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   銀河の音色、異世界ロマンス。   
日時: 2016/01/21 20:08
名前: Alice (ID: 0a987INq)








   あなたには、戻りたい「 過去 」がありますか——?
   大切なモノと引き換えに、時を戻して差し上げます。





   ご挨拶 :



   タイトル長くてごめんなさいAliceです(
   初の『 ファンタジー 』に挑戦するので、題名もなんか
   それらしい感じにしてみました(*´`*)

   時間が回ったりするお話なので、作者の頭が付いていくか
   すごく心配ですが、頑張らせて頂きます(笑)

   ゆっくり更新ですが、どうぞ宜しくお願いしますね!






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Re:    銀河の音色、異世界ロマンス。    ( No.1 )
日時: 2016/01/21 20:32
名前: Alice (ID: 0a987INq)




  ( 喫茶店のヒミツ。 )





  都市部から、少しだけ離れたところにある、一つの喫茶店。
  古びた外観には蔦が絡まり伸し上がってきている。

  錆び切った音のする扉を押し開けると、心地良い鐘の音。
  右側のカウンターには、背の高い男性が微笑む。



  「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか——?」



  その問いかけに頷けば、貴方の夢の始まりです。
  ただ、一つだけ、忘れてはならないことが。

  この世界で一番大切なものを、彼に差し出して下さいね。
  そうすればこの時計は、反対方向に廻り出します。



  貴方が生まれてすぐの世界、大切なの人のいる世界。
  幼心を持った世界など、姿形は自由自在。

  いつでもお好きな時に帰ってきて構いませんよ。
  お飲み物をご用意して、お待ちしております。

  怪しいと思われるのも承知ですが、これは幻想です。
  目が覚めれば、全て忘れている場合もございます。



  ですが、夢の中で何かプレゼントがあるかもしれません。
  そちらに料金などは発生致しませんので、大丈夫ですよ。

  おっと失礼、私は案内人、いえ、案内猫のニールです。
  いつも、カウンターの上から貴方を見上げています。




  さて、お話はここでお仕舞に致しましょうか。
  お次は貴方の番ですよ、さあ、扉を開けて下さい——……



Re:    銀河の音色、異世界ロマンス。    ( No.2 )
日時: 2016/01/22 16:42
名前: Alice (ID: 0a987INq)




  ( 罰ゲームと、少女の瞳。 )





  胸の中を、もやもやとした曇り空のような気持ちが渦巻く。
  私はスクールバッグを持ち上げて、溜め息を吐いた。

  溜め息から、更に嫌な気持ちがどんどん膨れ上がってくる。
  そうしていると、後ろからどーん、と抱きつかれた。



  「ほらっ、澪( みお )っ、早く行こうよー!」

  「はいはい、もー、分かったから……理生( りお )」



  この深い溜め息の原因は、この私の友人、棗ノ 理生。
  数日前にやった王様ゲームが、キッカケだ。

  クラスの女子数人と男子でやったんだけれど、散々だった。
  理生が王様になったら、「 3番があの喫茶店に行け 」なんて
  言い出してしまって、もうみんな大騒ぎだ。



  たまに、噂を聞いたことがある。
  街のはずれにある一つの喫茶店には、なにかがある。

  そのなにかは分からないんだけれど、気味の悪いことらしい。
  それを確かめてこいなんて、全く、ひどい話だ。

  私としてはホラーとかは苦手じゃないけど、これはホラーと
  いって良いものなのだろうか。

  そんな文句を言っていた私だけれど、やっと重い腰を上げた。
  交差点で理生とは別れて、一人で歩き出した。



  「え、ここ何処だろう……迷——って、猫!?」



  一瞬迷ったかのように見えたのに、いきなり黒猫が現れた。
  首には筆記体で「 Nael 」と表記されていた。

  そのまま読めば、ニールと読める。
  声に出して呼んでみると、軽くその猫は喉を鳴らした。

  私がふふっ、と微笑むと、ニールはひょこひょこ向こうへ行く。
  慌てて私も付いていってみると、ある建物が目に入った。



  「喫茶・アンジュ——? って、ここが、あの……」

  「ニャッ」



  返事をするように鳴いたニールは、小さな猫用の扉から中へ入る。
  私も迷ったけれど、覚悟を決めて古びた扉を押した。

  カラン、カラン。
  心地の良いベルが鳴り、扉が錆びた音を立てて閉まった。

  目の前に広がった世界は、想像していたものとは大分違った。
  お店全体が木造で、白い窓枠から木漏れ日が差す。

  どこからかコーヒーの匂いもしてきて、鼻を擽った。
  ふわふわとした気持ちが私を包んで、そして心を温めた。





  「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか——?」

  「……はっ、へっ、はいっ!」




  さらさらとした、綺麗な黒髪に、ヒカリが反射する。
  深い海の色の、切れ長の大き目の瞳に甘く捉えられる。

  白い肌にバランス良く並ぶ、高い鼻に薄めの眉。
  背は私よりも何十センチも高いように見えたし、身体も細身。
  でも付くところには筋肉がついていて、所謂「 イケメン 」。

