コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 渦中を進む 【茨の道を踏まずに歩け】
- 日時: 2016/01/23 00:25
- 名前: 明太子 (ID: nbzMXegi)
馬鹿な親友は実はとんでもない奴だった!?
日常が切り替わる瞬間に俺が見た親友の姿は..........
この小説には以下の成分が含まれております。
・中二病
・急展開
・文才無し
・バトル物
以上の事にお気をつけ下さい。
第一話 『始まりは土下座から』 >>1
第二話 『とってもお高い交渉切符』 >>2
第三話 『進むは茨道か、さては獣道か』 >>3
Page:1
- Re: 渦中に進む ( No.1 )
- 日時: 2016/01/21 05:13
- 名前: 明太子 (ID: nbzMXegi)
冬になり、山も雪化粧をする今日この頃
俺、藤崎湧水は受験勉強に追われていた
中学3年と言えば高校受験。
しかし俺は頭が悪く、高校が決まっていなかった。
漠然とした未来予想図にはとりあえず働きたいという考えしかなかった。
働いて、金を稼いで、好きに遊びたい。
しかし人生はそう甘くない
あれよあれよと月日は過ぎ、季節は入学から2度巡ってもう受験シーズン。
(まさに光陰矢の如し、月日が過ぎるのはここまで早いか。)
そう思わざるを得なかった。
遅すぎたのだ、気付くのが。
もう少し早くに、というのはもう考るのも嫌だ。
俺は嫌な気分を振り切り、隣を歩く親友を見た。
俺の視線に気付き、こちらを見てイタズラ気に笑い脇腹をつついて来るコイツ
笹本 狼谷 俺の小学校以来の親友だ。
体型はスレンダーなチビッ子、性格はその細い体にイタズラ心を詰め込んだ奴だ。
顔は性別を間違えてるレベルの女顔だ、だが男だ。
俺の親友は面白い奴である
人をバカにするが、それは真に怒らせる訳でもなくじゃれあいの種になる程度だ。
名前に狼が入っているが、どちらかというと性格は犬。
かまってちゃんなのだ
ついでに困ったちゃんなのだ。
そんな親友には昔から一つ不思議な所があった。
バカで不器用なアイツだが、ケガの手当や刃物の扱い、食材の解体が大の得意だ。
調理実習の時も手際良く魚をさばいていったし、保健委員の実力ある委員長だ。
実際に低体温症になった生徒を助けている、正しい応急処置で。
要するにサバイバル能力がアホみたいに高いんだ。
自分が骨折しても冷静にその場で応急手当をしたり、膿が溜まった所に熱した針を平然と刺したり。
なんかどこかぶっ飛んだ奴なのだ。
帰る方向は同じで、家は隣り合わせなので家族ぐるみの付き合いがある。
それゆえ今日も俺の家で勉強をする予定だったのだが..........
「お願いします!我が校に入学して下さい!」
どうしてSPつけたガタイの良いオニーサンに土下座されてるんですかねぇ
俺の親友は.........そんなにエラい人だったのか?
- Re: 渦中を進む 【茨の道を踏まずに歩け】 ( No.2 )
- 日時: 2016/01/21 04:45
- 名前: 明太子 (ID: nbzMXegi)
土下座する黒服のガタイの良いヤーさんっぽい人をSPが慌てて止めるが本人は土下座を続行。
そして、狼谷へ近付こうとした俺の周りに兄ちゃんの側から1人、黒服のSPが来た。
見ただけで分かる強靭な体、鋭い眼光から察するに訓練に訓練を重ねた優秀なSPだ。
多少武道の心得があるが、コイツ相手には一矢報いる事すら出来ないだろう。
しかし向こうに親友がいるなら行かねばなるまい
俺は黒服に「ここを通してくれないか」と言うと
「ダメだ、私達はこのお方に用があるのだ、部外者は立ち去ってもらう」
ほぉらお決まりの台詞だ。
しかし押しとおる訳には行かない、負けるからだ。
(だがな、俺はあのイタズラっ子に5年以上は付き合ってるんだぜ?)
