫にあった有名なお菓子屋さんのプリンの箱を持ってベランダに出る。
私がいつものように隣のベランダを乗り越え、
窓を開けると、苦しそうに咳をしながら私を見上げる洸一。
「中学生にもなって風邪とか珍しいね」
「…俺は馬鹿じゃないからな」
笑いながらゴホゴホ、と咳をする洸一。
洸一の額に貼られている冷えピタがすごく懐かしい。
風邪をひいたのはいつ以来だろう。
そう思いながら、折りたたみの椅子を取り出し、
洸一の目の前に座る。
洸一は睡魔に襲われているようで、少しウトウトしている。
「眠いなら寝たらいいじゃん」
「…おう」
私が笑うと、洸一は目を閉じてそう言った。
風邪のせいか、洸一は1分も経たないうちに意識を飛ばしてしまった。
ふと、昨日洸一の手の甲に書かれていた名前のことを思い出す。
「…あかりって誰なの…」
自分にしか聞こえないような、とても小さな声で呟いた。
私は洸一にとってただの幼馴染にしか過ぎない。
なのに、その洸一の近くにいる女子がとても気になる。
言葉にならないような不安と、苛立ちが私の心を貪り食べているよう。
私はベッドに頬杖をついて、洸一の額を軽く弾いた。
洸一は動じることなく爆睡している。
幼馴染の私を、女として見てくれることはあるのだろうか。
きっとこの人生の中で一度もないかもしれない。
だって私たちは幼馴染なのだから。
物心がつく前から一緒に育ってきた兄妹のような関係なのだから。
でも、そんな関係を打ち壊してまで、私のことを意識して欲しいと思ってしまう自分が居る。
私はもう一度、とても小さな声で呟いた。
「…こんなに好きなのに何で気づかないの…」
**
5. " 好きなのに "
柏木 志帆 Shiho Kashiwagi (14)
星川 洸一 Kouichi Hoshikawa (14)
今までのものが長すぎたので、無駄な部分を省いたら
すごく短くなってしまいました…(´・_・`)
- Re: 短編集 ( No.11 )
- 日時: 2016/04/24 21:04
- 名前: 納豆 (ID: D2NnH/3T)
「39.4度。かなり高熱だな」
体温計を見て、苦笑を浮かべる彼。
体が燃えるように熱くて、妙に息苦しい。
息が荒い私に彼は布団を掛け直した。
かすかに開く目に映ったのは、彼が笑顔を浮かべたあとリビングに向かおうとしている背中。
「えっ…ちょっと待って、行かないの…?」
やっとの思いで出た私の声は掠れていて、のどに強い刺激を与えられて酷く咳き込んだ。
彼は手に銀紙に包まれた風邪薬と、水の入ったコップを持ってきてくれた。
「いや、そんなに咳き込んでるし行ける状態じゃないだろ」
私の背中に手を回し上体を起こさせた。
彼は薬を銀紙から押し出して、私の口に近づけた。
私が薬を口に含むと、
「ほれ」
とコップを私の手に持たせた。
私は少し情けない気持ちでコップの中の水を口に放り込んだ。
座っているだけなのに身体が重い。
久々に発症した風邪が重症なものだと思い知った。
「…今日は…2年目の…」
『記念日』。
そう言い終わらないうちに彼は、
「ほんっと。何でこんな時に風邪ひくのかなー。茜っていつもタイミング悪いよなぁ」
と嫌味ったらしく笑った。
そう。今日は、私と相馬が付き合って2年目の記念日である。
しかし、まだ記念日をまともに祝えたことがない。
去年の1年目の記念日も、私が感染症にかかって家から出られなかった。
今日も本来は遊園地に行くつもりだったのだが、私が風邪を拗らせて高熱を出してしまった。
だから相馬に嫌味っぽく言われるのは仕方がない事なのだが、やはり少しだけ悔しい。
「ま、今日は大人しく寝とくんだな」
相馬は薬が入っていた銀紙をゴミ箱に放り投げ、コップを持ってリビングへと行ってしまった。
「…」
上体を寝かせ、手のひらを額に当てた。
自分の身体も熱いせいか、額は特に熱いこともなかった。
しばらくボーッとしていると、キッチンの方から水の音が聞こえてきた。
「…え、相馬、なにして…」
相馬は私の家の物なのにも関わらず、流し台に溜まった食器を洗ってくれていた。
「え…いいよ、やんなくて。看病してもらってるんだし…」
「いや、でもすごい食器の量だったし」
そうだ…私はかなり面倒臭がりな上に、昨日から熱っぽくて家事を全て放ったらかしにしていたのである。
昨日まで流し台に溢れるくらい食器が溜まっていた状況を思い出すと、あまりの情けなさに苦笑いを浮かべた。
「なんか…すみません…」
「こういう日があってもいいんじゃない?というか去年もだったけど。
まぁ茜が熱出してる時、俺にしかわからない楽しみがあるからね」
怪しい笑みを浮かべる相馬。
私はその相馬の言葉の意味がわからなくてキョトンとしていると、
「あー無意識なのかな?茜が寝てる時、かなり素直なとこあるよ?
寝言で俺の名前呼んでたり?俺が移動しようとすると手掴んできたりね」
相馬はクスクスと笑いながら食器を洗っている。
その時込み上げた原因不明の腹立ちと、妙に身体と顔が熱くなったのは、風邪のせいにしておこう。
**
"風邪"
岩澤 茜 Akane Iwasawa (23)
本城 相馬 Souma Honjou (23)
久々の更新です。
相馬みたいな家事してくれる彼氏ほしいなぁ
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