  あの噂とは似ても似つかないお店、そしてマスターがいた。



  

Re:    銀河の音色、異世界ロマンス。    ( No.3 )
日時: 2016/01/22 21:02
名前: Alice (ID: 0a987INq)




  ( 罰ゲームと、少女の瞳。#002 )





  優しそうで、ふわっ、と軽い彼の笑顔。
  包み込まれて溶けてしまいそうで、体が揺れてそうだ。

  泡が弾けるような音と、鍋を火にかけたような音が重なる。
  沸いた古い金色のポッドを片手に、彼はカップを手に取った。



  「お飲み物は、何に致しましょう?」

  「え……と、ローズティーで」



  かしこまりました、と軽く微笑み頭を下げた彼。
  そんな姿にすっかり見惚れてしまい、慌てて首を横に振った。

  茶色の木でできた椅子に腰かけ、店全体をゆっくり見渡す。
  私以外に客はおらず、午後の柔らかな時が流れていく。

  店には、夕日がキラキラと差し込んでくる。
  椅子や机などは全て木造で、調理器具などは古びた金色だ。



  暫く待っていると、コポコポ、と何か注がれる音がした。
  差し出されたカップには、時計と猫が描かれていた。

  一口飲むと、口だけではなく胸まで行き渡る薔薇の香り。
  決してきつい訳ではなくて、体が色づくような味。

  ふう、と一息つくと、いきなり此処に来た理由を思い出した。
  ケーキを切り分けていた彼に、そっと声を掛ける。



  「あの、此処ってなにか、ヒミツがあるんですか」

  「゛ヒミツ゛とは、おとぎ話のような表現ですね、はは」



  何故だか可笑しそうに笑う彼につられて、私も頬が緩んだ。
  そして彼はおもむろに、赤紫の革のカバーがついた、メニューの
  ようなものを差し出した。

  そこには、「 一時間、幻想的な貴方の夢へ 」と表記がある。
  その文字のすぐ下に、貴方の大切なものと引き換えに、とも。

  白いレース模様がついたケーキ皿を、彼がカウンターに置いた。
  苺やラズベリーが溢れんばかりに乗った、可愛らしいケーキ。



  「どうぞ召し上がってください、そちらも」

  「あの、これって、タイムスリップってことですか?」

  「まあそうですね、お好きな時間まで戻せます」

  「ここに書いてある、大切なもの、って————……?」



  私は、何故かそのメニューが凄く気になっていた。
  身を乗り出した私に驚いたように、彼が話を進めていく。

  そして彼が説明したのは、このような話だった。
  自分にとって大切なものを彼に渡せば、時間を戻してもらえる。

  その「 大切なもの 」はもう戻ってくることはない。
  自分が生まれてから今までの過去に、一時間だけ、時が戻る。

  戻っている間、現実世界の時計は止まったまま。
  例外で、この喫茶店だけは進み続ける。

  一時間が近くなった五十分で、過去の中で鐘がなる。
  その時点で戻ってくることもできる。



  私の大切なもの、とはなんだろう。
  スクールバッグに手を突っ込むと、硬いものに掌がぶつかった。

  可愛らしい小さなバレリーナの、オルゴール。
  私の父親が海外で仕事をしていた時に、お土産としてくれたもの。

  その肝心な父親は、私が小学一年生の時に事故で亡くなった。
  このオルゴールは私が持っている、唯一の父親からのプレゼント。

  いつも仕事ばかりで、私に構ってくれている時間はなかった。
  そんな父親——、お父さんに会えたら、なんて考えがよぎった。





  「……お客様?」

  「このオルゴールで、八年前まで戻してください——」



  チク、タク、チク、タク。
  時計の音が、やけに煩く耳に響いてきた。

  鮮やかな夕日が、彼や私を明るく優しく、照らし合わせる。
  ローズティーの甘い香りが、店全体に広がった。



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