「お前今何言ったか分かってんの?」
「.......何ィ?」
ステップ1、相手の興味を引く。
これにより聞き流して突っぱねるという「事務的対応」を止めさせ、「会話」をさせる。
これは基本中の基本だが、やるやらないでは大きい差が出る。
そして今コイツは2つの感情を俺に対し抱いた
『疑問』と『苛立ち』だ。
疑問は単純に俺の言葉を不審に思ったから、苛立ちは自分の思惑、予想通りに事が運ばれなかったから。
会話とはゲームだ
キレた奴の負け、キレさせた奴の勝ち。
キレた奴は自分が操られた通りに動いているのを相手に教えるだけ。
ババ抜きでババを教えるのと同じようなものだ。
隠すべき手札を相手の言う通りに見せて、相手に言われたカードを引く。
まるで一人じゃんけんだ、勝つ側が決められて、負け側はひたすら負ける。
そんなバカにコイツはなるかもしれないのだ、楽しくて仕方ない。
「お前さ、今の言葉でそこの兄ちゃんの土下座の価値を極限まで下げたんだぜ?」
「............一体どういう意味だ?それは」
STEP2、わざと疑問に答えない
『疑問』や『苛立ち』の感情を風船のように膨らませる
これが破裂したら相手が敵意を露にする、つまり苛立ちのピークだ。
苛立ちのピークに達すると疑問を忘れたまま答えを急ぐ
置いて行かれた疑問は種となる。
そして相手の心を最後にへし折る武器になる。
心の傷を作る武器へと
「はぁ?ここまで言って分からないか、ちゃんと中学卒業したの?」
「貴様程度より教養はある」
返答が早くなった
つまりそれだけ会話に意識を傾けているのだ
十中八九この男は頭に血が登っている。
「『貴様程度』ねぇ......じゃあ何でその程度にすぐわかる事が分からないの?」
「それはだな.......」
「ほぉら口ごもった、痩せ我慢はよしておきな、それこそ『程度』が知れちまうよ」
「何だと?」
「おいおいムキになんなよ、図星言われたら涼しい顔してスルーすりゃあ良いのによぉ」
「ッ!」
「わざわざ素直に反応してさ、もしかしてSPの研修中?なぁら仕方ねぇな!ックははははは!」
「貴ッ様ァ!」
STEP3、悪口のラッシュ
ここで出す悪口は身体的特徴を言わない事。
そして相手がある程度想像が膨らむ言い方をする
こりゃ、ある意味ミスリードだからな。
別段俺は『程度が低い』なんざ言っていない
ただ相手が勘違いしてそう思うだけだ。
ちなみにこの意味に気付いた狼谷は黒服の向こうで「うっわぁ.....」って顔してるんだけどな。
さて、仕上げだ
「まっ、お前さんは程度にあった仕事すりゃあ良いんじゃねえの?SPは結果が見えてるけどなぁ!」
「それ以上言ったら貴様をぶっ殺す!良いな!」
最後の一言を言った瞬間に、俺は黒服にナイフを突き付けられていた。
目にも止まらぬ速さ、訓練の成果が垣間見えるな。
しかし、これでチェックだ。
(馬鹿のやることの典型例だぜ、思い通りに動くマリオネット野郎が)
俺がニタァ、と笑うとギョっとして下がった黒服
そして俺は携帯を出して110と入力して黒服に見えるように発信ボタンに指を当てた。
俺のやろうとしてる事に気がつき顔が引きつる狼谷
土下座の兄ちゃん(俺命名)も一瞬遅れて気がつき顔を青くした
唯一分かってないのは黒服だけだ
「貴様ッ!何をする気.....」
「状況を整理しようか」
俺は相手の言葉をぶっち切り、話を始める。
(ミスリードに気づけずにキレちまったお前さんに勝ち目は無いぜ)
「俺、藤崎湧水は友人笹本狼谷と下校中に数人の大人に囲まれた」
「それはそこの笹本狼谷殿に用があって.....」
「そして戸惑う俺と友人を無理矢理引き留めて、不審な勧誘をした」
「不審などと......!私達はただ交渉に......」
ここまでは普通だ、普通の状況整理
しかしここから先はちょっとクセがあるぜ。
ミスリードに気がついても良かった。
気づくとそれが本命だと思うからだ。
しかし俺は隠しに隠したモノがある。
「そして俺が友人を助けようと交渉を試みると黒服の男はいきなり刃物を取りだし、その刃物で威嚇した」
「なッ.........」
「そして俺は今まさに警察に助けを求めようとしている......以上だ」
周囲に沈黙が重く伝わる
一番最初に口を開いたのは目の前の黒服だった
「ふざけるな!そんな世迷い言が通用するわけ......」
「いいや、通用するね」
これまた黒服の話を遮り断言をする。
そしてここからがFINALSTEPだ
「俺は最初から最後まで交渉を続けていたんだぜ?」
「はぁ!?」
「武力行使に出たのはお前さんで、『俺はここを通してくれないか』って言ったんだ」
「何ッ......!?」
「そしたらアンタは断った、そして俺は交渉の交渉をしたわけだ」
そう、今まで俺がやってたのは『ここを通してください』『駄目です』『そこを何とか』という範疇だったのだ。
その為に俺は何度も『お願い』をして、相手の『程度』を褒めて、『その仕事似合ってますよ』とおだてたのだ。
本来は穴だらけも良いところだが、頭に血の上ったコイツには分からない。
そして止めだ。
「というより、そのアンタの言う『狼谷殿』の『友人』である『藤崎湧水』を『無下に』扱ったんだぜ?なぁ、狼谷?」
話を振られた狼谷は「ここで振るかぁ....」と呟いて真面目な顔をして言った
「確かに、友人を無下に扱うような人とは交渉なんて必要無いよね。」
その一言に顔面蒼白にする一同
詰まるところ。
「こんな失礼な奴に付き合う必要何てねぇよ。行こうぜ、狼谷」
「...........そうだね、行こっか」
無視して帰ろう、という所だ。
別段、無理矢理帰ればよかったのだが、こういう連中は痛い目を会わないとな
飴と鞭は交渉において大切だ
お互いに別れの言葉を言って俺等はその場から立ち去った。
土下座の兄ちゃんには「後日、俺を混ぜて話しましょう」と伝え
黒服には「お前は人を見下し過ぎたんだよ」と耳元で嘲け笑い。
隣で狼谷が「死者蘇生と死体蹴り.....」と言ったが気にしない。
かくして俺は、あいつらの交渉の椅子にきっちり座った訳であった......
- Re: 渦中を進む 【茨の道を踏まずに歩け】 ( No.3 )
- 日時: 2016/01/22 01:04
- 名前: 明太子 (ID: nbzMXegi)
次の日、下校中に俺等はまた黒服に囲まれていた。
コイツらは学習をしないのかよ、人数まで増やしやがって。
そんなにトラウマ作りたいなら手伝ってやんよ。
「なぁ兄ちゃんよぉ......そこまでして精神病棟へ行きたいのか?」
「い、いやいやいや!滅相もない!」
俺に浮かんだのは呆れのみだ、もはや怒りすら湧いてこない。
そんな感情を露骨にぶつけると相手は顔を青く__特に昨日の黒服は顔がお通夜ver__にした
まぁ、こんなところで話を始めようものなら問答無用で110番だ。
昨日は大人の怒声が近所の人に聞こえている、お偉いさんと言えど面倒な事に出来る。
生憎こちとら親友の危機なんだ、全力で守らせて貰うぜ。
「んで、兄ちゃんは昨日から何か改善して来たのか?」
「ああ、昨日は冷静じゃなかったんだ。今回は.....」
兄ちゃんが視線を突然そらして右を見た
不審に思い、俺は視線の後を追いかけて同じ方向を見た。
そこにあったのは.....
「アレを用意した」
「おいおいウソだろ.....」
黒光りする手入れの行き届いた外装
少し大きめのタイヤに長めのボディ。
誰もが知ってるであろう高級車__リムジンである。
近付くにつれてスピードをゆっくりにして、目の前で止まった。
「アンタらガチで偉い人だったんだな、敬語使ってやろうか?」
俺が若干の皮肉を込めて言うと、兄ちゃんは吹き出して笑った。
「これを見てまだ態度を改めないとは.....昨日と変わらずの剛胆さだ!」
余程気に入ったのだろう、おかしくて堪らない様子だ。
そこまで笑う事でもあるまいに、まったく.......
しばらく笑った後に、兄ちゃんは名刺を取り出した
「名乗りが遅れてすまない、俺は鷹村士堂という名前だ」
俺と狼谷に名刺を渡す鷹村とやら。
名刺に書かれていたのは「私立 清藍高等学校 教員」 という肩書きだった。
(私立清藍高校.....倍率がクソ高いエリート高校じゃねぇか!?)
ここら辺で恐らく最もハイレベルの高校だ
金持ち、頭脳明晰、運動神経抜群が最低条件の超エリート高校
入る事がステータス、もし中退しても引く手多数という噂もある。
学力のない俺等とは無縁の学校のはずだが......
「驚いてくれて何より、やっと年相応の反応がみれた」
企みが成功しニヤリとする士堂の兄ちゃん。
これが黒服ならまた口喧嘩してたが、俺はこの兄ちゃんの事が嫌いな訳じゃないからな。
間違えをすぐに直そうとする積極的な姿勢は素晴らしいと思う。
しかしこのような事をしてまで狼谷を欲しがるとは.....狼谷は何者だ?
「なぁ狼谷」
「どうしたの湧水?」
「今は良いが、全部話終わったら1から十まで教えろよな」
「.....うん、分かったよ。ごめんね?」
「構わんよ、もう10年に近い付き合いじゃねぇか」
さすがにこれは黙ってられんと思い狼谷へ伝えると少し暗い顔をして答えた。
コイツらしくない、恐らく深い事情なんだな。
しかしいつまでもへこんでもらっちゃ困る。
「そいやっ」
「って痛ぁ!?」
沈み込んだ雰囲気を払拭するために俺はデコピンした。
ビシッ!と音がして狼谷がのけ反った。
痛かったのだろう、涙目になり見上げて来た。
「暗い空気が好きなら都会のビルの合間で寝泊まりしたらどうだ?」
「慰めって言葉知ってるかな?」
「ああ、知ってるぜ。楽にする事だろ?」
「さいってー」
軽口を叩いているといつもの元気が戻って来たようで、明るい笑顔を見せ始めた。
それで良い
暗い空気、重い空気はお前に合わん。
どことなく優しい気持ちになると士堂の兄ちゃんが
「仲が良いのは結構だが乗ってくれないか?」
と、少し呆れ気味に言った。
すっかり忘れていたが交渉への足を用意されているんだ、早く乗らねば。
そう思い、車は狼谷と俺を乗せて走り出した。
この先に何があるのかをまだ知らずに......
Page:1
この掲示板は過去ログ化されています。